NORLA今月の翻訳者、日本語版 #国際女性デー

NORLAの今月の翻訳者のコーナーに寄稿しました。
https://norla.no/nb/nyheter/nyheter-fra-norla/reiko-hidani-manedens-oversetter-i-mars

 

(日本語訳)

枇谷 玲子 – 3月の翻訳者

あなたはどんな風にしてノルウェー語の翻訳者になったのですか?

 

私は高校生の時にデンマークの作家グレーテリーセ・ホルムの『マリアからの手紙』を読み、移民問題など政治について学校で議論する先生と子ども達の姿に衝撃を受け、北欧に強い関心を持ちました。学校図書館の司書の先生に相談して徳間書店に手紙を書いたところ、編集者の上村令さんが手紙を翻訳者に転送してくださり、お返事をいただきました。

高校卒業後、大阪外国語大学でデンマーク語とデンマーク文学を学びました。1年間デンマークに留学した後、講師をしていた翻訳家の木村由利子先生に出版社を紹介していただき、留学中、デンマークの児童文学センターのTorben Weinreich先生から勧められた『ウッラの小さな抵抗』を文研出版から初の訳書として出すことができました。

正直に言うと、元々はノルウェーは私にとって、デンマークのお隣の国でしかありませんでした。当時私はハウゲンやリウ・フローデ、ゴルデルの本を読んだり、大学でムンクについてレポートを書いたりしたことぐらいしかなかったのですから。

Aschehoug Aschehoug社のChristian KjelstrupとEva Christine Kuløyと玲子の娘。

ノルウェーに対する見方が変わったのは、NORLAと出会ってからです。2010年にNORLAから旅費助成をいただき、GyldendalやAschehoug、ノルウェー児童書センター、ホロコースト・センター、IBBY Documentation Centerに行きました。全てのミーティングをアレンジしてくれたのは、NORLAでした。彼達はとても親切でした。調査旅行から帰ってきてから、『キュッパのはくぶつかん』『キュッパのおんがくかい』を訳す機会を得ることができました。絵本シリーズは日本で成功し、そのおかげで2014年にHolmenで行われた国際翻訳者会議に出席できました。私がノルウェー文学に夢中になりだしたのは、その会議からでした。会議の後も、NORLAは日本に何度も来てノルウェー文学セミナーを複数回行いました。NORLAに会う度、私はノルウェー文学に夢中になっていきました。私は今ではノルウェーの文学をほぼ毎日読んでいます。ノルウェー文学は今では私にとってなくてはならない存在です。

Kubbegren

2015年、東京都美術館が行ったワークショップ『キュッパになろう』。ワークショップは日比谷公園で行われた環境フェスティバル、緑の感謝祭のイベントの1つとして行われました。

最近行ったセミナーについて教えてくれますか?

 

私は以前、英語の翻訳者向けのネット上のクラブに入っていたことがあり、そこで英語の翻訳者さん達が英語圏の児童書について話して盛り上がっているのを見て、うらやましく思ってきました。また日本で北欧語の翻訳者が足りないから、英語やドイツ語から重訳するのは仕方ないと言われている割に、実は北欧語から直接訳してみたい、翻訳の仕事をしてみたいと私のHPに相談をしてくる人が何人かいて、こんなに直接訳できる人がいるのなあ、と不思議に思ってきました。でも重訳について文句を言ってもはじまりません。私がやるべきことは翻訳技術を磨くことでした。

そこで以前から会ったことがあった久山葉子さんや ヘレンハルメ美穂さんや他の翻訳者に声をかけ、北欧語書籍翻訳者の会を昨年の秋にはじめました。

(会のFacebook).

会をはじめた直後に、 Norlaが日本にまた来ました. NORLAはノルウェー語の翻訳者に本のプレゼンテーションをする機会を与えてくれました。大使館で私は、中村冬美さんとNORLAを訪問した時に紹介された、アニータ・コースの『お母さんは謎』という作品のプレゼンテーションをしました。

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NORLAのアドバイザー、 Oliver Møystad とPer Øystein Roland

 

それに来ていた編集者さんから、後から、他の出版社さんでセミナーに呼ばれなかったのを残念に思っている編集者がいるので、同じようなプレゼン会をやってみないかと誘われました。そこで北欧語書籍翻訳者の会の皆さんを誘って、1月の終わりに早川書房の編集者さんを講師に迎え、レジュメ勉強会を行いました。青土社の編集者さんもアドバイスをくださいました。

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早川書房の窪木竜也さんと翻訳者の中村冬美さん

2月1日には出版クラブという施設でプレゼン会をし、北欧の書籍を出版社さんに紹介しました。私は Bjørk Matheasdatterの『愛すること、愛されること』(Å elske og bli elsket)を、中村冬美さんは『海馬を求めて』を紹介しました。また羽根由さんは『姉妹』を展示しました。

他に紹介したノルウェーの本は以下です。

ほとんど人間:チンパンジーのユリウスについての伝記』(Nesten menneske. Biografien om Julius )Alfred Fidjestøl作

動物を理解する』(Å forstå dyr)  Lars Fr. H. Svendsen作

『雪の少女――クリスマスのお話』

『世界劇場――地図の歴史』

『本を救いたかった女の子』

『ピケティ、1、2、3』

『カガヤキ谷のトーニェ』(Tonje Glimmerdal) Maria Parr 作

『誰にだって背中がある』(Alle har en bakside) Anna Fiske作

セミナーの写真はここでさらにたくさん見られます。

また2月3日にはひるねこBOOKSという書店で読者むけのイベントも行いました。そこで北欧ミステリファンの存在を知ったので、もし可能なら、いつかミステリを入り口に他のジャンルにも興味を持ってもらえるような会を開きたいです。日本ではStieg Larsson、Henning Mankell、Anders Roslund & Stefan Thunberg 、Leif G.W. Perssonなどのミステリ作家が人気です。私もアンネ・ホルトやエーネ・リールの作品を訳しました…。

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アンネ・ホルトの『ホテル1222』の舞台

現在はSELTAが発行しているような書評集を作成しようと皆で準備中です。

 

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   中村冬美さんの発表

あなたは児童書の翻訳を精力的に行っていますね。北欧の児童書と日本の児童書の違いは何ですか?

 

YAは日本ではあまり定着しきっていないジャンルです。私自身、高校生や大学生の時に特に本を多く読むようになりましたが、その1990年代ぐらいに、金原瑞人さんという方が盛んに英米のYAを日本に紹介していました。私がもっと幼い頃は、YAというジャンル名はほとんど聞いたことがありませんでした。私は自分が高校生、大学生の頃に読んできたような本を主に訳したいと考えています。その頃、私が読んできた本には『マリアからの手紙』のような海外のYAもあれば、村上春樹や吉元ばなな、江國香織といった思春期の子、高校生、大学生が主人公だけれど、大人の文学と日本ではカテゴライズされている作品もありました。日本では海外のYAは『ワンダー』などを除いてはほとんどベストセラーにならないので、YAの翻訳の仕事はなかなか得られず、YAの翻訳をしたくて初期は児童書の出版社によく持ち込みをしていたのですが、YAはボツばかりで、絵本ならすでにフランクフルトやボローニャ、サブ・エージェントの紹介で出版社が権利を買っている作品があったので、じゃあ絵本の翻訳をやってみないかと誘われて絵本の翻訳を手がけてきましたが、今でもYAや高校生、大学生を主人公にした日本では大人の文学とカテゴライズされているような作品を訳してみたいという気持ちでいます。

 

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シモン・ストランゲル『このTシャツは児童労働で作られました。』

ただ例えば、シモン・ストランゲルの『このTシャツは児童労働で作られました。』は日本でも人気になりましたが、これは高校生だけでなく大人にも読まれています。シモン・ストランゲルの『ドコカ行き難民ボート』にはじまる3部作は難民問題、児童労働など極めて政治的なテーマを扱った本です。子ども達が政治的なメッセージを世の中に投げかけるというのは日本の読者にはなじみがなく、しかしだからこそこの本が日本で歓迎されたのだと思います。日本の学校では、政治について議論することに教師は戸惑います。政治について授業で扱ってどうやって政治的中立を保てるのか分からないという教師もいるようです。民主主義教育が北欧では進んでいて、そのことが色濃く出た北欧の作品は日本人には前衛的にまた刺激的に映るのかもしれません。

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『北欧式お金と経済がわかる本』は日本の書店では大人向けの経済書の棚に置かれています。

 

『北欧式お金と経済について学ぶ本』は子ども向けの本としてノルウェーでは出されたようですが、実際この本は書店の児童書コーナーではなく、大人向けの経済書のコーナーにありました。『北欧式お金と経済について学ぶ本』はお母さんが子どもに経済について、働くことについて教える本ですが、日本で出されている金銭教育の本の多くはお父さんや男の人が子どもにお金について教えるものばかりです。私がこの本を訳したのは母親も働いてお金を稼ぐんだってことを子どもに示したかったからです。私はこの本でお母さんだって失業すると悲しくなる。仕事はお母さんの人生の一部なのだからと書かれているのを読み、感動しました。

北欧の児童書のキーワードの1つは多様性です。

日本では読みものでは松谷みよこさんの『モモちゃんとアカネちゃん』などがありますが、小さい子向けの絵本ではほぼ常にお父さん、お母さん、子どもという家庭が描かれているものが多いのに対し、北欧の絵本ではお母さんと子ども、お父さんと子どもだけの家庭も当たり前のように登場します。日本でも離婚率が高まってきているのですから、伝統的な家族観に縛られた絵本の作り方はやめるべきだと私は考えています。『Z棟のアウロラ』をはじめ多様な家族が描かれた作品が北欧には多いのではないでしょうか。絵本の中で多様な家族を描かないことで、私達大人はシングルマザー、シングルファザーの家庭に育つ子ども達にあなた達の家は普通ではないんだというメッセージを無意識のうちに投げかけてはいないか、考える必要があります。実際、日本の母親が子どもにシングルマザーの家のことを、非難したり特別視するような発言をしているのを私は複数回目撃したことがあります。子どもにも親にも、多様な家族のあり方を尊重するよう啓蒙が必要です。北欧の本はその一翼を担うことができます。私達本の作り手はジェンダー的に公正かどうかということにも常に配慮しながら本を作っていかなくてはなりません。

私は児童文学センターの教授に「どうして北欧の児童書にはタブーがないのですか?」と聞いて、逆に「どうして日本の児童書にはタブーが多いのですか?」と聞き返されたことをよく思い出します。私は今でもその答えを探し続けています。「単に日本ではそうなだけ」と言うこともできますが、私は考えるのが大好きです。物事を考える時、生きているんだ、と感じることができます。

絵本『みんな数える、みんな大事』、漫画『闘う女性たち』は読者に多様性とは何か、またなぜそれが重要なのかを教えてくれる本です。

『みんな数える、みんな大事』にあるように私は心からこう言えるようになりたいです。「みんな違って、よかった!」

 

あなたの心に特別残っている本はありますか? あるとすればあなたにとってそれはどんな風に特別なのですか?

 

特別心に残っている本は絵本『いとしいあなた』です。日本では、『ワンオペ育児』という言葉がよく使われます。それは母親のみが子育てすることが一般的な日本の社会を批判して使った言葉です。私は仕事をしながらも、いつも罪悪感を覚えます。翻訳者にとっては海外にしょっちゅう行ってその文化を知るのはとても大切なことですが、毎回罪悪感で心が押しつぶされそうになります。

Magikon社のSveinさんが日本に来た時に、日本の母親のおかれている状況について彼と話しました。彼と話していると、まるでママ友と話しているようだと感じました。男性も同じように出張の時、子どものことを思って、子どもにも同じ景色を見せてあげたいと思うんだな、と印象的だったのです。『いとしいあなた』はまるで私の気持ちを代弁してくれているような本で、私のように罪悪感に苦しむ親を助けてくれる本だと思います。そして子育ては大変なだけでなく、大きな喜びであることを翻訳を通して伝えていきたいとも思っています。

 

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「あなたの寝息が聞こえてきた。あなたはくまのぬいぐるみを抱え、眠っている。あなたのほっぺたは赤い。あなたは世界一うつくしい子。世界一すてきな子。面白くて、頭がよくて、勇敢で。あなたはわたしの子ども。わたしはあなたのお母さん」

私はしょっちゅう子育てという大きな責任におしつぶされそうになります。でも同時に母親であることをとても幸せに思っています。子どもは賢くて勇敢でかわいい存在です。

 あなたはステフン・クヴェーネランの伝記漫画『MUNCH』を訳しましたね。出版までのプロセスについて教えてくれませんか?

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クヴェーネランの『MUNCH』が他の素晴らしい本と一緒に並べられている。

2014年、ノルウェー文学普及財団Norla主催で開かれたノルウェー翻訳者会議に参加したのがきっかけでした。その会議でグラフィック・ノベルのセミナーも開かれ、そこで知り合った漫画家さんから、これまで読んだノルウェーの漫画で一番素晴らしいと思う作品として、本作をご紹介いただいたのです。

この本は一種の文学です。そのことが評価されて、翻訳賞にノミネートされたことをとてもとてもうれしく思っています。この賞の選考には翻訳だけでなく、作品自体の素晴らしさも加味されているのではないかと思います。

 私はSteffen Kvernelandの作家性に惹かれていて、最新作の『自死』(En frivillig død)も訳したいです。また今後は漫画も訳し続けたいです。『闘う女性たち』(Kvinner i kamp)『グループ』(Gruppa)、『』(Grønne greier)やLene Ask,Inger Setræの作品も訳したいです。

 

あなたは翻訳以外の仕事もしていますか?

 

私にとっては主婦業も大事な仕事です。日本では翻訳者の大半は結婚している女性です。日本には翻訳学校がたくさんあり、特に70年代、80年代には翻訳者になりたい女性が多くいました。その学校でまず翻訳をやるには他に仕事をもつか、養ってくれる旦那さんを持てと教えられた、という話を聞いたことがあります。

私も翻訳者として働きだしてから、出版社の年輩の男性編集者と翻訳料について話していた時、「(別に翻訳料が安くても)食いっぱぐれることはないんだよね。旦那さんが養ってくれるんでしょ」と言われ、悲しかったことを今でもよく思い出します。

私は子どもを保育所に入れることができず、ファミリーサポートさんに来てもらっている間に仕事をしています。ファミリーサポートの人はとても優しくていつも私は救われています。だからアンナ・フィスケの『家政婦さん』(Vaskedamen)を読んだ時、とても励まされました。

私は最近、市役所に行き、仕事をしたいから2歳の息子を保育所に入れてくださいとお願いに行きましたが、「入れない家は一杯ある。あるお母さんは、旦那さんが20時に帰ってきてから子どもを預けてファミレスに行き、仕事をしている。そういうお母さんはこの世の中には五万といる。あなただけではない」と言われました。

ノルウェー翻訳者協会のイーカ・カミンカさんとお話した時に、日本でも翻訳者協会をつくったほうがいいと言われました。マグネ・トーリングさんにも翻訳者協会の役割について教えてもらいました。「私は翻訳者です」ともっと自信を持って言えるようになりたいです。

日本では同一労働同一賃金が徹底されていません。日本ではたくさん働いても1人で暮らせるだけの十分な賃金をもらえない例えば図書館司書さんや保育士さんがたくさんいます。女性達はそのことに不満を感じていますが、憤りを表に出しません。社会から常に穏やかであるよう期待されているからです。日本では例えば母親が離婚した場合、多くの場合、貧困の道が待っています。そのことは日本の7人に1人の子どもが貧困に苦しんでいる一因となっています。

 

今、日本では『82年生まれキム・ジヨン』(“Kim Ji-young Born in 1982”)という韓国のフェミニズムの本がブームになっています。昨年私が訳したスウェーデンの『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』も好評でした。今後もフェミニズムの本や家族について書かれた本を訳したいです。『闘う女性たち』 Vigdis Hjorthの『生まれと育ち』( Arv og miljø )Kjersti Annesdatter Skomsvoldの『わが子』(Barnet)Monica Isakstuenの『動物に優しくしなさい』『怒り』Anna Bitschの『私をおいていくなら、あんたは私の子じゃない』(Går du nå, er du ikke lenger min datter)なども訳したいです。

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私は今種田麻矢さんと『私は今、自由なの?』という作品を訳しています。日本では、北欧のフェミニズムから学びたい人がたくさんいます。

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『闘う女性たち』より(一番右のコマでは20世紀の初頭、ヨーロッパの女性達が、「旦那さんに養ってもらえるでしょう」と、真っ先に職場で首切りの対象とされた歴史が示されている。まるで今の日本のよう)

 

このインタビューで私はフェミニズムのことを一杯書きましたが、私が四六時中、男性支配の社会に憤っているとは思わないでくださいね。最後、『きのこと慰め』の中のお気に入りのフレーズを紹介して、このインタビューを終えたいと思います。

 

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ロン・リット・ウーン

女同士が集まると、夫は生贄のように悪く言われるものだが、幸い私は夫に感謝していた。同じく幸いなことに、そのことを彼に何度も伝えてきた。私が結婚生活で、でき損ないの妻でなく、私らしくいさせてもらえたことに感謝でき、自分でもほっとしていた」

「周りの人に対するエイオルフの寛大さが、私をよき人の未亡人にしてくれた。彼がしたこと、または彼が言ったことについて、細々としたエピソードを聞かせられることで、いつも心が慰められた。いかに多くの人がエイオルフに感動させられたかに私は今でも驚かされる。子ども達だってそうだ。エイオルフは子ども達と一緒に絵を描き、また彼らのために絵を描いてやるのが好きだった。価値ある作品を遺すと、亡くなった後も、作品とともにその人は生き続ける。私はエイオルフについてのこれらの話を、貴重なエメラルドみたいに大切にしまっておくのだ」

 

私達は人間としてともに尊重し合うことができます。子ども達と皆さんの未来が、希望に満ちたものでありますように。

#国際女性デー

『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』ワークショップ in 飯能市立図書館 #私達は女性差別に怒っていい

飯能市立図書館さんで『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』ワークショップを行いました。YAA!(ヤングアダルト&アート・ブックス研究会)の皆さんや飯能市立図書館の皆さんをはじめ参加者と交流することができました。

https://twitter.com/trylleringen/status/1025957453928718338

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かねてから自分が訳した本が読者に届いているのか実感が持てず、フラストレーションが溜まっていました。子どもの読者はインターネットなどに書評を書き込むことは少ないですし。ですのでこのような機会をくださった皆さんに感謝いたします。
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私がデンマークをはじめ北欧に興味を持ったのは高校生の時、徳間書店から出ている『マリアからの手紙』を読んだことがきっかけです。デンマークにも教師が政治の話をしただけで、政治観を児童に押しつけていると父兄から苦情が上がる時代があったことがこの本を読むと分かります。大人に本音で話してほしい、守られてばかりでなく自分で考え、強くなりたいと願う主人公。この本に感動した私は高校の図書館司書さんに相談し、翻訳者さんに手紙を書いて徳間書店に送りました。その手紙を翻訳家さんに転送してくれたのが編集者の上村令さん。最近では『母が作ってくれたすごろく』という素晴らしい作品を編集されています。

その頃の私はどうせ女の人は結婚したらパートや主婦になるのに、どうして大人はそのことに触れずただ勉強しろって言うんだろう、とか、どうしてスカートを短くしちゃいけないと先生は言うのに、理由を説明しなかったり、私達生徒が痴漢にあっているのを薄々感じながら見て見ぬふりをしたりするんだろう、とモヤモヤしていました。

『マリアからの手紙』を読んで、自分も主人公のマリアと一緒に自分の力で考え、行動し、意見を言える自由で強い子になれたような感覚を覚え、すかっとし、励まされました。この本の作者はフェミニストでした。私が抱くフェミニストのイメージは、自分の頭で考え、意見を言葉にし、行動できる人、性別や人種にかかわらず公正に物事を考えられる格好いい人です。

参考:#東京医大 女子受験生を一律減点…合格者数抑制医師国家試験合格状況女性医師の年次推移 #私達は女性差別に怒っていい
子どもの自己肯定感国際比較

『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』でも10歳のスウェーデン人の少女が不平等に気づくところが描かれています。
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その後、グループに分かれ、参加者の皆さんに男女の不平等に気づいたことがあるか話し合ってもらいました。
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話し合いでは、クラス名簿が男女別、しかも男子が先に呼ばれる学校がいまだにあることや、昔は家庭科は女子、男子は技術と別々の授業だったこと、家庭科が男女共通になって大分意識が変わったこと、女の子だから短大でいいんじゃないの、どうせ結婚するんだし、と先生に進路指導の時言われたなどの意見が出ました。また高校生も参加してくれていて、男らしさ、女らしさについて言及していたのが印象的でした。男女差別がなくなってフェミニズムとかいうのが最終的になくなればいいといった発言もありました。

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作者は『フェミニズムは現在進行中』という別の本で、こんな例を挙げています。
・学校で私がサッカーをしていて、絶好のチャンスでシュートをミスしてしまい、男の子達から「下手っぴ!」と言われてしまいました。なのに同じミスをした男の子には「ドンマイ」って言うの! 男の子達は女子は男子より劣っているから、一緒にゲームしたくないのでしょう。それに先生からの扱いも、男子と女子では違っているようにエッラは感じています。​

・インターネットのAsk.fm(Q&Aサイト)で友だちのアカウントを見ると、普段面と向かって話すのとは違った,意地悪で乱暴な言葉を書き込んでいる子がいることに気付きました。そしてブスだとかバカだとか言われるのは主に女の子でした。​

私自身が男女の不平等を感じるのは働いても働いてもなかなか賃金が上がらない時です。
参考:月収12万円で働く39歳男性司書の矜持と貧苦

日本は圧倒的な男性中心社会です。
参考:国会議員の女性の割合

https://twitter.com/specialcat0/status/1012007386494586880
各国の女性の年齢階級別労働力率

主人公のエッバは子どもや女の人も大事なことの決定に加われば世界はうんと面白くなると考えました。

14、15ページでエッバはさっきの新聞の写真を、いとこのヨリンダに送りました。ヨリンダはエッバより少し年上で、すっごく頭がいい女の子です。エッバはヨリンダにだったら、何でも話せます。​
「世の中で大事なことを決めるのは、何でおじさんばかりなの?」​
「ずっとそうだったからよ。わたしたちが変えないかぎり、変わらないの」
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次にグループでフェミニズムって一体何か話し合ってもらいました。

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発表してもらった後、本の中でフェミニズムについて何と説明されているか伝えました。本では「男女平等を目指し、女性の権利を​求める思想。​男性と女性が経済的、社会的、政治的に平等になるよう求める運動のこと」と描かれていました。

その後、エッバはクラスメートや近所の女の子や男の子と、フェミ・クラブを結成。日常感じる不平等について話し合います。​​


☆なぜ皆がフェミニストを名乗らないのでしょう?


・フェミニストというのは男嫌いで、女が全てを決める社会を望む人達と勘違いしている人がいるから。​
・辛抱強く耐えていれば、そのうち変わるでしょ、と思っている人もいるから。​
・フェミニストは社会不適合者で、不満を持つのは自分達が悪いからだと言う人もいる。​


→もしもあなたが男か女かは関係なく、皆が平等な権利だけでなく、責任、平等な機会を得られる社会を望むなら、あなたはフェミニスト。

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次にフェミ・クラブのメンバーたちは、最初のグループディスカッションの発表で男子高校生が触れていたように、男らしさ、女らしさについて話し合います。

「女の子は、傷つきやすくて、か弱いと思われる。おしゃれや男の子にしか興味がないとも」

「男はサッカーや乗り物の運転が上手なものと思われている。どんな時も強く、たくましくなきゃならないとも」​
主人公のエッバにおばあちゃんはスウェーデンの女性が男女平等を手に入れられたのは、昔の女の​人たちが、権利を勝ち取ってきたからだと言います。​

エッバは元フェミニストのおばあちゃんのナビゲートで、メアリー・ウストンクラフト(25,26,31,31ページ)をはじめ、ヨーロッパの女性史を学びます。

女性史を語る上で欠かせないトピックは女性選挙権の獲得です。

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スウェーデンの女性が選挙権を得たのは1921年でした。

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女性選挙権が世界で初めて認められたのはニュージーランド。ヨーロッパで一番早かったのはフィンランド。​
日本婦人参政権は第二次大戦後の1945年12月の改正選挙法で実現し、満20歳以上の男女による平等な選挙制度となりました。

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その後グループで選挙権はなぜ大事なのか話し合ってもらいました。

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発表が終わると、本の中でどう描かれていたか紹介しました。

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英国のサフラジェットは1912年と13年の間に数百もの放火、爆破事件を起こしました。メンバーの1人エミリー・ワイルディング・デイヴィソンは抵抗の意志を示すため、ジョージ5世の馬に飛び出した際、馬に踏みつけられ、数日後に亡くなりました。警官はサフラジェット達を容赦なく警棒で叩き、牢屋に入れました。サフラジェット達がハンガーストライキすると、警察は医者を呼び、無理矢理食べものを流し込みました。これにより肺炎になったり、命にかかわる病気にかかる人もいました。

そして第一次世界大戦がはじまると、サフラジェット達は活動を休止。その多くは救助隊に志願。男性が戦場に行っている間、女性達は男達の代わりに働きました。戦争が終わると、女性なしでは社会が回らないと気付いた政治家達は女性選挙権を認めざるを得なくなりました。1918年、30才以上の女性が選挙権を得ました。さらに10年後、21才以上の女性にまで女性選挙権が拡大しました。

こんな風に英国のサフラジェットは暴力を用いることも辞しませんでしたが、スウェーデンの女性解放運動では、力はほとんど見られませんでした。1903年女性の投票権を求める団体が作られ、議論をしたり、ビラを配ったり、演説をしたりすることで選挙権を得たのです。実現までには35年もかかりました(48,49ページ)。​

日本では若い人は政治活動にほとんど参加しないようです。私が訳した『このTシャツは児童労働で作られました』ではH&MのTシャツをつくるのに児童労働が行われていることを知ったノルウェーの若者が、工場に忍び込み、火をつけてしまい、火はすぐに消し止められたものの1年間の奉仕活動をしなくてはならなくなったと描かれています。

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また初めて翻訳した『ウッラの小さな抵抗』ではドイツに占領された第二次世界対戦中のデンマークの人たちが占領軍に反対し、破壊工作を行っていたことが描かれています。
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最近金原先生の訳で『ナチスに挑戦した少年たち』という作品も出されています。

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北欧の子どもも大人も権力に服従しないというマインドを持っているのでしょうか。

作者のサッサさんは『10歳からの民主主義レッスン』の中で非暴力非服従を説いたガンジーのことや(30ページ)、スウェーデンのヴェーグネル(38ページ)のことを書いています。

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参加者に意見をうかがったところ、デモに参加するなど生徒の政治活動を禁止する理由はないという考えの高校もあることが分かりましたが、私がいた高校では生徒がデモをするなど考えられませんでした。

学校に政党が来るとお話したところ、どんな風に政治的中立を保つのかという質問が出ました。そのことに詳しいのは両角達平さんという方です。

研究会の方が私と鈴木先生のイベントや、ミツイパブリッシングさんのイベントで聞いたことをまとめてくださっていました。ワークショップでは後者について発表してくださいました!

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この後子どもの発信を大人がどれぐらい助けているか、参加者の方に意見をうかがいました。

(参考)
日本の子どもはネットでコンテンツの消費はするけれど、発信はほとんどしない
政治集会やメディア・ネットの意見表明など日本の若者は政治活動にほとんど参加せず関心もない
若者の声を政治に届けるには、子ども郵便箱を設置 ノルウェーの取り組み
日本でも高校生教育アイデアソン
子どもの本総選挙
N高校作家・冲方丁がN予備校&ニコ生で小説創作授業
政治的発言をすると干される芸能人
子どもとプライバシー、ネットパトロール
正しく怖がるインターネット
「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知)」に関するQ&A(生徒指導関係)
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著者のサッサさんは1953年生まれ。スウェーデン芸術家協会会員。スウェーデン作家協会会員。1975年以降、スウェーデン各地で作品の個展を開催。絵本を中心に数多くの作品を発表。『10歳からの民主主義レッスン―スウェーデンの少女と学ぶ差別、貧困、戦争のない世界の原理』によってスウェーデン図書館協会から2002年度カール・フォン・リネー賞を受賞。​

サッサさんは学校や図書館などで、民主主義についての子ども向けのワークショップを開いてきました。サッサさんはこう言います。「子ども時代は、大人になるためのただの準備期間ではない。子ども時代は、人生の一部です。私達は子ども達を社会の一員として受け入れるべきです」子どもを議論に引き入れることで、世の中がよくなるのではないかとサッサさんは考えます。

『10歳からの民主主義でレッスン』でサッサさんはこう言います。「この本を書くことになったきっかけは、子どもの発言の場があまりにも少なすぎると思ったからです。子どもは賢い存在です。わたしたち大人は、子どもの声にもっと耳を傾けなければなりません。今こそ、子どもも選挙権を持ってよい時代ではないでしょうか。​子どもは問題に対して大人が考えつかないような解決策を見つけることができるので子どもにとってよい社会とは、大人も含めたすべての人にとって、よい社会なのです。」

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作品の中では「人の見た目のことじゃなく、中身について話すようにしよう」、「まわりの期待に応えることばかり、考えちゃいけない。他人からどう思われるのかばかり、気にしない。ありのままでいよう。自分の気持ちに正直になろうよ。そして、したい格好をしよう。それにほかの人も、自由にさせてあげるんだ」​と描かれています(84~89ページ)。
最近ではこんなことも話題になっています。

ブルゾンちえみの「ブスいじり」に視聴者ゲンナリ もうやめたら?​

またCHAIさんやあいみょんさんのような新しい価値観を持つアーティストも出てています。

以前私もノルウェー人の人に「私太ってるから」と言ったら、「女性は妊娠したとき胎児を守れるように脂肪がつきやすくなってる。なんでそんなことばかり日本の人は言うの?」って言われてはっとさせられたことがあります。英国人の男性も私の太ってるトークには一切のってきませんでした。笑わないことで会話を打ち切ることができるのです。

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最後にワークショップで、様々な家族の絵本を見ていただき、グループでどんな風に男女の役割が描かれているか発表していただきました。
話をして思ったのが参加していた司書さんも高校生も私が想像していたよりも前衛的な考え方の持ち主であること、自分で考える力を持っていることでした。

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また男だから、女だからという偏見もあまりなく、これならLGBTQのこと、また性教育、男女の恋愛についてなどについて話しても全然高校生も理解してくれたのではないかと思いました(勝手に私が遠慮してそこは話せなかった)。

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また途中ご紹介したWith youさいたまの「ジェンダーから見た日本女性の歴史」(明石書店)をもとにしたジェンダーパネルに興味を持ってくれる司書さんもいて嬉しかったです。パネルは無料で借りられるようです。

https://twitter.com/trylleringen/status/1016526274078994432

私は向こうの学校に通っていたわけではないので、学校制度について詳しく話せないのがネックです。鈴木賢志先生などのお力を借りられるとより日本の学校に役立つ提案ができそうです。

また思いの他、北欧の学校制度への関心が高く、もっと深い入り組んだ内容の本でも、日本の学校関係者、児童書関係者は興味を持って受け止めてくれるのではないかと思いました。できれば教授法の本なども今後訳したいです。

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https://twitter.com/trylleringen/status/1022453603351506944
https://twitter.com/trylleringen/status/1026838891142119425

https://twitter.com/trylleringen/status/1026840403604004864

https://twitter.com/trylleringen/status/996536913002561536

https://twitter.com/trylleringen/status/996538282182787072

 

https://twitter.com/trylleringen/status/996533437698686976

https://twitter.com/trylleringen/status/996534875812343808

 

https://twitter.com/trylleringen/status/1006310980043735040

https://twitter.com/trylleringen/status/1023119048232525826

北欧の図書館制度についても、もっと知りたいです。

https://twitter.com/trylleringen/status/996544276732366849

https://note.mu/reikohidani/n/n5411fcbc0e03

FireShot Capture 588 - ノルウェー人日本文学翻訳家マグネ・トリングさんインタビュー|_ - https___note.mu_reikohidani_n_n5411fcbc0e03———————————————————-

またこの本は哲学と絡めて授業展開もできる本です。

jibun 1odaikaranotetugaku

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議論の中で出てきた疑問への対処例
https://note.mu/reikohidani/n/n75ff18e544ab

神楽坂モノガタリ『世界を変えた50人の女性科学者たち』『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』イベント

 

8/4(土)神楽坂モノガタリさんにて、野中モモさんと創元社の編集者さんとイベントをしました。 ひるねこBOOKSさんといい、CHIENOWA BOOK STOREさんといい、Readin’ Writin’さんといい、鈴木先生といい、くまざわ書店ペリエ千葉本店の磯前さんといい、この作品を世に届ける手助けを男性もしてくださることに驚かされ、また感謝しています。この本の普及活動については、男女の分断という言葉は無縁に思えます。 私は野中モモさんの訳された『バッド・フェミニスト』のファンで、そこから野中モモさんの翻訳作品、著作活動に注目してきました。 久禮さんもハフポストの記事『スリップの技法』を拝読したことがあり、まさかお声がけいただけるとは思っていなかったので、光栄でした。 準備や告知などしてくださり、ありがとうございました。 野中さんとはFIKAさんでの対談で一度直接お会いしていましたし、創元社の編集者さんともメールのやりとりなどしていたのもあり、当日の会では、本やフェミニズムのアイディアを届けたいという思いを互いに理解し合った上で、連携プレイで発表、対談ができたような気がします。 久禮さんも男性目線での思いを語ってくださいましたし、本の話題になるとさっと書影を出してくださったりと本への愛溢れる会になりました。 私達が登壇する前に会場で『バッド・フェミニスト』についてのTEDトークを流していただきました。       

野中モモさんが『世界を変えた50人の女性科学者たち』のポストカードや、よわね問題、翻訳の女言葉多用問題について考えるのに有益なビョークの言葉を翻訳した資料も用意してくださり来場者に配布できるよう用意してくれました。

対談では、まず『世界を変えた50人の女性科学者たち』について野中モモさんと編集者さんからお話があり、途中ちょこちょこ私も感想を伝えました。アメリカではSTEM教育、特にジェンダー平等に力を入れた取り組みが盛んなのだそうです(野中モモさんの発言は不正確だといけないので、ここでは概要だけにとどめます)。

私は『北欧式眠くならない数学の本』を例に、児童書のイラストで物理学者も生物学者も女の人が多く描かれていることや、

『世界を変えた50人の女性科学者たち』にも出てくるマイ・ブリット・モーサーがノルウェーでも科学の世界は男性優位であると述べていたこと、(下の画像は夫婦の研究について書いたポピュラー・サイエンス本。どうか重訳しないでね 汗)

『脳はスーパースター』(邦訳予定あり)の脳科学者が

OECDの学力調査などで理系科目の得点の男女格差を強調することで、女の子が自信を失うことや、女の子は数学ができないと聞かされた女子の数学の得点が下がったという実験の結果や、女性は方向音痴という言説は正しいのかという話をしました。創元社さんは関連本『地図の進化論』に書いてあった内容を紹介してくださいました。女性は愚鈍であるかのような迷信をなくすために科学研究を用いることができます。

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野中モモさんはZINEの活動も積極的にされていますが、若い人たちの発信を助けることに私も関心を持っています。最近のノルウェーでは大学生が科学、医学の本を出していて、ベストセラーになっていたり、学生の研究にスポットを当てるサイトもたくさん出てきています。

https://twitter.com/trylleringen/status/984212440865849344

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その後私から『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』の作者がどんな人か、や作品についてご紹介しました。

https://1drv.ms/p/s!AgCCjjXNMWkXhG2TsS0nYEuHVeN9

野中さんが94ページに出てくるファッション・ブランドのポスターを破るというような違法アクションについて日本では反発が強いのではないかとおっしゃっていたのが印象的でした。

『世界を変えた50人の女性科学者たち』でもルールが不公平なのだから、ルールを破ることを怖れるなという教えが繰り返し出てきて、それを遵法意識の強い日本で理解してもらうにはどうすればいいか頭を悩ませているそうです。

モモさんは『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』で権力とは何かが説明されていることに関心されていて、そこがこの違法アクションの問題ともつながっていくのではないかと思いました。野中さんはやっぱり鋭い。

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その後、久禮さんの選書についてお話くださいました。(やらされる労働を、どう自分の仕事に作り変えていくか、子どもと一緒に、大人だって何度でも学び直せるんじゃないか、よりよく生きられる環境を自分で作り出すには?、仕事と暮らしを自分ごととして引受け、自分の機嫌を自分でとって、家族や隣人と向き合えるようになるには?)
https://twitter.com/kagurazakamono/status/1024166503430508549

https://twitter.com/kagurazakamono/status/1024163331328765952

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https://twitter.com/trylleringen/status/1025791139301928960

その際、モモさんが Maker Faire Tokyo 2018について教えてくださいました。

またモモさんから『退屈をぶっとばせ!』や『ヒロインズ』のリコメンドも。
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野中さんから英語圏のフェミニズムの本をたくさん紹介していただきました。(野中さんの訳で絶対出してほしいので、タイトルはここでは言及しません)

私も1冊紹介しました(重訳しないでね)。

https://twitter.com/trylleringen/status/1023410475109732352

イベントには、大学生の方や、北欧に留学予定の方、編集者さんなどがいらっしゃいました。

https://twitter.com/trylleringen/status/1025881105239433219

最後質問のところで北欧の土木業従事者に占める女性の割合や労働環境について質問がありましたが、『あるノルウェーの大工の日記』のことを思い出しながら答えようとしましたが、答えることができませんでした。

https://twitter.com/trylleringen/status/1025890905926955008

後で調べたところ、こんなことが分かりました(デンマークの例です)。

https://www.tv2fyn.dk/artikel/dansk-byggeri-vi-vil-have-flere-kvinder

デンマークの建築・建設・土木業界で働く人、10人のうち女性は1人という割合だそうです(土木だけに限った調査は見あたりませんでした)。女性の割合は20年間、ずっと変わっていないそうです。建築・建設・土木女性会議では今後10年で女性の割合を倍増させるため、学生にこの業界の魅力を伝えるなど活動をしているそうです。

https://www.danskbyggeri.dk/presse-politik/nyheder/2018/kun-faa-bygge-og-anlaegsvirksomheder-overvejer-at-ansaette-kvinder/

https://bupl.dk/artikel/kvindebrancher-haardt-ramt-knokler-mere-end-maend/
ただ肉体的に負荷の大きい仕事についている女性(建築業界だけでなく掃除のしごとなども含む)は、肉体的に辛くなってくる60歳近い人が20代の人と同じ仕事をしていたりといったことがよく見られ、年齢に応じた肉体の変化、健康に十分に配慮しきれていないと労働環境研究国立センター(NFA)の教授Andreas Holtermannが警鐘を鳴らしています。また男性が多い業界では、女性も肉体的な負荷が大きい仕事を男性並みにこなすよう期待される傾向があるようです。

http://nfa.dk/da/nyt/nyheder/2018/danmark-kan-laere-af-sveriges-tilgang-til-sikkerhed-for-toemrerlaerlinge
建築現場での事故を減らすための取り組みについてはデンマークよりスウェーデンの方が進んでいるよう。デンマークでもスウェーデンの例に倣って、企業と学校が連携して安全な労働環境の確保に取り組もうという動きもあるようです。

https://finans.dk/artikel/ECE4224545/Kvinder-bliver-ikke-v%C3%A6rdsat-i-bygge-fagene/?ctxref=ext

質問者さんのお仕事とは違うかもしれませんが、デンマークでも、女性の大工さんが、評価されにくいことが問題視されているようです。

肉体労働が女性の体にどんな影響を与えるのか、病気や死亡リスクが上がるのではないか、それを防ぐにはどうしたらいいかといった研究もされているようです。女性労働と健康について今後さらに勉強していきたいです。

男女は身体的に異なるわけで、女性が男性と同じように働くことが男女平等なのか、についても引き続き考えていきたいです。野中モモさんの訳で出るというWomen in sportsにもひょっとしたらつながるテーマかもしれないので、本が出たら必ず読みたいです。

WOMENINSPORTS

女性が働く中で直面する困難にどう立ち向かえばいいか描かれた本も訳したいです(原語から訳したいのでどうか重訳しないでね)。

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創元社さんから出る『女性の権利宣言』も出版が楽しみです。

女性の権利宣言_帯A

会ではパリテのパンフレット

も置いてもらいました。

ちゃぶ台返し女子アクションさん
のことや野中さんのZINEの活動 http://lilmag.org/  

Feminism for everubodyにも少し触れました。

 

今回のイベントは私なりのパリテカフェだと思っています。この人ができるなら、私だってできそう、誰だって発信者になれるんだ、私だったらこう発信する、表現するのにって、私を見て思ってくれる人がいいな、と思います。無名な私に手を貸してくださった神楽坂モノガタリの久禮さんをはじめとする皆さんに感謝します。

心のこりなのは、当初予定していたフリーランスの仕事についてや、男性の生きづらさなどについてあまり話せなかったことです。今後、神楽坂モノガタリさんでも継続してこれらのテーマについて扱っていくそうなので、イベント拝聴にうかがいたいです。

この度は本当にありがとうございました。
8月25日により少人数で女性団体の方と読書会をしますので、お話できたら嬉しいです。

2018年7月28日Readin’ Writin’ BOOK STORE『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』読書会&ちゃぶ台返し!

わたしはわたし、ぼくはぼく、自分らしく生きるってどういうこと?
『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』 読書会&ちゃぶ台返し!
翻訳者・枇谷玲子÷ちゃぶ台返し女子アクション・もりこ

『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』(サッサ・ブーレグレーン著・枇谷玲子訳、岩崎書店)の読書会を、Readin’ Writin’ BOOK STOREで7月28日(土)に開催します。

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頑張っているのに報われない。
なんだかモヤモヤしている。
幸せを感じられない。
もしかしたらそれは、世の中のことを「スーツ姿のおじさんたち」が決めているからかもしれません。

ジェンダーギャップ指数をご存知ですか?
社会進出における男女格差を示す指標です。
2017年、スウェーデンのジェンダーギャップ指数は144か国中、5位。
男女平等の先進国です。
一方、日本は114位で、とっても男女不平等!
男女格差が当たり前すぎて、気がつかないだけなんです。
日本で生きているだけで、なんとなくしんどく感じるのは、このあたりに原因があるのかも。

本書は10歳のエッバの目を通して、スウェーデンをはじめ世界の女性たちがどのように自分たちの権利を獲得してきたのか、また他人に支配されずに自分らしく生きるにはどうしたらよいかが、優しい言葉で書かれています。

私たちは本書から学ぶことで、性別にかかわらず夢を叶え、好きな服を着て、世の中を変えることができるようになるでしょう。
自分たちにこれから何ができるか、みんなで一緒に考えてみませんか。
想いを分かち合ってみませんか。

また、読書会の最後には、みんなでちゃぶ台を返しましょう!

お申し込みはこちら。
http://readinwritin.net/2018/06/19/%E3%82%8F%E3%81%9F%E3%81%97%E3%81%AF%E3%82%8F%E3%81%9F%E3%81%97%E3%80%81%E3%81%BC%E3%81%8F%E3%81%AF%E3%81%BC%E3%81%8F%E3%80%81%E8%87%AA%E5%88%86%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%8F%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%82%8B/

もりこさんお薦め! Readin’ Writin’ BOOK STORE周辺情報

(浅草橋)

少し離れますが、浅草橋からスタートし、蔵前を通って、田原町のReadin’ Writin’ BOOK STOREまで歩くのも楽しそう♪

 

浅草橋には問屋街もあり玩具、文具、革製品、アクセサリーなど色々なお店があり、手芸好きな人にもたまらないそうです。

(蔵前)
おしゃれなカフェが一杯!

川沿いをのんびりお散歩♩蔵前のおしゃれカフェ18選

Daily’s Muffin

(田原町)

地図リンク

洋菓子レモンパイ

パン屋ペリカン *要予約

遠州屋

そば甲州屋

tizu

 

 

 

 

 

 

 

JISS研究講座 第206回 2018年7月5日(木)「北欧に学ぶ男女平等」

JISSのHPより抜粋

JISS研究講座 第206回 2018年7月5日(木)「北欧に学ぶ男女平等」

Print終了しました。告知文↓

「スウェーデンにおける著名な芸術家・作家であるサッサ・ブーレグレーン氏の近著である『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』を邦訳された枇谷玲子さんをお迎えして、北欧における男女平等や主権者意識について考えていきます。なお今回は、通例のような講演と聴講という形ではなく、所長の鈴木賢志が聞き手として内容に関する質問やコメント、話題提供をするととともに、参加者の皆様からも広くご意見をいただきながら、北欧と日本の違いや、日本が北欧から学べることについて考えていきます。」

● 講演者 枇谷玲子 氏 北欧語翻訳者
● 日時 2018年7月5日(木) 午後6時~8時(5時半開場)
● 場所 スウェーデン大使館1階ノーベルオーディトリウム
● 参加料 研究所会員は無料 一般 1,500円、学生 1,000円(当日受付にて)
● お申込みは、以下のフォームよりお願いいたします。

http://jissnet.com/archives/3392

 

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ひるねこBOOKS『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』刊行記念イベント

2018年6月8日に『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』の刊行記念トークイベントを行いました。

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https://www.facebook.com/events/209392903178043/

内容はこちらにまとめています。

https://note.mu/reikohidani/n/n847faf2a6f98

https://www.dropbox.com/s/x7bpiho74ysj8mz/%E3%81%B2%E3%82%8B%E3%81%AD%E3%81%93BOOKS%E3%81%95%E3%82%93%E3%80%8E%E5%8C%97%E6%AC%A7%E3%81%AB%E5%AD%A6%E3%81%B6%E5%B0%8F%E3%81%95%E3%81%AA%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%82%B9%E3%83%88%E3%81%AE%E6%9C%AC%E3%80%8F%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88%20%287%29.pptx?dl=0

Feminism For Everybody『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』読書会、個人的感想

Feminism For Everybody『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』読書会に参加してきました。

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はじめに上智大学法学部教授の三浦まりさんのお話を聞きました。私は先生のご講演を先日With Youさいたまで聴いたばかりだったのですが、『私たちの声を社会へ 世界の潮流と日本の課題』という演題で、クオーター制のこと女性議員比率、パリテ、政治男女均等法などについてお話されていた前回と今回のお話はまた違った内容でした。今回は最近のフェミニズムのムーブメントについてお話されていました。

 

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「エマ・ワトソン、その胸の見せ方はいいの?」ノーブラ写真に論争起こる
フェミニズムにも違いが?実はあまり知られていないフェミニズムの多様性って? ビヨンセとアディーチェ
Women’s March

会にはサプライズで訳者のくぼたのぞみさんがいらしていて、お話されました。

その後グループに分かれてディスカッションをしました。

(印象的だったこと)

●『バッド・フェミニスト』の帯に名前が出て来るジェーン・スーさんの、女は8種類に分かれて連帯できないという言葉。今回、残業の少なさなどを判断基準に企業を選ぶ女性が多いのは甘えではないか、女性も働くべきです、などとおっしゃる方がいて、主婦の私はなぜだか勝手にぐざっときていた。人は立場、状況が違うとなぜだか相手と自分を比べて、後ろめたく思ったり劣等感を覚えたりする。でも相手が悪気がないのは分かった。何かを発信する時、必ず誰かが傷つく。恐れてばかりいたら、何も言えない。

●日本企業で働いていると、普通の服を着ているのに、あなたの服はセクシーすぎると言われたり、同僚から付きまとわれても、最初に応じたあなたが悪いと女性のせいにされたり、従順でないとお前はいい大学は出ているけれど、そんなに頭はよくないと言われたり、女性に対するセクハラ・パワハラが横行していることが分かった。私も会社勤めをしている時に、「自分は何でもできると思っているんじゃないぞ」と年配の男性に言われてショックを受けたことがある。企業の優しさ、モラルというのが大きなディスカッションのテーマになったような気がする。

 *『ザ・カンパニー』ではなく、『ザ・コーポレーション』の誤りでした。   ekono

●フェミニズムについての漫画を女性向け雑誌に持ち込んだ漫画家さんが、男性批判につながるという理由で、企画を却下された。女性向け漫画雑誌なのに編集長は男性だったそう。多分幼い女の子のエロ表現について気になるのは、メディアが暴力や批判の矛先を大企業など権力、お金を持つ相手には向けず、弱い立場の女、子どもに向けやすいからではないかと思う。強者にこびへつらい自主規制するくせに、と思ってしまうのかも。

 

●男が悪いのではない、男女の関係性の再構築、社会のしくみを変えることが大事。特権性の特徴は盲目であること。  

 

最後に紙に今日のまとめを書いてガラスに貼り付けました。 20170709_155837 私は「ベストマザー賞をもらうのはどうしていつも専業主婦じゃないの? 女性が皆、会社で8時間働くようになれば、それでいいの? 怒れるフェミニズムはもうやめよう。今私達に必要なのは優しいフェミニズム」(少し修正しました)と書きました。 参考:

女性としての生き方について

最近女性の生き方についての議論が活発に行われているような気がします。

朝日新聞 女の子を拘束する「呪い」、親が解かねば 駒崎弘樹さん、聞き手・錦光山雅子さん

 

そうした記事や本、映像などに触れるうちに、人間として当たり前の権利を望む女性が、この社会で「フェミニスト」「生意気な女」というレッテルを貼られ、時にうとまれることもあることに気付きました。

思い返してみると、子どもの時、私はよくTVタックルなどの番組で田嶋陽子さんが他の出演者から怒られたり否定されたりしているのを観て、「何だかよく分からないけど、フェミニストって叩かれやすいんだなあ」、「フェミニストって損だなあ」と思っていたような気がします。

でも田嶋さんがおっしゃっていたことって、そんなにおかしかったのでしょうか?

私は今30代後半ですが、最近女性同士の関係がぎすぎすしているのが気にかかっています(私が悲観的なのかもしれませんが)。働いているお母さんの中には、働いていないお母さんのことを「暇人」などと陰口を言う人もいるようですし、働いていないママはママで、互いに比べ合い、不仲になってしまうケースもあるようです。キャリアウーマンの女性は女性で、経済的に自立していることを誇りに思いつつも、結婚している友人などまわりから「いつ結婚するの?」という言葉をかけられ苦しめられるケースもあるようです。経済的に自立していない女性が、キャリアウーマンの女性を内心ねたましく思ったり・・・・・・。試しにインターネットで「専業主婦」「働いている友達」などと検索してみてください。様々な人間関係の悩みについての投稿が出てくるはずです。

学生時代からの友人と集まる時でさえ、時々緊張が走ります。Aは元幼稚園教諭。結婚して子どもができると同時に仕事をやめ、育児に専念。Bは最近子どもを産んで、1年の産休を経て、医療事務の仕事に復帰。子どもを保育所に預けはじめました。そんなBにAは、「私だったらこんなかわいいうちに預けたくないなあ」と冗談めかして言います。Bは「でも幼稚園の先生と違って、私の仕事の場合、子どもが大きくなってから復職するのは難しいんだよ~」と答えます。

どうやら幼稚園の先生というのは、結婚して子どもができると、辞めるのが一般的なようなのです。

それは保育士さんも同じなのかもしれません。もちろん仕事と子育てを両立している人もいますが、子どもが小さいうちは育児に専念して、子どもが大きくなってから復職、でもその場合、非常勤にならざるをえず、勤務時間は常勤の先生とあまり変わらないけれど、給与はかなり低くなる場合が多いようです。そしてそのいらだちをぶつける矛先は子どもや親になりやすいような気がします。私は娘が小さい時、保育所に預けていたのですが、保育所の先生から(その先生は子どもが小さい時は育児に専念していて、大きくなってから復職したようです)「保育所に子どもを預けているお母さんは、子どもの成長を見逃していると常日頃お母さん達を見ていて思うのよね」と言われたことがあります。保育所の先生の働いているお母さんへの見方は意外にシビアでした。保育所の先生とママ達の価値観の違いは明白で、私も先生との考え方の違いや批判的な言葉を投げ掛けられることに悩み、元幼稚園教諭の友人に相談した時には、こう言われてしまいました。「面倒みてもらっているんだから、嫌だったら、自分で子どもをみるしかないよ」

Hanako ママWEB 保育園義務教育化1 女性が「お母さん」になった途端に、できなくなること【古市憲寿/保育園義務教育化・1」】http://hanakomama.jp/column/interview/14208/

男性以上に女性の生き方は多様で、置かれている状況が違う人同士が分かり合うのって本当に難しいんだなぁ、と思います。

https://youtu.be/sN2HsfLE44g?t=27m32s

AbemaTV公式 YouTubeより 立場の違う人がわかり合うことについて

【3月1日イベント開催】保育園落ちた「 #フリーランスが保活に思うこと 」新しい働き方・保育の形考える The Huffington Post | 執筆者: 泉谷由梨子さん http://www.huffingtonpost.jp/2017/02/15/freelance-hokatsu_n_14763608.html

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朝日新聞 女の子を拘束する「呪い」、親が解かねば 駒崎弘樹さん、聞き手・錦光山雅子さんでフローレンスの駒崎さんは、”春から小学生になる娘(6)が先日、「友達から『女のくせに』と言われた」と教えてくれました。まだ6歳になったばかりなのに。そんな娘に「女だからといってできないことは何もないんだよ」と力説しながら、「呪い」の言葉はこうやって幼いときから女の子をしばりつけていくのかと実感しました。”と書いておられます。私は娘に女の子らしくしろ、とか女の子だからピンクがいいよね、と言ったことはありません。でも、娘は残念ながら保育所で他の子や保育所の先生に言われたのか「女の子はピンク」と覚えて帰ってきました。他のママさんで、「女の子だからピンクとは教えないでください」と抗議していた人もいましたが、私はモンスターペアレンツ扱いされるのも嫌だし、何も言いませんでした。そもそも先生はこういったことを学生の時に習わなかったのでしょうか? 娘は今はもう9歳なのですが、最近娘と将来の夢について話していて、「昼間は(正社員として)働いて、16時か17時に帰ってきて、ご飯の準備をしたり、子どものお世話をしたりする」と言われ、育児、家事、仕事の両立が難しいという現実を今伝えるべきなのか迷いました。私自身は女の人らしくしろと親から言われたことがなく、「これからは女の人の時代だ。企業も女の人の能力を生かさなくては。女の子だからって男に負けるな」と言われて育ったのですが(父の期待に応えることはできなかったのかもしれません)、子どもながらに実際まわりの大人を観察して、キャリアウーマンと呼ばれていた親戚が行き遅れ扱いされているのに気付き、女の人が会社で頑張っていてもそれを認めない意地悪な大人もいるのだと、子どもながらに感じ取りました。あれから30年以上たちましたが、女性をとりまく社会の状況は変わったのでしょうか?

「昼間は(正社員として)働いて、16時か17時に帰ってきて、ご飯の準備をしたり、子どものお世話をしたりする」と言う娘に、私は何て言うべきだったのか、今も考えている途中です。子育ては人それぞれですので、皆がそれぞれに子どもに何を伝えたいのか考える必要がありますね。ひとつ、本の中にヒントになりそうな言葉を見つけました。自分が訳した本で、宣伝になってしまうのですが、とてもいい言葉だと思うのでここで紹介させてください。駒崎さんが娘さんに伝えられたことと少し通じるところ、また違っているところ両方がありそうです。http://reikohidani.net/2473/

99ページ『人間に限界はない』より

「善い人間は、自分の行動につねに責任を持つこと、人生の道を自ら選ぶことで、なりたい自分になれると知っている.

これって、すごいことだと思わないかい? きみたちは根本的には自由なんだ。でもこの世のなか、どんなときもかんたんに自由と選択肢が手に入るとはかぎらない。
たとえばこの本に出てきた哲学者のほとんどが、おじいさんだって気がついたかい? なぜだろう? 1章で、いまは哲学にしたしむのに、男か女かは関係ない、って言ったよね。でもどうしてむかしは、ちがっていたんだろう? その答えの1つに、女の人が歴史上、男の人とまったくおなじ教育の機会を得てきたわけではないことがあげられる。女性は成長する機会と自由を制限されてきたんだ。
プラトンはこのことに頭を悩ませていたにちがいない。かれが「社会をおさめるのは哲学者だ」と考えていたのを、おぼえているかい? プラトンにとっては女性も男性とおなじ、優れた哲学者だった。これまでの世界の歴史でみながそう考えれば、女性は男性とおなじ教育を受け、社会での道を自分できめる権利を得ることができたのにね。メアリ・ウルストンクラフトとシモーヌ・ド・ボーヴォワールは、教育を非常に重視し、女性が男性とおなじチャンスを得られる社会をつくるため、力を尽くした。いまでは男女は様々な面で平等だ。この自由を勝ちとるために、長年たくさんの人が奮闘してきた」

この本はスウェーデンの本です。スウェーデンの読者に向けて描かれた本ですので、「いまでは男女は様々な面で平等だ」と書かれていますが、日本でも男女は平等でしょうか? 「この自由を勝ちとるために、長年たくさんの人が奮闘してきた」とも描いてあります。でも私は何も奮闘することなく、ただ今こうしてブログを書くことしかできずにいます。娘に何と言えばいいのか、いまだに答えが出ません。

高学歴女子が年収212万でもNPOで働く理由 http://toyokeizai.net/articles/-/151362


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北欧の児童書には女性の生き方が示された作品がたくさんあります。今とても気に入っている作家さんは、先日『うちってやっぱりなんかへん?』(翻訳 青木順子さん)のイベントで、森百合子さんという方が紹介されていたKerstin Thorvallさんです。

『あなたへの本』

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働くのも、子育てに集中するのも女性自らが選ぶ権利であることや、太っている子も健康的な食事をこころがけながらも自分の体型を受け入れて自分らしくおしゃれする事、生理を迎える時のこと、デートの時に男の子にお金を出してもらうか割り勘にするかなど女性としてのたしなみがティーン向けにとても正直に、親しみやすい言葉で、かつ時に哲学的に書かれたスタイリッシュな本です。

こちらのサイトに中身の画像がたくさん載っていました。http://ida.elle.se/en-bok-del-2/

『ちいさな、ちいさな子の肖像』

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赤ちゃんの成長がとても生き生きと描かれた作品。赤ちゃんがはいはいする後姿、やわらかな手、たっちできるようになった時のこと、動き回れるようになるとたくさんいたずらすることなど、とびきりキュートな赤ちゃんの姿が描かれています。同時にそれを見守る喜びや、「赤ちゃんにとってはあなたが世界一のお母さんなんですよ」と子育て中のママへのねぎらい、励ましの言葉もおさめられた力強いママへの賛歌でもあります。

フェミニストというと、怒ってばかりの怖い人というイメージを勝手に抱いていたのですが、彼女の語りは暖かで、様々な立場にある人達への思いやりを感じさせます。

日本人でたとえると詩人、新川 和江さんのような雰囲気。田辺聖子さんほどは勝ち気じゃないかもしれません。でも田辺さんの作品も大好きで、作品を読んだ時の感動は今でも心に残っています。女性としての生き方についても考えさせられます。

 

でも自立した女性を男性は愛せるのでしょうか・・・・・・? 宇多田ヒカルさんの『俺の彼女』を聴いたり、生島治郎さん、小泉喜美子さん元夫婦の本を読んでいると、色々考えさせられます。

 

参考:しからない子育て/『ヴェスタ・リネアとおこりんぼママ』 http://reikohidani.net/2285/

お母さんを応援する絵本『いとしいあなた』http://reikohidani.net/1915/

性別役割分業、イクメン/Z棟のアウロラ お父さんが家で育児をして、お母さんが外で働く。そんな家で育つ私は、かわいそうなの? http://reikohidani.net/2202/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子どもに本を手渡す人(パンダ金魚とアクティブラーニング/いいおかおと子育て支援)

1.パンダ金魚とアクティブラーニング

日本の学校の授業は受け身ばかりで、子ども達が自ら考え、発言する参加型の学習、アクティブラーニングがあまり行われていないと言われがちです。私も自分の子どもの頃の記憶をもとに、そう考えていました。でも小学校3年生の娘の小学校の授業参観で、時代の流れを感じさせられました。

科目は国語。先生は『消えたパンダ金魚』という奇妙なタイトルが印刷されたプリントを子ども達に配りました。そして黒板に校長先生、ねこやまさん、うまかわさんをはじめとした個性的な登場人物のイラストを張り、それぞれの特徴を書きだします。子ども達と保護者が興味津々、見つめます。

すると先生が『消えたパンダ金魚』という物語を勢いよくドラマッチックに読み上げ始めました。小学校を舞台にしたパンダ金魚という珍しい金魚をめぐるミステリです。

消えたパンダ金魚を盗んだ犯人が分かる前までを先生が読み終わると、子ども達はグループに分かれ、誰が犯人か、そしてなぜそう思うのかを話しあいはじめました。大人しい性格の娘も犯人は「うまかわさんだよ」、「ううん、ねこやまさんだよ、だって・・・・・・」などと他の子達と意見を闘わせています。

そして途中先生が「コンパクトが鍵になっています」、「このコンパクトを使って暗号を読んでみて下さい」、「暗号を鏡で映してごらん・・・・・・」などと、子ども達の推理を促します。

各班、予想した犯人を発表します。1班発表する度に、子ども達は「違うよ、だって・・・・・・」などと、活発に発言します。

先生が、物語の最後の部分を読み上げると、犯人とその動機、犯行の手口、なぜそう推理できるのか根拠がはっきりしました。子ども達はなるほど、と最後まで目を輝かせていました。

子ども達が互いに協力し、異なる意見をぶつけ、すりあわせ、考えを生み出す様を目の当たりにした私は、驚きました。

そして授業の終わりに先生が、『消えたパンダ金魚』は仮説社から出ている朝の連続小説―毎日5分の読みがたりに収められている短編で、作者の杉山亮さんは学級文庫にある『もしかしたら名探偵』のシリーズを書いている杉山さんだと言って、子ども達に本を見せました。
  

参考1:『自分で考えよう: 世界を知るための哲学入門http://reikohidani.net/2473/

参考2:Benesse教育情報サイト「アクティブ・ラーニング」、実は既に行われている?

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2.子育て支援と絵本

子育て支援センターで、読み聞かせグループの方達の読み聞かせを聞き、感動しました。

0歳~3歳ぐらいの子ども達がママ達の膝にのせられ、興味津々見つめる中、グループの方達はおもちゃの鍋と食べもの、包丁、まな板を使って、カレーライスの歌を歌いながら、カレーをつくる真似をしました。ママ達が歌に合わせて子ども達の体を優しく揺らします。

次にグループの人が『いいおかお (松谷みよ子 あかちゃんの本)』(童心社)の絵本を読み聞かせた後、支援センターの部屋の端から真ん中に移動しながら、

「ふうちゃんが ひとりで いいおかおを していました」と言うと、もう1人が端から真ん中に移動しながら、「そこへ いいおかお みせてって ねこがきました」と言い、また次の人が移動し・・・・・・と劇のように物語を展開させていきます。

そしてラストの「ビスケットをくれました。ああ おいしい おいしい おいしいはどこ」でほっこり場が和んだ後、ビスケットのおもちゃをポシェットから出してきて、子ども達一人一人に、おいしい、おいしいと食べる真似をさせました。

とっても楽しい読み聞かせでした。

その後、グループの1人が、最近のお母さんはどんな絵本を読んでいるのか、とママ達に聞き、みんなで絵本の話で盛り上がりました。読み聞かせグループの方が、昔からある定番の絵本は知っているけれど、新しい絵本のことはあまり知らなくて、もっと知りたいとおっしゃっていました。こういう人達に新しい絵本を紹介するセミナーや会があればいいのにな、と思うとともに、ノルウェーの読書推進プロジェクト、『読書の種』のことを思い出しました。

http://reikohidani.net/2344/

ノルウェーの読書推進プロジェクト『読書の種』(Lesefrø)、『新・読書の種』(Ny-Lesefrø)

『読書の種』、(Lesefrø)『新・読書の種』(Ny-Lesefrø)とは?
ノルウェーで2008年~2010年にスタバンゲル大学読書研究センターの協力で、読書推進の国家プロジェクト『読書の種』(Lesefrø)が行われた。またオスロのDeichmanske図書館とオスロ南部、Søndre Nordstrand地域の保育事業局が2012年に『新・読書の種』(Ny-Lesefrø)をスタートさせたり、オスロ東部Stovner地域でも『読書の種』事業が行われたり、ベルゲンやトルガでも同様のプロジェクトが行われたり(https://www.bergen.kommune.no/aktuelt/tema/omradesatsing/9398/article-127115)と広がりを見せている。

Søndre Nordstrand地域の『新・読書の種』プロジェクト・サイト:http://lesefro.blogspot.jp/search/label/nyeLESEFR%C3%98%20-%20Hva%20er%20det%3F

ビデオはDeichmanske図書館とオスロ東部Stovner地域の『読書の種』事業の様子

上のビデオでは保育士がこの図書館の本を保育時間に子ども達に読み聞かせたり、子どもが自分で読んだり、保護者が貸りて、家庭での読み聞かせに用いたりすることができるとされている。

またipadの貸し出しも行っている。

Deichmanske図書館は保育所で本についての情報提供も行い、また半年に一度、本の入れ換えを行う(入れ換え頻度は各地域、プロジェクトにより異なるようだ)。

またブック・フェスティバルという子ども向けのイベント(上の動画03:38~ 歌を歌ったり、読み聞かせを行ったりするイベント)や

保育所関係者向けのセミナーも行っている(動画04:59~)。

また小学校入学を控えた子ども達と保護者を図書館に招待し、本についての情報や図書館の利用法などを案内するイベントも開催している(動画05:48~)。

公共図書館と保育所が連携し、子どもの読書推進活動を行うと同時に、保護者や保育士にも読書の素晴らしさ、重要性を伝えるのはとても大切なことだ。

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☆『文化を育むノルウェーの図書館』(新評論)によると、ノルウェーではこのプロジェクトに限らず、公共図書館による保育所への図書サービスに力を入れているよう。またほとんどの図書館の司書が、保育園を巡回し、定期的に図書を配本しているそうだ。

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日本でも以下のような事業があるよう。

「子供の好きな本を届けます」図書館が幼稚園、保育園に貸出サービス開始 大阪・大東市 http://www.sankei.com/west/news/140424/wst1404240038-n1.html

しらさわ夢図書館ドリーム文庫 http://yume-lib.city.motomiya.lg.jp/renkeijigyou.html

講談社本とあそぼう全国訪問おはなし隊 http://www.kodansha.co.jp/ohanashi/