ひるねこBOOKS襲撃と文学フリマへの道①飯塚めりさん

ひるねこBOOKS襲撃

メロスでなく、私は激怒していた。
私の怒りに火をつけたのは、ある一匹のネコだ。
そのネコは、名をひるねこBOOKSという。
事の起こりは、あるイラストレーターさんの絵をTwitterで目にしたことだった。

何これーー! かわいい!!!!!!

それからおよそ3ヵ月がたつ頃、ひるねこBOOKSさんで個展が開かれることを知った。あの坂口さんの個展だ。
http://hirunekodou.seesaa.net/article/465715609.html

ご存知の方も多いかと思うが、ひるねこBOOKSさんというのは、注目の独立系書店さんで、オリジナルのレーベルで自ら本も作り、また本の世界のオピニオンリーダーとして講演にも呼ばれる――そんな何もかも持っている満ち足りたネコのことだ。
https://shuppankyo.wixsite.com/shuppankyo/post/honnohitokoto20190605

そんなネコさんが、坂口友佳子さんの作品を自らの店にいくつも飾るのだと言う。心がざわめく。

悪い予感は的中した。個展がはじまると、そのネコは、坂口さんの作品を見せびらかしはじめたのだ。

さぞ得意でしょうよ。満足でしょうよ。嫉妬の感情がむくむくと膨らんでいく。 私は普段翻訳をしていて、デンマークのTove Ditlevsenという作家についての同人誌を出したいと思っている。また彼女の小説の翻訳を商業出版で出したいとも思っている。 坂口さんのイラストはTove Ditlevsenの世界観にぴったり合っている。でも、私には何の力もない。翻訳者には本のイラストを選ぶ権限はないのだ。何て私は無力なんだろう。坂口さんのイラストに囲まれて微笑むあのネコさんの顔が浮かぶ。 https://pin.it/mirfl4t2zxo2td

たまらなくなった私は心の中に槍を持ち、店に襲撃することにした。掴み合いも辞さない覚悟で……。

決死の思いでお店に突入すると、ネコさんはにこにこ。拍子抜けするぐらいほがらかな雰囲気である。

ネコさんは私と坂口さんの橋渡しをしてくれた。坂口さんのイラストを表紙にしたTove Ditlevsenの小説の出版――長い道になるかもしれないけれど、希望の光がないわけではないのだと勇気づけられた。

お店には一時間以上いたかもしれない。坂口さん目当てで来る人も多く、中には出版社の方もいた。そんな出版社の人に、ネコさんは、坂口さんのお仕事につながるようにさりげなくアシストする。ネコさんは普段からきっとこんな風に、クリエーターさんが世に出る支えとなっているのだ。襲撃しようとしてごめんなさい。

反省し、挨拶を済ました私は、田原町のReadin’ Writin’さんに向かった。Readin’ Writin’さんと知り合ったのも、ひるねこBOOKSさんが『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』のイベントを開いてくれたからだった。槍持ってごめんなさい。

 

文学フリマへの道①飯塚めりさん

最近心を打たれた同人誌がある。『かわいいウルフ』だ。

翻訳者にとって文学を訳すのは大きな喜びだろう。しかし特に純文学は売れないと言われていて、海外文学を継続的に訳せる人はごく一部だ。 参考:海外文学は絶滅寸前  

どうしたら海外文学の読者を増やせるのだろう? はじめての海外文学日本翻訳大賞BOOK MARKなど様々な試みが行われている。

柴田元幸さん、金原瑞人さん、西崎憲さん、三辺律子さんなどこの業界で地位のある人達がやるべきこと――以前の私はそう思っていた。こんな若手の私が出る幕はないと。今年の頭に北欧語書籍翻訳者の会を翻訳者仲間と立ち上げたが、その際も、まわりの人にどう思われているだろう、私なんかが、とずっと震えていたのだ。

しかしかわいいウルフに出会ったり、文学フリマでの活気に触れたりしたことで私のその考えは変わった。権威とか立場にしばられずに、皆が好きなものを発信できる自由で楽しくて伸びやかな場所。縮こまっていた心が一気に解き放たれた。「私なんか」という気持ちが小さくなっていき、蓋をしていた海外文学を好きだという気持ちが解き放たれた気がした。

B&Bで行われた『文フリに行けなかったのが悲しいので、行った人に戦利品を見せてもらいたい会』でも、表現しようとしている人たちのエネルギーに触れて、心が震えた。

私もこの楽しいイベントに参加したい。でも一体どうやるのかやり方も全く分からない。B&Bさんにも文フリ出展講座を開いてほしいとお願いしたけれど、すぐに行われそうにはなかった(将来やるようならぜひうかがいたいです)。 そこで助け舟を出してくれたのが、田原町にあるReadin’ Writin’さんだった。文フリ出展経験も豊かで大人気のZINE『CINEMA TALK』で映画だけでなく、女性の生き方やフェミニズムをかろやかに語ることのできる友人の亀石みゆきさん司会で、連続講座を行ってくださることとなった。 第1回は亀石みゆきさんの敬愛する飯塚めりさん。 

   

(学んだこと――私的ダイジェスト) ・文フリ初期は早稲田大学でZINEをつくる授業があり、それに関係する人たちと、MOUT ZINの人たちの出展が多かった ・早稲田大学でZINEをつくる授業を受けて出展していた若い人たちは混乱した思春期の心をZINEや同人誌といった形にすることで、心を癒やしていたのではないか。その流れで赤裸々な心情、ありのままの感情を整理しすぎずにそのままの形で吐露した作品への人気が高かったような印象をめりさんは受けた。めりさんはそういうタイプの作家ではない。 ・編集者として働く中で、イラストレーターさんはイラストだけを持ち込むのではなくて、イラストと企画をセットで持ち込んだ方が採用してもらえる確率が高いのではないかとずっと感じていた。 ・めりさんの場合は同人誌がポートフォリオのような役割を果たし、そこから商業出版の仕事へと発展していった。 ・同人誌をつくるのは関心のあること、好きなことを整理し、お弁当箱につめり、出していくような作業。 ・3見開きなど同じようなレイアウト、情報が続くと飽きるので、めりさんの場合は変化をつけた。情報密度の高いページの後はイラスト、地図などふんわりとした情報を持ってくるようにした。 質問タイムを多くとってくださり、どんな印刷所があるのか(レトロ印刷、栄光など)やイラストレーターさんや友人に執筆、イラスト作成を頼む時の心得についても知ることができた。

(参加者との情報交換で分かったこと)

・Illustrator,Photoshop、Adobe CS6、Creative Cloud、Indesighなど使えなくても、印刷所のサイトなどで雛形が用意されている場合も。なのでデザイン、レイアウト、スキルがなくても恐れなくていい。

できないことよりできることに意識を向けて楽しむのが文フリ。

 

一緒に同人誌作ろうよ、と誘ったお友だち。私が誘ったはずが、めりさんの話を聞いてスイッチが入り、「使っているペンは何ミリですか?」なんて実践的な質問までしだして(笑)。しまいには、デザインできない、イラスト描けないと怖気づく私に「できることに目を向けて」と励ましだす始末。めちゃやる気でした。一緒に出展できるかも。楽しみです。 あとツイッター上で少し交流のあった音楽ファンの方で『かわいいウルフ』をきっかけに藤子不二雄形式でペアでファンZINEを作ろうとしているトークの面白いお2方ともお話できました。また話せたらいいな。 第二回はついに『かわいいウルフ』登場! 楽しみです。

次回までに私は表紙と中身のイラストの依頼、発注を済ませておきたいと思っています。文フリは趣味で仕事の合間にどれだけ進められるかも大事なテーマ。この講座をペースメーカーに休みの日に、仕事に支障が出ない範囲で楽しく進めることも私の1つのテーマです。とにかく楽しみたいです♪ 海外文学が好きだと叫びたい。海外文学のZINE、同人誌作りたい方、ぜひ次回お会いできたら嬉しいです。

LINEで送る
Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です