『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』ワークショップ in 飯能市立図書館 #私達は女性差別に怒っていい

飯能市立図書館さんで『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』ワークショップを行いました。YAA!(ヤングアダルト&アート・ブックス研究会)の皆さんや飯能市立図書館の皆さんをはじめ参加者と交流することができました。

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かねてから自分が訳した本が読者に届いているのか実感が持てず、フラストレーションが溜まっていました。子どもの読者はインターネットなどに書評を書き込むことは少ないですし。ですのでこのような機会をくださった皆さんに感謝いたします。
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私がデンマークをはじめ北欧に興味を持ったのは高校生の時、徳間書店から出ている『マリアからの手紙』を読んだことがきっかけです。デンマークにも教師が政治の話をしただけで、政治観を児童に押しつけていると父兄から苦情が上がる時代があったことがこの本を読むと分かります。大人に本音で話してほしい、守られてばかりでなく自分で考え、強くなりたいと願う主人公。この本に感動した私は高校の図書館司書さんに相談し、翻訳者さんに手紙を書いて徳間書店に送りました。その手紙を翻訳家さんに転送してくれたのが編集者の上村令さん。最近では『母が作ってくれたすごろく』という素晴らしい作品を編集されています。

その頃の私はどうせ女の人は結婚したらパートや主婦になるのに、どうして大人はそのことに触れずただ勉強しろって言うんだろう、とか、どうしてスカートを短くしちゃいけないと先生は言うのに、理由を説明しなかったり、私達生徒が痴漢にあっているのを薄々感じながら見て見ぬふりをしたりするんだろう、とモヤモヤしていました。

『マリアからの手紙』を読んで、自分も主人公のマリアと一緒に自分の力で考え、行動し、意見を言える自由で強い子になれたような感覚を覚え、すかっとし、励まされました。この本の作者はフェミニストでした。私が抱くフェミニストのイメージは、自分の頭で考え、意見を言葉にし、行動できる人、性別や人種にかかわらず公正に物事を考えられる格好いい人です。

参考:#東京医大 女子受験生を一律減点…合格者数抑制医師国家試験合格状況女性医師の年次推移 #私達は女性差別に怒っていい
子どもの自己肯定感国際比較

『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』でも10歳のスウェーデン人の少女が不平等に気づくところが描かれています。
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その後、グループに分かれ、参加者の皆さんに男女の不平等に気づいたことがあるか話し合ってもらいました。
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話し合いでは、クラス名簿が男女別、しかも男子が先に呼ばれる学校がいまだにあることや、昔は家庭科は女子、男子は技術と別々の授業だったこと、家庭科が男女共通になって大分意識が変わったこと、女の子だから短大でいいんじゃないの、どうせ結婚するんだし、と先生に進路指導の時言われたなどの意見が出ました。また高校生も参加してくれていて、男らしさ、女らしさについて言及していたのが印象的でした。男女差別がなくなってフェミニズムとかいうのが最終的になくなればいいといった発言もありました。

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作者は『フェミニズムは現在進行中』という別の本で、こんな例を挙げています。
・学校で私がサッカーをしていて、絶好のチャンスでシュートをミスしてしまい、男の子達から「下手っぴ!」と言われてしまいました。なのに同じミスをした男の子には「ドンマイ」って言うの! 男の子達は女子は男子より劣っているから、一緒にゲームしたくないのでしょう。それに先生からの扱いも、男子と女子では違っているようにエッラは感じています。​

・インターネットのAsk.fm(Q&Aサイト)で友だちのアカウントを見ると、普段面と向かって話すのとは違った,意地悪で乱暴な言葉を書き込んでいる子がいることに気付きました。そしてブスだとかバカだとか言われるのは主に女の子でした。​

私自身が男女の不平等を感じるのは働いても働いてもなかなか賃金が上がらない時です。
参考:月収12万円で働く39歳男性司書の矜持と貧苦

日本は圧倒的な男性中心社会です。
参考:国会議員の女性の割合


各国の女性の年齢階級別労働力率

主人公のエッバは子どもや女の人も大事なことの決定に加われば世界はうんと面白くなると考えました。

14、15ページでエッバはさっきの新聞の写真を、いとこのヨリンダに送りました。ヨリンダはエッバより少し年上で、すっごく頭がいい女の子です。エッバはヨリンダにだったら、何でも話せます。​
「世の中で大事なことを決めるのは、何でおじさんばかりなの?」​
「ずっとそうだったからよ。わたしたちが変えないかぎり、変わらないの」
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次にグループでフェミニズムって一体何か話し合ってもらいました。

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発表してもらった後、本の中でフェミニズムについて何と説明されているか伝えました。本では「男女平等を目指し、女性の権利を​求める思想。​男性と女性が経済的、社会的、政治的に平等になるよう求める運動のこと」と描かれていました。

その後、エッバはクラスメートや近所の女の子や男の子と、フェミ・クラブを結成。日常感じる不平等について話し合います。​​


☆なぜ皆がフェミニストを名乗らないのでしょう?


・フェミニストというのは男嫌いで、女が全てを決める社会を望む人達と勘違いしている人がいるから。​
・辛抱強く耐えていれば、そのうち変わるでしょ、と思っている人もいるから。​
・フェミニストは社会不適合者で、不満を持つのは自分達が悪いからだと言う人もいる。​


→もしもあなたが男か女かは関係なく、皆が平等な権利だけでなく、責任、平等な機会を得られる社会を望むなら、あなたはフェミニスト。

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次にフェミ・クラブのメンバーたちは、最初のグループディスカッションの発表で男子高校生が触れていたように、男らしさ、女らしさについて話し合います。

「女の子は、傷つきやすくて、か弱いと思われる。おしゃれや男の子にしか興味がないとも」

「男はサッカーや乗り物の運転が上手なものと思われている。どんな時も強く、たくましくなきゃならないとも」​
主人公のエッバにおばあちゃんはスウェーデンの女性が男女平等を手に入れられたのは、昔の女の​人たちが、権利を勝ち取ってきたからだと言います。​

エッバは元フェミニストのおばあちゃんのナビゲートで、メアリー・ウストンクラフト(25,26,31,31ページ)をはじめ、ヨーロッパの女性史を学びます。

女性史を語る上で欠かせないトピックは女性選挙権の獲得です。

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スウェーデンの女性が選挙権を得たのは1921年でした。

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女性選挙権が世界で初めて認められたのはニュージーランド。ヨーロッパで一番早かったのはフィンランド。​
日本婦人参政権は第二次大戦後の1945年12月の改正選挙法で実現し、満20歳以上の男女による平等な選挙制度となりました。

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その後グループで選挙権はなぜ大事なのか話し合ってもらいました。

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発表が終わると、本の中でどう描かれていたか紹介しました。

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英国のサフラジェットは1912年と13年の間に数百もの放火、爆破事件を起こしました。メンバーの1人エミリー・ワイルディング・デイヴィソンは抵抗の意志を示すため、ジョージ5世の馬に飛び出した際、馬に踏みつけられ、数日後に亡くなりました。警官はサフラジェット達を容赦なく警棒で叩き、牢屋に入れました。サフラジェット達がハンガーストライキすると、警察は医者を呼び、無理矢理食べものを流し込みました。これにより肺炎になったり、命にかかわる病気にかかる人もいました。

そして第一次世界大戦がはじまると、サフラジェット達は活動を休止。その多くは救助隊に志願。男性が戦場に行っている間、女性達は男達の代わりに働きました。戦争が終わると、女性なしでは社会が回らないと気付いた政治家達は女性選挙権を認めざるを得なくなりました。1918年、30才以上の女性が選挙権を得ました。さらに10年後、21才以上の女性にまで女性選挙権が拡大しました。

こんな風に英国のサフラジェットは暴力を用いることも辞しませんでしたが、スウェーデンの女性解放運動では、力はほとんど見られませんでした。1903年女性の投票権を求める団体が作られ、議論をしたり、ビラを配ったり、演説をしたりすることで選挙権を得たのです。実現までには35年もかかりました(48,49ページ)。​

日本では若い人は政治活動にほとんど参加しないようです。私が訳した『このTシャツは児童労働で作られました』ではH&MのTシャツをつくるのに児童労働が行われていることを知ったノルウェーの若者が、工場に忍び込み、火をつけてしまい、火はすぐに消し止められたものの1年間の奉仕活動をしなくてはならなくなったと描かれています。

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また初めて翻訳した『ウッラの小さな抵抗』ではドイツに占領された第二次世界対戦中のデンマークの人たちが占領軍に反対し、破壊工作を行っていたことが描かれています。
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最近金原先生の訳で『ナチスに挑戦した少年たち』という作品も出されています。

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北欧の子どもも大人も権力に服従しないというマインドを持っているのでしょうか。

作者のサッサさんは『10歳からの民主主義レッスン』の中で非暴力非服従を説いたガンジーのことや(30ページ)、スウェーデンのヴェーグネル(38ページ)のことを書いています。

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参加者に意見をうかがったところ、デモに参加するなど生徒の政治活動を禁止する理由はないという考えの高校もあることが分かりましたが、私がいた高校では生徒がデモをするなど考えられませんでした。

学校に政党が来るとお話したところ、どんな風に政治的中立を保つのかという質問が出ました。そのことに詳しいのは両角達平さんという方です。

研究会の方が私と鈴木先生のイベントや、ミツイパブリッシングさんのイベントで聞いたことをまとめてくださっていました。ワークショップでは後者について発表してくださいました!

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この後子どもの発信を大人がどれぐらい助けているか、参加者の方に意見をうかがいました。

(参考)
日本の子どもはネットでコンテンツの消費はするけれど、発信はほとんどしない
政治集会やメディア・ネットの意見表明など日本の若者は政治活動にほとんど参加せず関心もない
若者の声を政治に届けるには、子ども郵便箱を設置 ノルウェーの取り組み
日本でも高校生教育アイデアソン
子どもの本総選挙
N高校作家・冲方丁がN予備校&ニコ生で小説創作授業
政治的発言をすると干される芸能人
子どもとプライバシー、ネットパトロール
正しく怖がるインターネット
「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知)」に関するQ&A(生徒指導関係)
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著者のサッサさんは1953年生まれ。スウェーデン芸術家協会会員。スウェーデン作家協会会員。1975年以降、スウェーデン各地で作品の個展を開催。絵本を中心に数多くの作品を発表。『10歳からの民主主義レッスン―スウェーデンの少女と学ぶ差別、貧困、戦争のない世界の原理』によってスウェーデン図書館協会から2002年度カール・フォン・リネー賞を受賞。​

サッサさんは学校や図書館などで、民主主義についての子ども向けのワークショップを開いてきました。サッサさんはこう言います。「子ども時代は、大人になるためのただの準備期間ではない。子ども時代は、人生の一部です。私達は子ども達を社会の一員として受け入れるべきです」子どもを議論に引き入れることで、世の中がよくなるのではないかとサッサさんは考えます。

『10歳からの民主主義でレッスン』でサッサさんはこう言います。「この本を書くことになったきっかけは、子どもの発言の場があまりにも少なすぎると思ったからです。子どもは賢い存在です。わたしたち大人は、子どもの声にもっと耳を傾けなければなりません。今こそ、子どもも選挙権を持ってよい時代ではないでしょうか。​子どもは問題に対して大人が考えつかないような解決策を見つけることができるので子どもにとってよい社会とは、大人も含めたすべての人にとって、よい社会なのです。」

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作品の中では「人の見た目のことじゃなく、中身について話すようにしよう」、「まわりの期待に応えることばかり、考えちゃいけない。他人からどう思われるのかばかり、気にしない。ありのままでいよう。自分の気持ちに正直になろうよ。そして、したい格好をしよう。それにほかの人も、自由にさせてあげるんだ」​と描かれています(84~89ページ)。
最近ではこんなことも話題になっています。

ブルゾンちえみの「ブスいじり」に視聴者ゲンナリ もうやめたら?​

またCHAIさんやあいみょんさんのような新しい価値観を持つアーティストも出てています。

以前私もノルウェー人の人に「私太ってるから」と言ったら、「女性は妊娠したとき胎児を守れるように脂肪がつきやすくなってる。なんでそんなことばかり日本の人は言うの?」って言われてはっとさせられたことがあります。英国人の男性も私の太ってるトークには一切のってきませんでした。笑わないことで会話を打ち切ることができるのです。

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最後にワークショップで、様々な家族の絵本を見ていただき、グループでどんな風に男女の役割が描かれているか発表していただきました。
話をして思ったのが参加していた司書さんも高校生も私が想像していたよりも前衛的な考え方の持ち主であること、自分で考える力を持っていることでした。

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また男だから、女だからという偏見もあまりなく、これならLGBTQのこと、また性教育、男女の恋愛についてなどについて話しても全然高校生も理解してくれたのではないかと思いました(勝手に私が遠慮してそこは話せなかった)。

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また途中ご紹介したWith youさいたまの「ジェンダーから見た日本女性の歴史」(明石書店)をもとにしたジェンダーパネルに興味を持ってくれる司書さんもいて嬉しかったです。パネルは無料で借りられるようです。

私は向こうの学校に通っていたわけではないので、学校制度について詳しく話せないのがネックです。鈴木賢志先生などのお力を借りられるとより日本の学校に役立つ提案ができそうです。

また思いの他、北欧の学校制度への関心が高く、もっと深い入り組んだ内容の本でも、日本の学校関係者、児童書関係者は興味を持って受け止めてくれるのではないかと思いました。できれば教授法の本なども今後訳したいです。

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北欧の図書館制度についても、もっと知りたいです。

https://note.mu/reikohidani/n/n5411fcbc0e03

FireShot Capture 588 - ノルウェー人日本文学翻訳家マグネ・トリングさんインタビュー|_ - https___note.mu_reikohidani_n_n5411fcbc0e03

 

 

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