NORLA今月の翻訳者、日本語版 #国際女性デー

NORLAの今月の翻訳者のコーナーに寄稿しました。
https://norla.no/nb/nyheter/nyheter-fra-norla/reiko-hidani-manedens-oversetter-i-mars

 

(日本語訳)

枇谷 玲子 – 3月の翻訳者

あなたはどんな風にしてノルウェー語の翻訳者になったのですか?

 

私は高校生の時にデンマークの作家グレーテリーセ・ホルムの『マリアからの手紙』を読み、移民問題など政治について学校で議論する先生と子ども達の姿に衝撃を受け、北欧に強い関心を持ちました。学校図書館の司書の先生に相談して徳間書店に手紙を書いたところ、編集者の上村令さんが手紙を翻訳者に転送してくださり、お返事をいただきました。

高校卒業後、大阪外国語大学でデンマーク語とデンマーク文学を学びました。1年間デンマークに留学した後、講師をしていた翻訳家の木村由利子先生に出版社を紹介していただき、留学中、デンマークの児童文学センターのTorben Weinreich先生から勧められた『ウッラの小さな抵抗』を文研出版から初の訳書として出すことができました。

正直に言うと、元々はノルウェーは私にとって、デンマークのお隣の国でしかありませんでした。当時私はハウゲンやリウ・フローデ、ゴルデルの本を読んだり、大学でムンクについてレポートを書いたりしたことぐらいしかなかったのですから。

Aschehoug Aschehoug社のChristian KjelstrupとEva Christine Kuløyと玲子の娘。

ノルウェーに対する見方が変わったのは、NORLAと出会ってからです。2010年にNORLAから旅費助成をいただき、GyldendalやAschehoug、ノルウェー児童書センター、ホロコースト・センター、IBBY Documentation Centerに行きました。全てのミーティングをアレンジしてくれたのは、NORLAでした。彼達はとても親切でした。調査旅行から帰ってきてから、『キュッパのはくぶつかん』『キュッパのおんがくかい』を訳す機会を得ることができました。絵本シリーズは日本で成功し、そのおかげで2014年にHolmenで行われた国際翻訳者会議に出席できました。私がノルウェー文学に夢中になりだしたのは、その会議からでした。会議の後も、NORLAは日本に何度も来てノルウェー文学セミナーを複数回行いました。NORLAに会う度、私はノルウェー文学に夢中になっていきました。私は今ではノルウェーの文学をほぼ毎日読んでいます。ノルウェー文学は今では私にとってなくてはならない存在です。

Kubbegren

2015年、東京都美術館が行ったワークショップ『キュッパになろう』。ワークショップは日比谷公園で行われた環境フェスティバル、緑の感謝祭のイベントの1つとして行われました。

最近行ったセミナーについて教えてくれますか?

 

私は以前、英語の翻訳者向けのネット上のクラブに入っていたことがあり、そこで英語の翻訳者さん達が英語圏の児童書について話して盛り上がっているのを見て、うらやましく思ってきました。また日本で北欧語の翻訳者が足りないから、英語やドイツ語から重訳するのは仕方ないと言われている割に、実は北欧語から直接訳してみたい、翻訳の仕事をしてみたいと私のHPに相談をしてくる人が何人かいて、こんなに直接訳できる人がいるのなあ、と不思議に思ってきました。でも重訳について文句を言ってもはじまりません。私がやるべきことは翻訳技術を磨くことでした。

そこで以前から会ったことがあった久山葉子さんや ヘレンハルメ美穂さんや他の翻訳者に声をかけ、北欧語書籍翻訳者の会を昨年の秋にはじめました。

(会のFacebook).

会をはじめた直後に、 Norlaが日本にまた来ました. NORLAはノルウェー語の翻訳者に本のプレゼンテーションをする機会を与えてくれました。大使館で私は、中村冬美さんとNORLAを訪問した時に紹介された、アニータ・コースの『お母さんは謎』という作品のプレゼンテーションをしました。

Norlanakamura
NORLAのアドバイザー、 Oliver Møystad とPer Øystein Roland

 

それに来ていた編集者さんから、後から、他の出版社さんでセミナーに呼ばれなかったのを残念に思っている編集者がいるので、同じようなプレゼン会をやってみないかと誘われました。そこで北欧語書籍翻訳者の会の皆さんを誘って、1月の終わりに早川書房の編集者さんを講師に迎え、レジュメ勉強会を行いました。青土社の編集者さんもアドバイスをくださいました。

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早川書房の窪木竜也さんと翻訳者の中村冬美さん

2月1日には出版クラブという施設でプレゼン会をし、北欧の書籍を出版社さんに紹介しました。私は Bjørk Matheasdatterの『愛すること、愛されること』(Å elske og bli elsket)を、中村冬美さんは『海馬を求めて』を紹介しました。また羽根由さんは『姉妹』を展示しました。

他に紹介したノルウェーの本は以下です。

ほとんど人間:チンパンジーのユリウスについての伝記』(Nesten menneske. Biografien om Julius )Alfred Fidjestøl作

動物を理解する』(Å forstå dyr)  Lars Fr. H. Svendsen作

『雪の少女――クリスマスのお話』

『世界劇場――地図の歴史』

『本を救いたかった女の子』

『ピケティ、1、2、3』

『カガヤキ谷のトーニェ』(Tonje Glimmerdal) Maria Parr 作

『誰にだって背中がある』(Alle har en bakside) Anna Fiske作

セミナーの写真はここでさらにたくさん見られます。

また2月3日にはひるねこBOOKSという書店で読者むけのイベントも行いました。そこで北欧ミステリファンの存在を知ったので、もし可能なら、いつかミステリを入り口に他のジャンルにも興味を持ってもらえるような会を開きたいです。日本ではStieg Larsson、Henning Mankell、Anders Roslund & Stefan Thunberg 、Leif G.W. Perssonなどのミステリ作家が人気です。私もアンネ・ホルトやエーネ・リールの作品を訳しました…。

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アンネ・ホルトの『ホテル1222』の舞台

現在はSELTAが発行しているような書評集を作成しようと皆で準備中です。

 

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   中村冬美さんの発表

あなたは児童書の翻訳を精力的に行っていますね。北欧の児童書と日本の児童書の違いは何ですか?

 

YAは日本ではあまり定着しきっていないジャンルです。私自身、高校生や大学生の時に特に本を多く読むようになりましたが、その1990年代ぐらいに、金原瑞人さんという方が盛んに英米のYAを日本に紹介していました。私がもっと幼い頃は、YAというジャンル名はほとんど聞いたことがありませんでした。私は自分が高校生、大学生の頃に読んできたような本を主に訳したいと考えています。その頃、私が読んできた本には『マリアからの手紙』のような海外のYAもあれば、村上春樹や吉元ばなな、江國香織といった思春期の子、高校生、大学生が主人公だけれど、大人の文学と日本ではカテゴライズされている作品もありました。日本では海外のYAは『ワンダー』などを除いてはほとんどベストセラーにならないので、YAの翻訳の仕事はなかなか得られず、YAの翻訳をしたくて初期は児童書の出版社によく持ち込みをしていたのですが、YAはボツばかりで、絵本ならすでにフランクフルトやボローニャ、サブ・エージェントの紹介で出版社が権利を買っている作品があったので、じゃあ絵本の翻訳をやってみないかと誘われて絵本の翻訳を手がけてきましたが、今でもYAや高校生、大学生を主人公にした日本では大人の文学とカテゴライズされているような作品を訳してみたいという気持ちでいます。

 

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シモン・ストランゲル『このTシャツは児童労働で作られました。』

ただ例えば、シモン・ストランゲルの『このTシャツは児童労働で作られました。』は日本でも人気になりましたが、これは高校生だけでなく大人にも読まれています。シモン・ストランゲルの『ドコカ行き難民ボート』にはじまる3部作は難民問題、児童労働など極めて政治的なテーマを扱った本です。子ども達が政治的なメッセージを世の中に投げかけるというのは日本の読者にはなじみがなく、しかしだからこそこの本が日本で歓迎されたのだと思います。日本の学校では、政治について議論することに教師は戸惑います。政治について授業で扱ってどうやって政治的中立を保てるのか分からないという教師もいるようです。民主主義教育が北欧では進んでいて、そのことが色濃く出た北欧の作品は日本人には前衛的にまた刺激的に映るのかもしれません。

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『北欧式お金と経済がわかる本』は日本の書店では大人向けの経済書の棚に置かれています。

 

『北欧式お金と経済について学ぶ本』は子ども向けの本としてノルウェーでは出されたようですが、実際この本は書店の児童書コーナーではなく、大人向けの経済書のコーナーにありました。『北欧式お金と経済について学ぶ本』はお母さんが子どもに経済について、働くことについて教える本ですが、日本で出されている金銭教育の本の多くはお父さんや男の人が子どもにお金について教えるものばかりです。私がこの本を訳したのは母親も働いてお金を稼ぐんだってことを子どもに示したかったからです。私はこの本でお母さんだって失業すると悲しくなる。仕事はお母さんの人生の一部なのだからと書かれているのを読み、感動しました。

北欧の児童書のキーワードの1つは多様性です。

日本では読みものでは松谷みよこさんの『モモちゃんとアカネちゃん』などがありますが、小さい子向けの絵本ではほぼ常にお父さん、お母さん、子どもという家庭が描かれているものが多いのに対し、北欧の絵本ではお母さんと子ども、お父さんと子どもだけの家庭も当たり前のように登場します。日本でも離婚率が高まってきているのですから、伝統的な家族観に縛られた絵本の作り方はやめるべきだと私は考えています。『Z棟のアウロラ』をはじめ多様な家族が描かれた作品が北欧には多いのではないでしょうか。絵本の中で多様な家族を描かないことで、私達大人はシングルマザー、シングルファザーの家庭に育つ子ども達にあなた達の家は普通ではないんだというメッセージを無意識のうちに投げかけてはいないか、考える必要があります。実際、日本の母親が子どもにシングルマザーの家のことを、非難したり特別視するような発言をしているのを私は複数回目撃したことがあります。子どもにも親にも、多様な家族のあり方を尊重するよう啓蒙が必要です。北欧の本はその一翼を担うことができます。私達本の作り手はジェンダー的に公正かどうかということにも常に配慮しながら本を作っていかなくてはなりません。

私は児童文学センターの教授に「どうして北欧の児童書にはタブーがないのですか?」と聞いて、逆に「どうして日本の児童書にはタブーが多いのですか?」と聞き返されたことをよく思い出します。私は今でもその答えを探し続けています。「単に日本ではそうなだけ」と言うこともできますが、私は考えるのが大好きです。物事を考える時、生きているんだ、と感じることができます。

絵本『みんな数える、みんな大事』、漫画『闘う女性たち』は読者に多様性とは何か、またなぜそれが重要なのかを教えてくれる本です。

『みんな数える、みんな大事』にあるように私は心からこう言えるようになりたいです。「みんな違って、よかった!」

 

あなたの心に特別残っている本はありますか? あるとすればあなたにとってそれはどんな風に特別なのですか?

 

特別心に残っている本は絵本『いとしいあなた』です。日本では、『ワンオペ育児』という言葉がよく使われます。それは母親のみが子育てすることが一般的な日本の社会を批判して使った言葉です。私は仕事をしながらも、いつも罪悪感を覚えます。翻訳者にとっては海外にしょっちゅう行ってその文化を知るのはとても大切なことですが、毎回罪悪感で心が押しつぶされそうになります。

Magikon社のSveinさんが日本に来た時に、日本の母親のおかれている状況について彼と話しました。彼と話していると、まるでママ友と話しているようだと感じました。男性も同じように出張の時、子どものことを思って、子どもにも同じ景色を見せてあげたいと思うんだな、と印象的だったのです。『いとしいあなた』はまるで私の気持ちを代弁してくれているような本で、私のように罪悪感に苦しむ親を助けてくれる本だと思います。そして子育ては大変なだけでなく、大きな喜びであることを翻訳を通して伝えていきたいとも思っています。

 

Barnetmitt

 

「あなたの寝息が聞こえてきた。あなたはくまのぬいぐるみを抱え、眠っている。あなたのほっぺたは赤い。あなたは世界一うつくしい子。世界一すてきな子。面白くて、頭がよくて、勇敢で。あなたはわたしの子ども。わたしはあなたのお母さん」

私はしょっちゅう子育てという大きな責任におしつぶされそうになります。でも同時に母親であることをとても幸せに思っています。子どもは賢くて勇敢でかわいい存在です。

 あなたはステフン・クヴェーネランの伝記漫画『MUNCH』を訳しましたね。出版までのプロセスについて教えてくれませんか?

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クヴェーネランの『MUNCH』が他の素晴らしい本と一緒に並べられている。

2014年、ノルウェー文学普及財団Norla主催で開かれたノルウェー翻訳者会議に参加したのがきっかけでした。その会議でグラフィック・ノベルのセミナーも開かれ、そこで知り合った漫画家さんから、これまで読んだノルウェーの漫画で一番素晴らしいと思う作品として、本作をご紹介いただいたのです。

この本は一種の文学です。そのことが評価されて、翻訳賞にノミネートされたことをとてもとてもうれしく思っています。この賞の選考には翻訳だけでなく、作品自体の素晴らしさも加味されているのではないかと思います。

 私はSteffen Kvernelandの作家性に惹かれていて、最新作の『自死』(En frivillig død)も訳したいです。また今後は漫画も訳し続けたいです。『闘う女性たち』(Kvinner i kamp)『グループ』(Gruppa)、『』(Grønne greier)やLene Ask,Inger Setræの作品も訳したいです。

 

あなたは翻訳以外の仕事もしていますか?

 

私にとっては主婦業も大事な仕事です。日本では翻訳者の大半は結婚している女性です。日本には翻訳学校がたくさんあり、特に70年代、80年代には翻訳者になりたい女性が多くいました。その学校でまず翻訳をやるには他に仕事をもつか、養ってくれる旦那さんを持てと教えられた、という話を聞いたことがあります。

私も翻訳者として働きだしてから、出版社の年輩の男性編集者と翻訳料について話していた時、「(別に翻訳料が安くても)食いっぱぐれることはないんだよね。旦那さんが養ってくれるんでしょ」と言われ、悲しかったことを今でもよく思い出します。

私は子どもを保育所に入れることができず、ファミリーサポートさんに来てもらっている間に仕事をしています。ファミリーサポートの人はとても優しくていつも私は救われています。だからアンナ・フィスケの『家政婦さん』(Vaskedamen)を読んだ時、とても励まされました。

私は最近、市役所に行き、仕事をしたいから2歳の息子を保育所に入れてくださいとお願いに行きましたが、「入れない家は一杯ある。あるお母さんは、旦那さんが20時に帰ってきてから子どもを預けてファミレスに行き、仕事をしている。そういうお母さんはこの世の中には五万といる。あなただけではない」と言われました。

ノルウェー翻訳者協会のイーカ・カミンカさんとお話した時に、日本でも翻訳者協会をつくったほうがいいと言われました。マグネ・トーリングさんにも翻訳者協会の役割について教えてもらいました。「私は翻訳者です」ともっと自信を持って言えるようになりたいです。

日本では同一労働同一賃金が徹底されていません。日本ではたくさん働いても1人で暮らせるだけの十分な賃金をもらえない例えば図書館司書さんや保育士さんがたくさんいます。女性達はそのことに不満を感じていますが、憤りを表に出しません。社会から常に穏やかであるよう期待されているからです。日本では例えば母親が離婚した場合、多くの場合、貧困の道が待っています。そのことは日本の7人に1人の子どもが貧困に苦しんでいる一因となっています。

 

今、日本では『82年生まれキム・ジヨン』(“Kim Ji-young Born in 1982”)という韓国のフェミニズムの本がブームになっています。昨年私が訳したスウェーデンの『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』も好評でした。今後もフェミニズムの本や家族について書かれた本を訳したいです。『闘う女性たち』 Vigdis Hjorthの『生まれと育ち』( Arv og miljø )Kjersti Annesdatter Skomsvoldの『わが子』(Barnet)Monica Isakstuenの『動物に優しくしなさい』『怒り』Anna Bitschの『私をおいていくなら、あんたは私の子じゃない』(Går du nå, er du ikke lenger min datter)なども訳したいです。

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私は今種田麻矢さんと『私は今、自由なの?』という作品を訳しています。日本では、北欧のフェミニズムから学びたい人がたくさんいます。

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『闘う女性たち』より(一番右のコマでは20世紀の初頭、ヨーロッパの女性達が、「旦那さんに養ってもらえるでしょう」と、真っ先に職場で首切りの対象とされた歴史が示されている。まるで今の日本のよう)

 

このインタビューで私はフェミニズムのことを一杯書きましたが、私が四六時中、男性支配の社会に憤っているとは思わないでくださいね。最後、『きのこと慰め』の中のお気に入りのフレーズを紹介して、このインタビューを終えたいと思います。

 

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ロン・リット・ウーン

女同士が集まると、夫は生贄のように悪く言われるものだが、幸い私は夫に感謝していた。同じく幸いなことに、そのことを彼に何度も伝えてきた。私が結婚生活で、でき損ないの妻でなく、私らしくいさせてもらえたことに感謝でき、自分でもほっとしていた」

「周りの人に対するエイオルフの寛大さが、私をよき人の未亡人にしてくれた。彼がしたこと、または彼が言ったことについて、細々としたエピソードを聞かせられることで、いつも心が慰められた。いかに多くの人がエイオルフに感動させられたかに私は今でも驚かされる。子ども達だってそうだ。エイオルフは子ども達と一緒に絵を描き、また彼らのために絵を描いてやるのが好きだった。価値ある作品を遺すと、亡くなった後も、作品とともにその人は生き続ける。私はエイオルフについてのこれらの話を、貴重なエメラルドみたいに大切にしまっておくのだ」

 

私達は人間としてともに尊重し合うことができます。子ども達と皆さんの未来が、希望に満ちたものでありますように。

#国際女性デー

『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』浦和第一女子読書会

2018年9月22日YAA! カフェとして、『読みたい心に火をつけろ!』(岩波ジュニア新書)の木下通子さんが司書をしている埼玉県の浦和第一女子さんで、『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』の読書会が開かれました。

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この本のよさに気づいてくださったYAA! の皆さんが、木下通子さんにお話を持っていってくださったようです。 (木下通子さんについての記事) https://mainichi.jp/articles/20170706/ddm/008/070/103000c https://mainichi.jp/articles/20180217/ddl/k11/040/146000c https://www.youtube.com/watch?v=yLonkRusAAs dokusyokai2 dokusyokai dokusyokai3 dokusyokai4 dokusyokai5 dokusyokai6 読書会にはYAA! に属する司書の方達、浦和第一女子高校の生徒の皆さん、前回のイベントにも参加されていた自由の森学園の生徒さん、YAA! に参加したことのある女子高生の方、新聞社の記者の方、『読みたい心に火をつけろ!』や私の大好きな『しあわせに働ける社会へ』などの編集をされていて女性学を大学で学んだ編集者の方、浦和第一女子の父兄の方、他の図書館司書の方達などが参加をされていました。中には木下先生に注目をされていて、遠方からはるばるいらしていた司書の方もいらっしゃいました。 siawasenihatarakerudaremoboku 会では ・男女混合名簿について ・自分の子どもを男女分け隔てなく育てようとしても、男だから、女だからという社会の圧力から子どもを守りきれないこと ・女の子も経済力を持つようにと娘に言っても、娘がそれに反発することもあること ・『自分で考えよう』と本作とのつながり jibun ・子ども達が自分達で議論し、話すことで考えを深める北欧の子ども達について ・本の中でもう少し教育現場の具体的な例が出てくればよかったのではないかということ ☆教育現場の具体的な例は、同じ作者の『フェミニズムは現在進行中』に出てきます。日本の事例を加筆したものを出版をしてくださる版元様、ぜひご連絡ください。

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試訳 ・学校教育の現場では比較的男女平等。子ども達に今この本を手渡す必要があるのか。どう伝えたらいいか? ・公務員も比較的男女平等。本を手渡す自分自身が女であることによるハンデを感じたことがあまりないこと (→枇谷私見 私の通っていた女子高校も企業で働いたことのない先生がほとんどで、女性の職場差別について肌身で経験したことがある人は少なかったように思えます。偏差値教育偏重の女子校出の私は、大人になった今ではそういった世間のしがらみを隠すのではなく、実際の体験談をあらかじめ知ることができ、どうしたらいいか考えられたら、もう少し大人になった時にショックを受けず、対応できたのではないか、と後悔しています。難関女子高校の先生方は勉強ができて、自主自立を目指す女の子を尊んでくださいますが、企業や世間、男性は必ずしも価値をおき、評価してはくれません。有名大学進学率を上げることで生徒が集まる面もあるでしょうから、学校からするとこれは不都合な真実でしょう。それなのに、この本を受け入れてくれた浦和第一女子高校の皆さんの度量の大きさに敬意を表します。 先生達自身が社会との接点を多く持ち、それを子ども達に伝え、また北欧で作家による学校訪問が盛んに行われているように(国から補助金が出ます)外部の人達も積極的に受け入れる学校づくりをしている学校が増えれば、私のように「勉強なんてしなければよかった」「勉強しても社会で評価されるとは限らない」などと今勉強の最中の高校生の前で宣う人間を輩出せずに済むのではないでしょうか。 参考:将来に希望を持てない若者が約4割! 日本のキャリア教育の役割とは? また金銭教育、お金を稼ぐことを学校教育で教えることの大切さを切に感じました。 (参考:現在校正中。ノルウェーの金銭教育の本) hvaer 有名難関大学に進学するよう一様に子ども達に指導することが本当に子どもにとってよいことなのか、人間の生き方は実際には多様であり、子ども達にも多様な選択をとる自由を保証するべきではないか、生きるとは何か、働くとは何か、もっと子どもとともに考え、何のために大学に行くのか、今の時代に女子校がいまだに存在すること(デンマーク人の方からデンマークには女子校はもうすでにない。法律で禁止されていると聞いたのですが、他の北欧諸国でもそうか調べきれていません)、偏差値教育を続けることがジェンダー的に公正なのか、日本経済の発展に役立つのか、人々の幸福度の向上という観点ではどうなのかなども、学校だけでなく社会で議論をするべきことに思えました。学校と社会は合わせ鏡です。 先生方や親御さんにも学歴差別を自分達がしていないか、学歴で人間を判断するような偏った思想を子ども達に知らず知らずのうちに植え付けていないかぜひ振り返ってみてほしいというのが生意気かもしれませんが、私の切なる願いです。「~高校のレベルは、偏差値は」といった話を子ども達にしていませんか? そんな話ばかり聞かせられた子どもは学歴差別に加担する人間になりませんか? 平等って何でしょう? 公正って何でしょうか?)。 kodomosyakai 学歴差別はあるのか?新卒採用における現状と対策 高学歴で貧困は本当か。日本のポスドク問題とは何か 男女の賃金格差 kougakurekijyosi njyo koru guruntovi hoejskole 参考: https://twitter.com/mitsui_publish/status/1044111180548231168 https://twitter.com/mitsui_publish/status/1044120358415208449   minnnanokyouiku   学歴差別をされて嫌な思いをしている人達の存在を知ったのは、ウーマンラッシュアワーの村本さんのお話をAbema TVで聴いてからでした。それを知って自分は何て傲慢な人間だったんだろうと思い知らされました。そして実際、高校生の時、進学校に入れた自分は頭がいいんだ、レールから外れずこのまま真面目に頑張ればエリートになれるかもしれない、と奢っていた自分が嘘のように、今の私は社会で大した活躍はできていません。 今私が訳しているデンマークの幸福研究の本も早く皆さんに読んでほしいです。 hyugge lykkenunder 参考:デンマーク自分らしい学びかた、働きかた、生きかたを考えるHappiness(ハピネス)&Hygge(ヒュゲ)の旅 (注:幸福研究の作者がツアーでお話をするだけでツアーと私は無関係です。)   ・『このTシャツは児童労働に作られました。』のような本に高校生個人が興味があっても、タイトル、表紙デザインなど諸々の理由から、実際に高校生がなかなか手にとらないのではないか? konotsyatu ・学校教育にどの程度子ども達の意志が反映されているか? ・今回の本はどうしたらもっと高校生に届くのか? 表紙デザイン、タイトル、イラストと文字の割合、コンセプトの打ち出し方、フィクションとノンフィクションどちらが伝わりやすいか、それぞれの効果などについて高校生に案をだしてもらいました。 →題名にフェミニズムと突然くると身構えてしまうなどの意見も。 nihonnoyabai1 『日本のヤバい女の子』 (好例として高校生が例にあげてくれた作品)   『ヒトラーとくらした少年』 hitora blackbox kimino ・司書さんによる本紹介 sekaiwokaetadokusyo

・浦和第一女子さんの模擬選挙のこと

参考:社会科における主権者教育(浦和一女さんも登場します)

(最後高校生の皆さんが感想を発表してくださいました)

・生徒会活動を通して変えたいと思ったことがあっても、なかなか変えられないという経験をしたことがある。1人1人が変えよう、変えられるんだという意識を持つことが大切なのではないか?

・ネットニュースなどで自分の好きな情報だけを見られることが、投票率の低さにつながるのでは?

・情報を選ぶことの大切さ。

・考えていなかったようなことを知れて刺激を受けた。

途中高校生の方から翻訳の仕事について質問されましたが、私は自信をもって翻訳家を目指してくださいと言えませんでした。

翻訳は主婦の小遣い稼ぎ? 北欧語翻訳者が #フリーランスが保活に思うこと イベントに参加して

大学教育は生き延びられるのか? – 内田樹の研究室

 

私も就職活動の時、大人(主に女性)にその方達がついている職業につくにはどうしたらいいか、と質問した経験がありますが、その答えは意気揚々としたものではありませんでした。子ども達に自信を持って、自分が今ついている職業をすすめられるような社会をつくるためにこれからも発信を続けます。そうでないと、エッバのおばあちゃんのように、私は私にできることをした、今度はあんた達の思うようにやってみなさいと胸をはってバトンを渡すことはできない。今の自分をとても情けなく思っています。

参考:

第78回ノルウェーについて学ぶサロン

「人に優しいノルウェーの働き方」
~裁判官マーリットさんに聞く~

日本男女の収入格差ハンパない!! 正社員でも差額は平均●万円!

スウェーデン、男女平等どう実現?=大使館、税制から探る討論会

北欧語翻訳者リスト

菱木晃子さんHP

大学4年生の時、大阪外大の友人達と就職の話をしていて、大人は幸せそうに見えない、自分達は就職して幸せになれるのか、不安だ、やっていけるのだろうか、と話していたところ、同じ大学で聴講生としてデンマーク語を学んでいた元社長さんだったおじさんが、「皆できているんだ。大丈夫。玲子ちゃん達にだってきっとできるよ。怖がる必要なんてない」と言ってくれたのを覚えています。私も子ども達にそう言える大人になれたらどんなにいいかと思います。

YAA! の皆さん、木下先生、高校生の皆さん、司書の方々、参加者の皆さま、本当にありがとうございました。

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『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』ワークショップ in 飯能市立図書館 #私達は女性差別に怒っていい

飯能市立図書館さんで『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』ワークショップを行いました。YAA!(ヤングアダルト&アート・ブックス研究会)の皆さんや飯能市立図書館の皆さんをはじめ参加者と交流することができました。

https://twitter.com/trylleringen/status/1025957453928718338

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かねてから自分が訳した本が読者に届いているのか実感が持てず、フラストレーションが溜まっていました。子どもの読者はインターネットなどに書評を書き込むことは少ないですし。ですのでこのような機会をくださった皆さんに感謝いたします。
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私がデンマークをはじめ北欧に興味を持ったのは高校生の時、徳間書店から出ている『マリアからの手紙』を読んだことがきっかけです。デンマークにも教師が政治の話をしただけで、政治観を児童に押しつけていると父兄から苦情が上がる時代があったことがこの本を読むと分かります。大人に本音で話してほしい、守られてばかりでなく自分で考え、強くなりたいと願う主人公。この本に感動した私は高校の図書館司書さんに相談し、翻訳者さんに手紙を書いて徳間書店に送りました。その手紙を翻訳家さんに転送してくれたのが編集者の上村令さん。最近では『母が作ってくれたすごろく』という素晴らしい作品を編集されています。

その頃の私はどうせ女の人は結婚したらパートや主婦になるのに、どうして大人はそのことに触れずただ勉強しろって言うんだろう、とか、どうしてスカートを短くしちゃいけないと先生は言うのに、理由を説明しなかったり、私達生徒が痴漢にあっているのを薄々感じながら見て見ぬふりをしたりするんだろう、とモヤモヤしていました。

『マリアからの手紙』を読んで、自分も主人公のマリアと一緒に自分の力で考え、行動し、意見を言える自由で強い子になれたような感覚を覚え、すかっとし、励まされました。この本の作者はフェミニストでした。私が抱くフェミニストのイメージは、自分の頭で考え、意見を言葉にし、行動できる人、性別や人種にかかわらず公正に物事を考えられる格好いい人です。

参考:#東京医大 女子受験生を一律減点…合格者数抑制医師国家試験合格状況女性医師の年次推移 #私達は女性差別に怒っていい
子どもの自己肯定感国際比較

『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』でも10歳のスウェーデン人の少女が不平等に気づくところが描かれています。
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その後、グループに分かれ、参加者の皆さんに男女の不平等に気づいたことがあるか話し合ってもらいました。
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話し合いでは、クラス名簿が男女別、しかも男子が先に呼ばれる学校がいまだにあることや、昔は家庭科は女子、男子は技術と別々の授業だったこと、家庭科が男女共通になって大分意識が変わったこと、女の子だから短大でいいんじゃないの、どうせ結婚するんだし、と先生に進路指導の時言われたなどの意見が出ました。また高校生も参加してくれていて、男らしさ、女らしさについて言及していたのが印象的でした。男女差別がなくなってフェミニズムとかいうのが最終的になくなればいいといった発言もありました。

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作者は『フェミニズムは現在進行中』という別の本で、こんな例を挙げています。
・学校で私がサッカーをしていて、絶好のチャンスでシュートをミスしてしまい、男の子達から「下手っぴ!」と言われてしまいました。なのに同じミスをした男の子には「ドンマイ」って言うの! 男の子達は女子は男子より劣っているから、一緒にゲームしたくないのでしょう。それに先生からの扱いも、男子と女子では違っているようにエッラは感じています。​

・インターネットのAsk.fm(Q&Aサイト)で友だちのアカウントを見ると、普段面と向かって話すのとは違った,意地悪で乱暴な言葉を書き込んでいる子がいることに気付きました。そしてブスだとかバカだとか言われるのは主に女の子でした。​

私自身が男女の不平等を感じるのは働いても働いてもなかなか賃金が上がらない時です。
参考:月収12万円で働く39歳男性司書の矜持と貧苦

日本は圧倒的な男性中心社会です。
参考:国会議員の女性の割合

https://twitter.com/specialcat0/status/1012007386494586880
各国の女性の年齢階級別労働力率

主人公のエッバは子どもや女の人も大事なことの決定に加われば世界はうんと面白くなると考えました。

14、15ページでエッバはさっきの新聞の写真を、いとこのヨリンダに送りました。ヨリンダはエッバより少し年上で、すっごく頭がいい女の子です。エッバはヨリンダにだったら、何でも話せます。​
「世の中で大事なことを決めるのは、何でおじさんばかりなの?」​
「ずっとそうだったからよ。わたしたちが変えないかぎり、変わらないの」
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次にグループでフェミニズムって一体何か話し合ってもらいました。

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発表してもらった後、本の中でフェミニズムについて何と説明されているか伝えました。本では「男女平等を目指し、女性の権利を​求める思想。​男性と女性が経済的、社会的、政治的に平等になるよう求める運動のこと」と描かれていました。

その後、エッバはクラスメートや近所の女の子や男の子と、フェミ・クラブを結成。日常感じる不平等について話し合います。​​


☆なぜ皆がフェミニストを名乗らないのでしょう?


・フェミニストというのは男嫌いで、女が全てを決める社会を望む人達と勘違いしている人がいるから。​
・辛抱強く耐えていれば、そのうち変わるでしょ、と思っている人もいるから。​
・フェミニストは社会不適合者で、不満を持つのは自分達が悪いからだと言う人もいる。​


→もしもあなたが男か女かは関係なく、皆が平等な権利だけでなく、責任、平等な機会を得られる社会を望むなら、あなたはフェミニスト。

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次にフェミ・クラブのメンバーたちは、最初のグループディスカッションの発表で男子高校生が触れていたように、男らしさ、女らしさについて話し合います。

「女の子は、傷つきやすくて、か弱いと思われる。おしゃれや男の子にしか興味がないとも」

「男はサッカーや乗り物の運転が上手なものと思われている。どんな時も強く、たくましくなきゃならないとも」​
主人公のエッバにおばあちゃんはスウェーデンの女性が男女平等を手に入れられたのは、昔の女の​人たちが、権利を勝ち取ってきたからだと言います。​

エッバは元フェミニストのおばあちゃんのナビゲートで、メアリー・ウストンクラフト(25,26,31,31ページ)をはじめ、ヨーロッパの女性史を学びます。

女性史を語る上で欠かせないトピックは女性選挙権の獲得です。

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スウェーデンの女性が選挙権を得たのは1921年でした。

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女性選挙権が世界で初めて認められたのはニュージーランド。ヨーロッパで一番早かったのはフィンランド。​
日本婦人参政権は第二次大戦後の1945年12月の改正選挙法で実現し、満20歳以上の男女による平等な選挙制度となりました。

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その後グループで選挙権はなぜ大事なのか話し合ってもらいました。

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発表が終わると、本の中でどう描かれていたか紹介しました。

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英国のサフラジェットは1912年と13年の間に数百もの放火、爆破事件を起こしました。メンバーの1人エミリー・ワイルディング・デイヴィソンは抵抗の意志を示すため、ジョージ5世の馬に飛び出した際、馬に踏みつけられ、数日後に亡くなりました。警官はサフラジェット達を容赦なく警棒で叩き、牢屋に入れました。サフラジェット達がハンガーストライキすると、警察は医者を呼び、無理矢理食べものを流し込みました。これにより肺炎になったり、命にかかわる病気にかかる人もいました。

そして第一次世界大戦がはじまると、サフラジェット達は活動を休止。その多くは救助隊に志願。男性が戦場に行っている間、女性達は男達の代わりに働きました。戦争が終わると、女性なしでは社会が回らないと気付いた政治家達は女性選挙権を認めざるを得なくなりました。1918年、30才以上の女性が選挙権を得ました。さらに10年後、21才以上の女性にまで女性選挙権が拡大しました。

こんな風に英国のサフラジェットは暴力を用いることも辞しませんでしたが、スウェーデンの女性解放運動では、力はほとんど見られませんでした。1903年女性の投票権を求める団体が作られ、議論をしたり、ビラを配ったり、演説をしたりすることで選挙権を得たのです。実現までには35年もかかりました(48,49ページ)。​

日本では若い人は政治活動にほとんど参加しないようです。私が訳した『このTシャツは児童労働で作られました』ではH&MのTシャツをつくるのに児童労働が行われていることを知ったノルウェーの若者が、工場に忍び込み、火をつけてしまい、火はすぐに消し止められたものの1年間の奉仕活動をしなくてはならなくなったと描かれています。

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また初めて翻訳した『ウッラの小さな抵抗』ではドイツに占領された第二次世界対戦中のデンマークの人たちが占領軍に反対し、破壊工作を行っていたことが描かれています。
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最近金原先生の訳で『ナチスに挑戦した少年たち』という作品も出されています。

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北欧の子どもも大人も権力に服従しないというマインドを持っているのでしょうか。

作者のサッサさんは『10歳からの民主主義レッスン』の中で非暴力非服従を説いたガンジーのことや(30ページ)、スウェーデンのヴェーグネル(38ページ)のことを書いています。

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参加者に意見をうかがったところ、デモに参加するなど生徒の政治活動を禁止する理由はないという考えの高校もあることが分かりましたが、私がいた高校では生徒がデモをするなど考えられませんでした。

学校に政党が来るとお話したところ、どんな風に政治的中立を保つのかという質問が出ました。そのことに詳しいのは両角達平さんという方です。

研究会の方が私と鈴木先生のイベントや、ミツイパブリッシングさんのイベントで聞いたことをまとめてくださっていました。ワークショップでは後者について発表してくださいました!

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この後子どもの発信を大人がどれぐらい助けているか、参加者の方に意見をうかがいました。

(参考)
日本の子どもはネットでコンテンツの消費はするけれど、発信はほとんどしない
政治集会やメディア・ネットの意見表明など日本の若者は政治活動にほとんど参加せず関心もない
若者の声を政治に届けるには、子ども郵便箱を設置 ノルウェーの取り組み
日本でも高校生教育アイデアソン
子どもの本総選挙
N高校作家・冲方丁がN予備校&ニコ生で小説創作授業
政治的発言をすると干される芸能人
子どもとプライバシー、ネットパトロール
正しく怖がるインターネット
「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知)」に関するQ&A(生徒指導関係)
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著者のサッサさんは1953年生まれ。スウェーデン芸術家協会会員。スウェーデン作家協会会員。1975年以降、スウェーデン各地で作品の個展を開催。絵本を中心に数多くの作品を発表。『10歳からの民主主義レッスン―スウェーデンの少女と学ぶ差別、貧困、戦争のない世界の原理』によってスウェーデン図書館協会から2002年度カール・フォン・リネー賞を受賞。​

サッサさんは学校や図書館などで、民主主義についての子ども向けのワークショップを開いてきました。サッサさんはこう言います。「子ども時代は、大人になるためのただの準備期間ではない。子ども時代は、人生の一部です。私達は子ども達を社会の一員として受け入れるべきです」子どもを議論に引き入れることで、世の中がよくなるのではないかとサッサさんは考えます。

『10歳からの民主主義でレッスン』でサッサさんはこう言います。「この本を書くことになったきっかけは、子どもの発言の場があまりにも少なすぎると思ったからです。子どもは賢い存在です。わたしたち大人は、子どもの声にもっと耳を傾けなければなりません。今こそ、子どもも選挙権を持ってよい時代ではないでしょうか。​子どもは問題に対して大人が考えつかないような解決策を見つけることができるので子どもにとってよい社会とは、大人も含めたすべての人にとって、よい社会なのです。」

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作品の中では「人の見た目のことじゃなく、中身について話すようにしよう」、「まわりの期待に応えることばかり、考えちゃいけない。他人からどう思われるのかばかり、気にしない。ありのままでいよう。自分の気持ちに正直になろうよ。そして、したい格好をしよう。それにほかの人も、自由にさせてあげるんだ」​と描かれています(84~89ページ)。
最近ではこんなことも話題になっています。

ブルゾンちえみの「ブスいじり」に視聴者ゲンナリ もうやめたら?​

またCHAIさんやあいみょんさんのような新しい価値観を持つアーティストも出てています。

以前私もノルウェー人の人に「私太ってるから」と言ったら、「女性は妊娠したとき胎児を守れるように脂肪がつきやすくなってる。なんでそんなことばかり日本の人は言うの?」って言われてはっとさせられたことがあります。英国人の男性も私の太ってるトークには一切のってきませんでした。笑わないことで会話を打ち切ることができるのです。

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最後にワークショップで、様々な家族の絵本を見ていただき、グループでどんな風に男女の役割が描かれているか発表していただきました。
話をして思ったのが参加していた司書さんも高校生も私が想像していたよりも前衛的な考え方の持ち主であること、自分で考える力を持っていることでした。

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また男だから、女だからという偏見もあまりなく、これならLGBTQのこと、また性教育、男女の恋愛についてなどについて話しても全然高校生も理解してくれたのではないかと思いました(勝手に私が遠慮してそこは話せなかった)。

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また途中ご紹介したWith youさいたまの「ジェンダーから見た日本女性の歴史」(明石書店)をもとにしたジェンダーパネルに興味を持ってくれる司書さんもいて嬉しかったです。パネルは無料で借りられるようです。

https://twitter.com/trylleringen/status/1016526274078994432

私は向こうの学校に通っていたわけではないので、学校制度について詳しく話せないのがネックです。鈴木賢志先生などのお力を借りられるとより日本の学校に役立つ提案ができそうです。

また思いの他、北欧の学校制度への関心が高く、もっと深い入り組んだ内容の本でも、日本の学校関係者、児童書関係者は興味を持って受け止めてくれるのではないかと思いました。できれば教授法の本なども今後訳したいです。

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https://twitter.com/trylleringen/status/1022453603351506944
https://twitter.com/trylleringen/status/1026838891142119425

https://twitter.com/trylleringen/status/1026840403604004864

https://twitter.com/trylleringen/status/996536913002561536

https://twitter.com/trylleringen/status/996538282182787072

 

https://twitter.com/trylleringen/status/996533437698686976

https://twitter.com/trylleringen/status/996534875812343808

 

https://twitter.com/trylleringen/status/1006310980043735040

https://twitter.com/trylleringen/status/1023119048232525826

北欧の図書館制度についても、もっと知りたいです。

https://twitter.com/trylleringen/status/996544276732366849

https://note.mu/reikohidani/n/n5411fcbc0e03

FireShot Capture 588 - ノルウェー人日本文学翻訳家マグネ・トリングさんインタビュー|_ - https___note.mu_reikohidani_n_n5411fcbc0e03———————————————————-

またこの本は哲学と絡めて授業展開もできる本です。

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議論の中で出てきた疑問への対処例
https://note.mu/reikohidani/n/n75ff18e544ab

神楽坂モノガタリ『世界を変えた50人の女性科学者たち』『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』イベント

 

8/4(土)神楽坂モノガタリさんにて、野中モモさんと創元社の編集者さんとイベントをしました。 ひるねこBOOKSさんといい、CHIENOWA BOOK STOREさんといい、Readin’ Writin’さんといい、鈴木先生といい、くまざわ書店ペリエ千葉本店の磯前さんといい、この作品を世に届ける手助けを男性もしてくださることに驚かされ、また感謝しています。この本の普及活動については、男女の分断という言葉は無縁に思えます。 私は野中モモさんの訳された『バッド・フェミニスト』のファンで、そこから野中モモさんの翻訳作品、著作活動に注目してきました。 久禮さんもハフポストの記事『スリップの技法』を拝読したことがあり、まさかお声がけいただけるとは思っていなかったので、光栄でした。 準備や告知などしてくださり、ありがとうございました。 野中さんとはFIKAさんでの対談で一度直接お会いしていましたし、創元社の編集者さんともメールのやりとりなどしていたのもあり、当日の会では、本やフェミニズムのアイディアを届けたいという思いを互いに理解し合った上で、連携プレイで発表、対談ができたような気がします。 久禮さんも男性目線での思いを語ってくださいましたし、本の話題になるとさっと書影を出してくださったりと本への愛溢れる会になりました。 私達が登壇する前に会場で『バッド・フェミニスト』についてのTEDトークを流していただきました。       

野中モモさんが『世界を変えた50人の女性科学者たち』のポストカードや、よわね問題、翻訳の女言葉多用問題について考えるのに有益なビョークの言葉を翻訳した資料も用意してくださり来場者に配布できるよう用意してくれました。

対談では、まず『世界を変えた50人の女性科学者たち』について野中モモさんと編集者さんからお話があり、途中ちょこちょこ私も感想を伝えました。アメリカではSTEM教育、特にジェンダー平等に力を入れた取り組みが盛んなのだそうです(野中モモさんの発言は不正確だといけないので、ここでは概要だけにとどめます)。

私は『北欧式眠くならない数学の本』を例に、児童書のイラストで物理学者も生物学者も女の人が多く描かれていることや、

『世界を変えた50人の女性科学者たち』にも出てくるマイ・ブリット・モーサーがノルウェーでも科学の世界は男性優位であると述べていたこと、(下の画像は夫婦の研究について書いたポピュラー・サイエンス本。どうか重訳しないでね 汗)

『脳はスーパースター』(邦訳予定あり)の脳科学者が

OECDの学力調査などで理系科目の得点の男女格差を強調することで、女の子が自信を失うことや、女の子は数学ができないと聞かされた女子の数学の得点が下がったという実験の結果や、女性は方向音痴という言説は正しいのかという話をしました。創元社さんは関連本『地図の進化論』に書いてあった内容を紹介してくださいました。女性は愚鈍であるかのような迷信をなくすために科学研究を用いることができます。

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野中モモさんはZINEの活動も積極的にされていますが、若い人たちの発信を助けることに私も関心を持っています。最近のノルウェーでは大学生が科学、医学の本を出していて、ベストセラーになっていたり、学生の研究にスポットを当てるサイトもたくさん出てきています。

https://twitter.com/trylleringen/status/984212440865849344

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その後私から『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』の作者がどんな人か、や作品についてご紹介しました。

https://1drv.ms/p/s!AgCCjjXNMWkXhG2TsS0nYEuHVeN9

野中さんが94ページに出てくるファッション・ブランドのポスターを破るというような違法アクションについて日本では反発が強いのではないかとおっしゃっていたのが印象的でした。

『世界を変えた50人の女性科学者たち』でもルールが不公平なのだから、ルールを破ることを怖れるなという教えが繰り返し出てきて、それを遵法意識の強い日本で理解してもらうにはどうすればいいか頭を悩ませているそうです。

モモさんは『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』で権力とは何かが説明されていることに関心されていて、そこがこの違法アクションの問題ともつながっていくのではないかと思いました。野中さんはやっぱり鋭い。

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その後、久禮さんの選書についてお話くださいました。(やらされる労働を、どう自分の仕事に作り変えていくか、子どもと一緒に、大人だって何度でも学び直せるんじゃないか、よりよく生きられる環境を自分で作り出すには?、仕事と暮らしを自分ごととして引受け、自分の機嫌を自分でとって、家族や隣人と向き合えるようになるには?)
https://twitter.com/kagurazakamono/status/1024166503430508549

https://twitter.com/kagurazakamono/status/1024163331328765952

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https://twitter.com/trylleringen/status/1025791139301928960

その際、モモさんが Maker Faire Tokyo 2018について教えてくださいました。

またモモさんから『退屈をぶっとばせ!』や『ヒロインズ』のリコメンドも。
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野中さんから英語圏のフェミニズムの本をたくさん紹介していただきました。(野中さんの訳で絶対出してほしいので、タイトルはここでは言及しません)

私も1冊紹介しました(重訳しないでね)。

https://twitter.com/trylleringen/status/1023410475109732352

イベントには、大学生の方や、北欧に留学予定の方、編集者さんなどがいらっしゃいました。

https://twitter.com/trylleringen/status/1025881105239433219

最後質問のところで北欧の土木業従事者に占める女性の割合や労働環境について質問がありましたが、『あるノルウェーの大工の日記』のことを思い出しながら答えようとしましたが、答えることができませんでした。

https://twitter.com/trylleringen/status/1025890905926955008

後で調べたところ、こんなことが分かりました(デンマークの例です)。

https://www.tv2fyn.dk/artikel/dansk-byggeri-vi-vil-have-flere-kvinder

デンマークの建築・建設・土木業界で働く人、10人のうち女性は1人という割合だそうです(土木だけに限った調査は見あたりませんでした)。女性の割合は20年間、ずっと変わっていないそうです。建築・建設・土木女性会議では今後10年で女性の割合を倍増させるため、学生にこの業界の魅力を伝えるなど活動をしているそうです。

https://www.danskbyggeri.dk/presse-politik/nyheder/2018/kun-faa-bygge-og-anlaegsvirksomheder-overvejer-at-ansaette-kvinder/

https://bupl.dk/artikel/kvindebrancher-haardt-ramt-knokler-mere-end-maend/
ただ肉体的に負荷の大きい仕事についている女性(建築業界だけでなく掃除のしごとなども含む)は、肉体的に辛くなってくる60歳近い人が20代の人と同じ仕事をしていたりといったことがよく見られ、年齢に応じた肉体の変化、健康に十分に配慮しきれていないと労働環境研究国立センター(NFA)の教授Andreas Holtermannが警鐘を鳴らしています。また男性が多い業界では、女性も肉体的な負荷が大きい仕事を男性並みにこなすよう期待される傾向があるようです。

http://nfa.dk/da/nyt/nyheder/2018/danmark-kan-laere-af-sveriges-tilgang-til-sikkerhed-for-toemrerlaerlinge
建築現場での事故を減らすための取り組みについてはデンマークよりスウェーデンの方が進んでいるよう。デンマークでもスウェーデンの例に倣って、企業と学校が連携して安全な労働環境の確保に取り組もうという動きもあるようです。

https://finans.dk/artikel/ECE4224545/Kvinder-bliver-ikke-v%C3%A6rdsat-i-bygge-fagene/?ctxref=ext

質問者さんのお仕事とは違うかもしれませんが、デンマークでも、女性の大工さんが、評価されにくいことが問題視されているようです。

肉体労働が女性の体にどんな影響を与えるのか、病気や死亡リスクが上がるのではないか、それを防ぐにはどうしたらいいかといった研究もされているようです。女性労働と健康について今後さらに勉強していきたいです。

男女は身体的に異なるわけで、女性が男性と同じように働くことが男女平等なのか、についても引き続き考えていきたいです。野中モモさんの訳で出るというWomen in sportsにもひょっとしたらつながるテーマかもしれないので、本が出たら必ず読みたいです。

WOMENINSPORTS

女性が働く中で直面する困難にどう立ち向かえばいいか描かれた本も訳したいです(原語から訳したいのでどうか重訳しないでね)。

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創元社さんから出る『女性の権利宣言』も出版が楽しみです。

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会ではパリテのパンフレット

も置いてもらいました。

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のことや野中さんのZINEの活動 http://lilmag.org/  

Feminism for everubodyにも少し触れました。

 

今回のイベントは私なりのパリテカフェだと思っています。この人ができるなら、私だってできそう、誰だって発信者になれるんだ、私だったらこう発信する、表現するのにって、私を見て思ってくれる人がいいな、と思います。無名な私に手を貸してくださった神楽坂モノガタリの久禮さんをはじめとする皆さんに感謝します。

心のこりなのは、当初予定していたフリーランスの仕事についてや、男性の生きづらさなどについてあまり話せなかったことです。今後、神楽坂モノガタリさんでも継続してこれらのテーマについて扱っていくそうなので、イベント拝聴にうかがいたいです。

この度は本当にありがとうございました。
8月25日により少人数で女性団体の方と読書会をしますので、お話できたら嬉しいです。

2018年7月28日Readin’ Writin’ BOOK STORE『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』読書会&ちゃぶ台返し!

わたしはわたし、ぼくはぼく、自分らしく生きるってどういうこと?
『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』 読書会&ちゃぶ台返し!
翻訳者・枇谷玲子÷ちゃぶ台返し女子アクション・もりこ

『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』(サッサ・ブーレグレーン著・枇谷玲子訳、岩崎書店)の読書会を、Readin’ Writin’ BOOK STOREで7月28日(土)に開催します。

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頑張っているのに報われない。
なんだかモヤモヤしている。
幸せを感じられない。
もしかしたらそれは、世の中のことを「スーツ姿のおじさんたち」が決めているからかもしれません。

ジェンダーギャップ指数をご存知ですか?
社会進出における男女格差を示す指標です。
2017年、スウェーデンのジェンダーギャップ指数は144か国中、5位。
男女平等の先進国です。
一方、日本は114位で、とっても男女不平等!
男女格差が当たり前すぎて、気がつかないだけなんです。
日本で生きているだけで、なんとなくしんどく感じるのは、このあたりに原因があるのかも。

本書は10歳のエッバの目を通して、スウェーデンをはじめ世界の女性たちがどのように自分たちの権利を獲得してきたのか、また他人に支配されずに自分らしく生きるにはどうしたらよいかが、優しい言葉で書かれています。

私たちは本書から学ぶことで、性別にかかわらず夢を叶え、好きな服を着て、世の中を変えることができるようになるでしょう。
自分たちにこれから何ができるか、みんなで一緒に考えてみませんか。
想いを分かち合ってみませんか。

また、読書会の最後には、みんなでちゃぶ台を返しましょう!

お申し込みはこちら。
http://readinwritin.net/2018/06/19/%E3%82%8F%E3%81%9F%E3%81%97%E3%81%AF%E3%82%8F%E3%81%9F%E3%81%97%E3%80%81%E3%81%BC%E3%81%8F%E3%81%AF%E3%81%BC%E3%81%8F%E3%80%81%E8%87%AA%E5%88%86%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%8F%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%82%8B/

もりこさんお薦め! Readin’ Writin’ BOOK STORE周辺情報

(浅草橋)

少し離れますが、浅草橋からスタートし、蔵前を通って、田原町のReadin’ Writin’ BOOK STOREまで歩くのも楽しそう♪

 

浅草橋には問屋街もあり玩具、文具、革製品、アクセサリーなど色々なお店があり、手芸好きな人にもたまらないそうです。

(蔵前)
おしゃれなカフェが一杯!

川沿いをのんびりお散歩♩蔵前のおしゃれカフェ18選

Daily’s Muffin

(田原町)

地図リンク

洋菓子レモンパイ

パン屋ペリカン *要予約

遠州屋

そば甲州屋

tizu

 

 

 

 

 

 

 

JISS研究講座 第206回 2018年7月5日(木)「北欧に学ぶ男女平等」

JISSのHPより抜粋

JISS研究講座 第206回 2018年7月5日(木)「北欧に学ぶ男女平等」

Print終了しました。告知文↓

「スウェーデンにおける著名な芸術家・作家であるサッサ・ブーレグレーン氏の近著である『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』を邦訳された枇谷玲子さんをお迎えして、北欧における男女平等や主権者意識について考えていきます。なお今回は、通例のような講演と聴講という形ではなく、所長の鈴木賢志が聞き手として内容に関する質問やコメント、話題提供をするととともに、参加者の皆様からも広くご意見をいただきながら、北欧と日本の違いや、日本が北欧から学べることについて考えていきます。」

● 講演者 枇谷玲子 氏 北欧語翻訳者
● 日時 2018年7月5日(木) 午後6時~8時(5時半開場)
● 場所 スウェーデン大使館1階ノーベルオーディトリウム
● 参加料 研究所会員は無料 一般 1,500円、学生 1,000円(当日受付にて)
● お申込みは、以下のフォームよりお願いいたします。

http://jissnet.com/archives/3392

 

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ひるねこBOOKS『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』刊行記念イベント

2018年6月8日に『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』の刊行記念トークイベントを行いました。

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https://www.facebook.com/events/209392903178043/

内容はこちらにまとめています。

https://note.mu/reikohidani/n/n847faf2a6f98

https://www.dropbox.com/s/x7bpiho74ysj8mz/%E3%81%B2%E3%82%8B%E3%81%AD%E3%81%93BOOKS%E3%81%95%E3%82%93%E3%80%8E%E5%8C%97%E6%AC%A7%E3%81%AB%E5%AD%A6%E3%81%B6%E5%B0%8F%E3%81%95%E3%81%AA%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%82%B9%E3%83%88%E3%81%AE%E6%9C%AC%E3%80%8F%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88%20%287%29.pptx?dl=0

北欧の子育ての本について(脳科学か心理学か)

日本には北欧の子育てについて関心が高い人が多いようです。私は北欧で育ったわけでも、北欧に住んでいるわけでもないのですが、主に本を通じて、私なりに北欧の子育てについて知り、考えてきました。出会う本の中で、日本でも受け入れられそうな本があればぜひ訳したいと思っています。

でも子育てって本当に難しい分野だと感じています。

例えばフェミニズムの本については、北欧全体のフェミニズムの議論がどんなもので、様々な立ち場の人の意見を概括した上で、著者の意見を提示した本がいくつか出ているのですが、子育ての本については、これ1つ訳しただけでは全体像が見えない本ばかりで、頭を抱えてしまっています。

私が北欧の子育ての本を訳したいのは、日本で子育てしていて、辛いと思うことがよくあるからです。子育て支援センターで親学の講座に何度か参加したのですが、私の偏見かもしれないのですが、子育て支援センターは土曜少しやっているところもあるものの、主に子育てに専念している人に向けた施設であるように思えます。私が支援センターで受けた親学の講座でも、もっともっと子どもに手をかけてあげようというもので、働いている親への視点や配慮が欠けているように思えました。

実際、働いているお母さんだって子どものことをもっと知りたいし、子どものことを思っている人はたくさんいて、そういうお母さん達が、例え時間は限られてはいても、子どもの成長について学び、喜びを感じることができるような本を訳したいと思っています。

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北欧の子育ての本でとても有名なものに、イェスパー・ユール(Jesper Juul)さんというデンマークのファミリ―・セラピストの作品群があります。

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北欧の教育では子ども達の自尊心を高め、自分にも価値があるんだと子ども達皆に思わせることが重視されているように私には思えます。アメリカのエリート教育とは異なる北欧の教育観が私はとても好きです。

北欧では親が絶対的な権威ではなく、子どもの意志を尊重し、なぜそうしてはいけないか理由を説明する傾向が日本よりもあるような気がします(実際は本当は説明しなくてはならないけれど、時間がなかったり根気が続かなくてただダメと言ってしまうこともあるようですが)。体罰も禁止されているようで、余計に親はどうやって子ども達にいいこと、悪いことを言葉で教えるか、どこまで子どもの意志を尊重し、どこからはしてはいけないことと線引きするのか、頭を悩ませているのでしょうか。そういったことをテーマにした本が多く出されていて、特にイェスパーさんの本は、国際的に評価が高いようです。

同じデンマークのリーダー論、コーチングが専門で、LEGOなど様々な企業でも研修を行っている Anette Prehnさんの本もデンマークではよく売れているようです。

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デンマークの作品に52件もレビューがついているのはとても珍しいことです。

Anetteさんはデンマーク人ではじめてNeuroLeadership Summitで講演を行った人で、脳科学をどう経営、人材育成、指導、日々の業務に生かすかについて講演、研修を行ってきた人で、2009年には優れた講演者に与えられる賞も受賞しています。

彼女のベストセラー”Brain Smart”の2連作は、子どものしつけ、声かけ、コーチングの本。脳の仕組みを知った上で、それをどう実際の子育てに生かしたらいいかを描いた本です。実践を重視した本で、親として子どもに接していて困った時、具体的にどうしたらいいか、脳のしくみを説明しながらとてもとても読みやすい易しい言葉で描いた本で、デンマークの親、教育者など様々な人に支持されています。ただアネッテさんはリーダーシップ、コーチングがご専門で、脳科学については恐らく独学ではないかと思います。脳科学についての説明は、章ごとに出てはくるのですが、こういう研究があって、こういうエビデンスがあり、という記述は少なめ(あまりそこを描きすぎると、難しくなりすぎるのも理由?)。子どもを導くコーチングの部分の方がやはりご専門なのではないかと読んでいて感じされられるものです。

彼女が面白いのはDafoloという教師向けの教授法についての本を出している会社から、子ども向けの脳の仕組みを知って、生活に生かす『脳と友だちになろう』シリーズ(各巻24ページ、3冊)を出しているところです。

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日本でも子ども向けの脳科学の本は少しだけ出ているようです。
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子ども向けの実用書で最近ヒットが出ているようなので、こういう本も可能性があるように思えます。

私が惹かれているのはデンマークの心理療法士と心理学者が組んで描いている本です。  彼女達の作品が優れている点は心理療法の現場で子どもの心理について熟知している点、心理療法、心理学と長年向き合ってきた中で、心理学のよさも知りつつ、新たに出会った脳科学を心理学や心理療法の観点から、子育てや、心の傷を負う子ども、発達障害のある子どものケアにどう生かせるか、子どもというものを主眼に描いているところです。  

 

 

『パパは脳研究者』をはじめ、脳科学の研究者の本が描いた子育ての本はとても面白いのですが、脳科学だけで、子どもの発達を全て説明するのは今のところ不可能ではないかと思います。ですので脳科学と別の学問を組み合わせないと今のところ、親や保育関係者が実際に子育て、保育に生かせる程の知識を提供するのは難しいのではないかと思うのです。  

お隣のノルウェーは脳科学の本でヒットを飛ばしています。   

 

“Diving for Seahorses. A Book About Memory”

ナラティブの部分で紹介した本の中で一番この本が魅力があるのですが、その理由は恐らく共著者のHildeさんが小説家だからでしょう。

神経心理学者と小説家の姉妹が、記憶について描いた本です。私は小説的な語りにひかれて、こういう描き方、展開のさせ方があるのだな、と惹きつけられますが、脳研究の点で考えて、どの作品を紹介するべきなのかとても難しく、翻訳の合間にそれぞれの作品をめくってはまた別の本に立ち返り、うだうだしています。

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48.心がつながるのが怖い――愛と自己防衛

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『心がつながるのが怖い――愛と自己防衛』イルセ・サン作、枇谷 玲子訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン発行、2017年9月14日発売

友だちになれない言い訳を探す

いつからだろう。出会う人と友だちになれない理由ばかり探すようになったのは。

●「あの人はあくまで仕事仲間。友だちとは違う」

●「年齢が離れているから、仲良くなれないや」

●「育った環境が違うから、どうせ分かり合えっこない」

●「ママ友は子どもを介した関係で、ただの知り合いだもの」

友だちになろうよ、って言えたらいいのに

最近デンマークのセラピー本『心がつながるのが怖い――愛と自己防衛』を訳した。作者は『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』イルセ・サン。多くのブロガーさんたちがサイトに感想を描いてくださったり、声優の細谷佳正さんがラジオ番組天才軍師で本のことを語ってくださったりと、大きな反響を呼んだ。訳者として、この場を借りてお礼を申し上げたい。

【書影】鈍感な世界に生きる敏感な人たち_2017年新オビ (2)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ実は、ロシア人のデンマーク語翻訳者から、「イルセ・サンの『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』も素晴らしい作品だけど、私は『心がつながるのが怖い――愛と自己防衛』の方がすごい作品だと思う。とってもいい作品だからぜひ読んでみて」と教えてもらっていた。

初めはその言葉をにわかには信じられなかった。『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』が本当に優れた作品だったから。でも読んでみて、彼女の言葉の意味が分かった。

読みながら気づくと私は、わんわん泣いていた。自分の心にぽっかりと穴が空いていることに気付かされたのだ。

そうだ、私はいつも、

●私なんか誰にも愛されていないと感じたり、

自分には価値がないと感じたり、

●facebookやtwitterで友だちと近況を伝え合ってはいても、誰とも真につながれていないような寂しさを覚えたり

してきたのだった。

どうしたら良好で緊密な人間関係を築けるのだろう?

本には、

●私たちがどのようにして自分自身を守り、愛にストップをかける自己防衛の戦略をとるようになるのか

●それらの戦略が良好で親密な人間関係を築く妨げになるのは、どんな時か

●どのようにしたら不適切な戦略から脱却できるか

●どうやって自分自身の心に寄り添いながら、他者と近しい関係を築くことができるのか

が、作者のイルセ・サンが実際に行ってきたセラピーでのクライアントの事例を交えながら、書かれていた。

も本当は誰かとつながりたい友だちになろうよって、手を差し出したい。でも拒絶されるのが怖い

自己防衛の戦略

https://www.youtube.com/watch?v=2NK8LMMbUDc

作者がこの本で言及している自己防衛の戦略とは、他者または自身の内面、外界の現実に近づかないよう、私たちが意識的、もしくはしばしば無意識的にとる行動全般、また鈍感になろうとしたり、他者や自身の内面と距離をとったりする戦略を指している。フロイトやキルケゴール達もこの人間の心の動きを認識していた。

幼少期に自分を守るため必要だった戦略を大人になっても取り続ける

自己防衛の戦略は幼少期の早い段階でとられるようになることがほとんどだ。子どもは自分を守るため、愛されていないとはっきり認識するのを避ける。小さな子どもは自身の親が親としての能力に欠けていると認識することで、命が脅かされる恐怖を覚える。その恐怖から逃れるため、愛情に満ちた強い理想の両親像を心の内に創り上げてしまう子もいる。作者のイルセ・サンは、強すぎる感情と距離を置くのは、時に適切である、と述べている。

しかしこの戦略が習慣化し、大人になってからも、必要以上に自己防衛の戦略をとり続け、自己の内面と距離を置きすぎることで、他人に心を開き、愛情に満ちた関係を築くチャンスをも逃してしまう。また他人に心を開けないのは、自分の性格なんだ、自分は劣った人間なんだと考え、自分を責めてしまう。

親に叩かれて育った人は、他人から物のように扱われるのを許してしまいがち

イルセ・サンは愛する親に叩かれて育った子は、自分は価値のない人間なんだと感じ、叩かれた苦しみを忘れるため、現実とは違う理想化した両親像を思い描くことで自分を守ろうとする、と述べている。さらに子どもの時、物のように扱われた人は、大人になっても、他人からそのような扱いを受けるのを許してしまいがちだと言う。そして逆に自分自身もパートナーを物や道具のように扱ってしまうこともある。

心の傷がえぐられる

この本を読むことで私は心の奥にしまい、鍵をかけていた心の傷が再びえぐり出されるような感覚を覚えた。それはとても苦しく、辛い体験だった。1冊の本にこんなに感情を揺り動かされるなんて、不思議だ。実際、作者のセラピーを受けた人の中にも私のように泣きだし、感情を露わにする人がいたそうだ。

苛立ったり怒ったりしてばかりいる人の心には、悲しみや痛みが隠れている

すぐに苛立ったり、怒ってばかりいる人は、その胸に悲しみや痛みを抱えており、それらの感情を自覚するのを避けるため、苛立ったり、怒ったりしているのだ、とイルセ・サンは述べている。

他人を妬んだり、嫌ったりしてしまうのは愛情に飢えているから

他人を妬んだり、嫌ったりしてしまう人は、愛情に飢えている場合が多い。イルセ・サンは作品の中で読者に、そのような自己防衛の戦略をとってしまっていることを認識し、自身の悲しみや痛みを受け止め、感じることで、心が解き放たれ、愛情に満ちた人間関係を築くことができると優しくも力強く説いている。

いつも笑顔でいなくていい

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作者は正しくあらねばという強迫観念が強すぎると、常に笑っていなくてはならなくなる、と指摘した上で、表の顔を持つのは悪いことではない、と述べる。

問題は、その仮面をはずすタイミングが分からなくなったり、ごく近しい人の前でも仮面をとれなくなったりすることだ。

作者はいい人の仮面をはずし、相手と視線を合わせ、落ち着いて話すことで、心のつながりを感じられるようになる、と言う。私は私なんだ、と思うことで、相手にありのままの自分をさらせるようになる、と。

ありのままの自分でいる

自分らしくいようと選択するのは、自己の内面をありのままに受け入れこと。また人生には自分の力ではどうにもならないことがある、と認めることでもある。相手にありのままの自分を知ってもらい、受け止められることで、愛されていると感じることができるのだ、と作者は言う。

自分らしくいようと決めることで、心を開き、相手を受け入れ、他者に注意を向けことができるようになる。そうすることで愛情に満ちた人間関係が築けるようになるのだと、この本には書かれていた。

そばにおいでよ

私は誰かから差し出された手を、これまで何度、つかみそこねてきたのだろう? この本のデンマーク語のタイトルは”Kom nærmere”(もっとそばにおいでよ)。

そばにおいでよ」私も誰かにそう言えたらいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

50.『おおきく考えようー人生に役立つ哲学入門ー』

『おおきく考えようー人生に役立つ哲学入門ー』ペーテル・エクベリ作、イェンス・アールボム絵、晶文社 、2017年10月

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出版社HP http://www.shobunsha.co.jp/?p=4436

書店様向け注文書 http://www.shobunsha.co.jp/wp/wp-content/uploads/e9063d0bd4feee4ab7272373c37787b5.pdf

埼玉の書店をめぐる1 リブロららぽーと富士見店ーースウェーデンの哲学入門『おおきく考えよう』営業日記
埼玉の書店をめぐる2 ソヨカふじみ野Books Tokyodo(東京堂書店)
埼玉の書店をめぐる3 朝霞Chienowa Book Store

(訳者あとがき)

1.前作『自分で考えよう』について

本書『おおきく考えよう――人生に役立つ哲学入門』(原題:TÄNK STORT: EN BOK OM FILOSOFI FÖR UNGATÄNKARE )は、2016年10月に邦訳が出版され好評を博した『自分で考えよう―― 世界を知るための哲学入門』(晶文社)の続編ですが、前作を読んでいない人でも楽しめる内容になっています。

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前作がスウェーデンで発表されたのは2009年、作者ペーテル・エクベリのデビュー作にして、スウェーデン作家協会のスラングベッラン新人賞にノミネートされ、ドイツ語、韓国語、デンマーク語、ロシア語、ポーランド語などに翻訳されました。

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↑作者のブログより http://peterekberg.blogspot.jp/ 

2.作者経歴

作者はそれから、ロボットや宇宙についての知識読みものや絵本、SFシリーズなどを発表し、本作『おおきく考えよう』(2015年)で、優れた児童ノンフィクション作品に与えられるカール・フォン・リンネ賞にノミネートされました。その後も立てつづけに作品を発表し、児童書作家としてのキャリアを着実に積んでいます。

3.本作の主なテーマ

本作は、冒頭で「これは人生についての本なんだ !」と述べられているように、人生をどう生きるかが主なテーマになっています。具体的には、

●人生でいちばん大切なことはなにか、

人生の意味とはなにか、

●自分がこの世界に存在するとはどういうことなのか、

●自分はいったいなに者なのか、

●なにを選択したかによって自分がどう変わるか、

男らしさ、女らしさとはなんなのか、

参考:亜紀書房『バッド・フェミニスト』

Feminism For Everybody『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』読書会、個人的感想

勇敢、親切、正直であるとはどういうことなのか、

●できるだけ多くの人にとって、よい社会をつくるにはどうしたらいいのか、

などが書かれています。

4.アクティブ・ラーニング

前作でも本作でも、日本でいまアクティブ・ラーニングと言われ注目されている主体的で対話的な学びが自然な形で実践されています。現在の教育現場では、

●子どもたちが課題の発見をし、答えはかならずしも1つではないということに気づくまで先生が導けても、授業の目的、最終的になにを学ぶかが絞りこめず、深い学びにまで行き着けない、

●生徒が主体的に自由に出した答えを、どう評価したらいいか判断に迷う、

といった声が挙がっていると耳にします。

参考:先生のための夏休み経済教室個人的感想

 

そこで先生に求められるのは、

子どもたちの主体性を促しながらも、彼らが議論のなかで公正、理性的、倫理的にものごとの善悪を判断できているか、また理由づけがしっかりできているかを見極めたうえで、示唆に富んだ問いかけをし、深い学び、分析、問題解決へと導く力です。

そのためにまずは先生自身が、

公正とは、理性とは、倫理とは、善悪とは

なにかを改めて考え、再定義する

必要があるのではないでしょうか。

   
アクティブ・ラーニングの本場、スウェーデンで書かれた本作では、それらの言葉についてとことん突きつめた考察がされています。本作の、とくに黄色地のアクセントがついた問いは、子どもたちの主体的思考を促すために、どんな声がけをしたらいいかのヒントになることでしょう。

5.さらに知りたい方達へその他の推薦図書

北欧の教育のあり方、教育者が具体的にどう子どもに声がけをし主体的な思考を促しているのか、もっと知りたい人は、『新しく先生になる人へ――ノルウェーの教師からのメッセージ』(アストリ・ハウクランド・アンドレセン、マーリット・ラーシェン、バーブロ・ヘルゲセン著、中田麗子訳、新評論)、『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む:日本の大学生は何を感じたのか』(ヨーラン・スバネリッド著、鈴木賢志、明治大学国際日本学部鈴木ゼミ訳、新評論)、『あなた自身の社会 ―― スウェーデンの中学教科書』(アーネ・リンドクウィスト、ヤン・ウェステル著、川上邦夫訳、新評論)をご参照ください。

  

また『ルビィのぼうけん こんにちは! プログラミング』(リンダ・リウカス作、鳥井雪訳、翔泳社)にはじまるフィンランドのプログラミング教育についての絵本シリーズも、参考になります。日本ですでにこの絵本の著者を招いたセミナーやワークショップが開かれたことがあるようです。

  

アクティブ・ラーニングで主体的な考え方ができるようになった子どもたちが将来それを生かすには、トップダウン型ではなく水平方向での議論民主的対話ができる社会をつくっていかなくてはなりません。『スウェーデン式ダイバーシティで日本が変わる』(ダーグ・クリングステット著、文化堂印刷)にはスウェーデンの新聞社が「権威や上下関係は自由な言論の妨げになるので廃止しよう」と呼びかけたことなど、日本の企業、組織にとってもヒントとなりそうなアイディアがつまっていますので、ぜひ読んでみてください。

またグローバル化社会で生き抜くため、民主主義の徹底された社会の実現も求められています。北欧の民主主義については『10歳からの民主主義レッスン』(サッサ・ブーレグレーン絵と文、にもんじ まさあき訳、明石書店)という素晴らしい本が出されています。

6.悩んだ時哲学書を読む

前作『自分で考えよう』では、

●これまでの歴史でどんな哲学の問いが立てられてきたのか、

●哲学的にものごとを考え、道徳的判断を下す際に用いられる理性

議論について、

公正や善とはなにか、

●ものごとを思い浮かべるとき、頭のなかでなにが起きているのか

など、哲学のおおきな枠組み、基本的な考え方が示されていました。そのため読者の皆さんが人生で壁にぶつかったり悩んだりしたとき、それぞれのケースと照らし合わせ、自分なりの答えを探す助けとなったのではないでしょうか。

訳者である私自身も「 Yahoo! 知恵袋」などの悩み相談サイトを見て悶々とする代わりに、前作のページをめくることで、

●いま自分が抱えている悩みは昔の人たちや哲学者もぶつかってきたものなんだ、

●それらは哲学の世界ではよくある問いで、疑問に思うのは自分だけじゃない

●ものごとを深く突きつめて考えるのは悪いことじゃないんだ、

と気づかされ、何度も励まされてきました。
一方、本作『おおきく考えよう』

人生の意味とはなにか、

幸せとはなにか、

●人間としてどうあるべきか

など、生きる道を模索する若い人たちのヒントとなる実用的な内容となっています。

7.悩める若者へのメッセージ:「考えるのはきみだ。だって、きみの人生なんだから」

私もとくに高校生のとき、自分はこれからどんな人生を生きていったらいいのか人生の意味とはなんなのか思い悩んでいました。

受験戦争を勝ちぬき、いい会社に入って、やがては結婚し、子どもをもうけ、子育てをするのが正しい生き方で、レールから外れるのは許されないような気がして、窮屈で怖いと感じていました。

作者は本作で、人間とは本来自由な選択肢を持つ生きものだと述べていますが、その頃の私にはそうは実感できなかったのです。

あの頃の自分のそばに、

自分の手で、意味のある人生をつくるんだ!」

きみがなにを言い、なにをすべきか、だれにも決める権利はない」

考えるのはきみだ。だって、きみの人生なんだから」

と言ってくれる作者のような人がいたら、もしくはそういう人がどこかにいるかもしれないと気づけていたら、ど
んなに心強かっただろうと思わずにはいられません。

枇谷玲子