『フラワー・ファンタジー -すてきな野の花いっぱいのぬり絵-』 ニナ・レット 著、パイ インターナショナル
http://pie.co.jp/search/detail.php?ID=4793
北欧語(デンマーク語、ノルウェー語、スウェーデン語)翻訳者 枇谷 玲子(ひだに れいこ)HP
大人になると時に思ったことを率直に言えず口をつぐまざるをえないことがあります。この作品では、子どもが主人公だからこそ大人が言えないこと、忘れてしまったことを鋭くえぐり出せているように思えます。ウッラとベンディックは市役所の町づくりの担当者に、大人たちがカーテンや窓をしめきって、
ぼくのまちをつくろう! 作:スギヤマ カナヨ出版社:理論社 |
ぼくたちのまちづくり 4 楽しいまちなみをつくる 出版社:岩波書店 |
『いとしいあなた』(Barnet mitt)(原題直訳:わたしの子ども)、ノルウェーMagikon社、56ページ
2016年3月9日と10日にノルウェー大使館で、ノルウェー文学セミナーが行われました。
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9日のノルウェーの児童文学に関するセッションで、「ノルウェーの現代絵本 日本との比較」という題目で発表をされたスヴァイン・ストルクセンさんの営む絵本出版社Magikon社の作品のうち、特に素晴らしいと思った、『いとしいあなた』(Barnet mitt)について書きたいと思います。
『いとしいあなた』(Barnet mitt)の文章を書いたヒルデ・ハーゲルップ(Hilde Hagerup)さんは、ノルウェーを代表する作家、クラウス・ハーゲルップ(Klaus Hagerup)さんの娘さんです。クラウス・ハーゲルップ(Klaus Hagerup)さんの作品のうち、日本語に翻訳されているのは今のところ『ビッビ・ボッケンのふしぎ図書館』(『ソフィーの世界』のヨースタイン・ゴルデルと共著)だけですが、他にも『マルクスとダイアナ』、『空よりも高く』など素晴らしい作品をたくさん描いています。
ヒルデさんも、ノルウェーを代表する児童書作家になりつつあります。
http://www.norway.org.tr/News_and_events/Cultural-Events/Success-for-Norwegian-literature-in-Turkey/#.Vvkqq_mLQ9Y(ノルウェー文学普及財団NORLA とともにトルコで児童書のプレゼンテーションを行ったようです)
http://norla.no/nb/nyheter/nyheter-fra-norla/m%C3%A5nedens-oversetter-eva-dimitrova-kaneva(NORLAの翻訳者賞を獲得したブルガリアの翻訳者さんが今までで一番感動した作品に、ヒルデさんのYA、『タンポポの歌』[Løvetannsang] を挙げています)
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今回ご紹介する『いとしいあなた』(Barnet mitt)は、ヒルデさんが書いた文章に、今回プレゼンテーションを行ったスヴァインさんの奥様、クリスティン・ローシフテ(Kristin Roskifte)さんがイラストをつけた作品です。現地での読者対象は大人だそうです。子どもを持つことのすばらしさを謳った、プレゼントにも最適な1冊です。
類書には、以下の作品が挙げられるかもしれません。
ちいさなあなたへ 作:アリスン・マギー / 絵:ピーター・レイノルズ / 訳:なかがわ ちひろ出版社:主婦の友社 |
おかあさんがおかあさんになった日 作・絵:長野 ヒデ子出版社:童心社 |
ラヴ・ユー・フォーエバー 作:ロバート・マンチ / 絵:梅田 俊作 / 訳:乃木 りか出版社:岩崎書店 |
はやくはやくっていわないで 作:益田 ミリ / 絵:平澤 一平出版社:ミシマ社 |
今日 訳:伊藤比呂美 / 画:下田昌克出版社:福音館書店 |
ママが おうちに かえってくる! 作:ケイト・バンクス / 絵:トメク・ボガツキ / 訳:木坂 涼出版社:講談社 |
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(要約)
夜中うなされているあなたを、わたしは後ろからぎゅっと抱きしめて、耳元で子守歌を歌った。疲れで頭がぼうっとする。あなたの寝息が穏やかになったのを確かめると、わたしはまた眠りについた。
朝がきた。わたしはパンを焼き、牛乳をコップに注ぎ、りんごを切りながら、あなたの声に耳を傾けた。「ねえ、ママ。ジャンプしてみてよ。ジャンプしている時のママって、すっごくおもしろいんだもん」重い足で、私は何とかジャンプする。するとあなたはきゃっきゃっとうれしそうに手を叩いた。するとその手がコップにぶつかり、牛乳がこぼれてしまった。キッチンペーパーではとても吸いきれない。ぞうきんをとりに行かなくちゃ。でも足が重くて、なかなか動けない。
着替え。「ちくちくするからイヤ」と言うあなたに、わたしは無理やりセーターを着せてしまったわ。するとやっぱりあなたは泣き出してしまった。確かにセーターは、ちくちくするわね。わたしはセーターを脱がせると、あなたをひざにのせ、泣き止むのをじっと待った。「保育園に行く?」と私は聞いた。でも本当はそんなこと、聞いちゃダメよね。決めるのは、大人なんだから。行かないって言われたところで、どうしようもないもの。質問をするなら、はっきりと分かりやすく。
ようやく家を出る。あなたの手を引き、階段を下りながら、わたしはふと考えた。こんな風に毎日、手を引っ張られて、あなたはどんな気持ちなんだろう? 痛い時だってあるわよね。
道端で野イチゴを見つけ、嬉しそうに摘もうとするあなた。暖かく見守ってやりたいのに、ついつい時計に目がいってしまう。
ようやく保育園に着いた。あなたの冷たい手を握りしめながら、爪に砂が入りこんでいるのに気付いて、しまったと思う。おまけに今日、森に散歩に行くのに、ココアを持ってこなくてはいけなかったのに、忘れてしまった。「毎日ちゃんと掲示板を確認してくださいね」と先生。泣き出しそうになるあなた。すると別の先生が、「今からココアを沸かすから大丈夫。さあ、お母さん、安心して仕事に行ってください」と言って、優しくほほえみかけてくれた。でも私は自分が情けなくてしかたがなかった。
仕事場でその日、会議があったけれど、私は物思いにふけってしまった。私はあなたからどれだけのものを奪ってきたんだろう? あいまいな質問をしたり、朝、あなたをせかしたり、言うことを聞かせたいあまり、甘いものをあげてごまかしたり、公園にろくにつれていけなかったりすることで。きっとたくさんのものを奪ってきたんだわ。数えきれないぐらい、たくさんのものを。
お昼休み、私は食堂でコーヒーを買うと、窓際のテーブルに腰かけ、町を見下ろした。人、人、人。肩車されて、お父さんの肩の上から世界を見下ろす子ども。あなたもいつか私の背を追い抜いてしまうかもしれないわね。そして私はおばあさんになる。今下にいるお年よりみたいに腰がまがり、のろのろと横断歩道を渡るようになるんだわ。
仕事が終わると、保育園にあなたを迎えに行く。いつもより早く着いたのに、あなたはもう門の前で待っていた。私はあなたを抱き上げ、髪にキスをした。「今日のお散歩はどうだったの? 森に行ったの?」でもあなたは答えない。それはあなたの秘密なんでしょうね。でも、私は知りたい。あなたが何を考えているのか。私が母親として十分なことができているのか。
帰り道、公園によった。「かけっこしよう」とせがむあなた。でも私は疲れて走る気がしなかった。するとあなたは泣き出した。私はしゃがんであなたと目線を合わせた。子どもの目。私はあなたが赤ちゃんの時のことを思い出した。もっと色々なことをしてあげられたらよかったのにって、後悔ばかりが押し寄せてくる。あなたはもう4歳になってしまった。「かけっこしようか」わたしが言うと、あなたは首を横に振った。「おうちに帰りたい」
家に帰ったわたしたちは、レゴ・ブロックでお城を作り、幼児番組を観てから、お風呂に入った。わたしがシャンプーの泡に息を吹きかけて飛ばすと、あなたはうれしそうに笑った。
夕飯を食べ終えると、あなたを寝かしつける。あなたはなかなか寝ようとしない。時々、わたしは怖い夢を見る。朝起きたらあなたがいなくなっていたって夢。この4年の間に、私の人生の中心になったあなたが、ある日突然いなくなったら、わたしはどうなってしまうんだろう? どうしてか分からないけれど、耐えられないと思った。
あなたの寝息が聞こえてきた。あなたはくまのぬいぐるみを抱え、眠っている。あなたのほっぺたは赤い。あなたは世界一うつくしい子。世界一すてきな子。面白くて、頭がよくて、勇敢で。あなたはわたしの子ども。わたしはあなたのお母さん。
体を縮こまらせて眠るあなたを、後ろから抱きしめる。あなたがお腹にいた時みたいね。あの時、わたしはあなたで、あなたは私だった。あの時、すべてがはじまったのよね。わたしとあなたの世界が。あなたは眠っている。いとしいあなた。
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Magikon社のスヴァインさんは、ノルウェー文学セミナーで、「子どもをお腹の中で育て、産み、母乳をあげるので、どうしても母親の方が子どもとの距離が近くなりがちだけれど、この絵本の主人公は別にお父さんだっていいんですよ」とおっしゃっていました。「日本では母親ばかりが、仕事と子どもどちらをとるかの選択に迫られることが多いそうですが、そんなの選べるわけありませんよ。不公平ですよ」ともおっしゃっていました。
スヴァインさんが今回、日本に行くと聞いたお子さん達は、「どうしてパパ、日本に行くの? 行かないで」と言ってきたそうです。今回は奥さんに子どもを任せて、日本に来ることにしたそうですが、日本滞在中、美しい景色を目にする度、子ども達や奥様にも見せてあげたい、と感じ、次回日本に来る時は、絶対に家族も連れてきてあげよう、と心に決めたそうです。
子育ての大変さだけでなく、喜びをも夫婦で分かち合う。子どもの成長をともに見守る。美しいものを家族みんなで見て、嬉しい気持ちを共有する。そんな家族の形があるのですね。
スヴァインさんは、毎年ボローニャ・ブックフェアに参加され、人との出会いを大切にされているそうです。今回のボローニャにも参加されるそう。「メールでPDFを送れば済むこのITの時代に、世界中から絵本関係者が大量の本を持ってブックフェアにやって来る。ひどく原始的なやり方だけど、やっぱり人は直接顔を合わせて話がしたいんですね」とおっしゃって、瞳を輝かせる姿が印象的でした。
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(性別役割分業か、共働きか?)
これから私達日本人の家族の形はどのように変化していくのでしょう? 私達は岐路に立たされています。
NHK『オイコノミア』「幸せですか⁉ 共働きの経済学」 http://mamari.jp/16337
出典:http://mamari.jp/item/820659
出典:http://mamari.jp/item/826024
出典:http://otona-no-senaka.org/column/1087/
出典:http://berd.benesse.jp/berd/center/open/berd/backnumber/2008_16/fea_mutou_01.html
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=5741(白河桃子×古市憲寿 対談(上) もっと「お母さん」を大事にしてもいい)
上の作品とは対極の意見もあります。北欧のやり方が何でも正しいとは限りません。議論を重ねた上で、私達に一番あった形を選択していければ、どんなにいいかと願わずにはおれません。
ノルウェーの保育園事情 http://mainichi.jp/articles/20160330/dde/012/100/061000c(保育園増やせば解決か 「子育ては母」日本、「夫婦で育児」ノルウェーを比較)
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その他ノルウェー文学セミナーで紹介されていた作品
(児童書)
http://norla.no/nb/focus_titles/17-Tokyo-2016-BU.pdf
2015年夏、デンマークのロスキレで開かれた翻訳者向けのサマースクールに参加しました。
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写真出典:『デンマーク語で四季を読む』より
ピア・ユール(Pia Juul)さんのワークショップに参加しました。ピアさんは訳者から作品についてたくさん質問がきた時、はじめはその訳者がデンマーク語を分からないのではないか、と心配になったけれど、やりとりを続けているうちに、段々と、不明点を細かく質問するのはその訳者のスタイルなんだな、と思うようになった、とお話されていました。
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写真出典:『デンマーク語で四季を読む』より
ノーベル文学賞の候補にもなったインガー・クレステンスン(Inger Christensen)の『蝶の谷』というソネットの翻訳ワークショップにも参加しました。イタリア語や英語に翻訳した際には、ソネットの形式を何とか保つことができるようでしたが、日本語では到底不可能だと思いました。私も日本語に訳した訳文を読み上げたのですが、読み終わった後、「長くない?」、「何か足したんじゃないの?」と皆、目が点。ヨーロッパ言語と構造がかなり異なる日本語について、他の国の訳者さんと議論するのは難しいと思いました。
ブルガリア語の翻訳者さんが、「ブルガリア語とデンマーク語はかけ離れているので、ソネットとして訳すのは難しい、デンマーク語からブルガリア語に翻訳するのは文章を書き直すのに近い部分もあるので、翻訳者は作家のように文章が上手でなければいけない」とおっしゃっていたのですが、イタリア語の翻訳者さんは「全然そうは思わない」とのこと。言語の違い、各翻訳者の考え方の違いが垣間見られた議論でした。
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また警察博物館の方がいらして、デンマークの警察組織についてのお話もしてくださいました。警察の階級についてや、警察署内の男性警官、女性警官の立場について質問が出ました。
下は博物館の様子です。
デンマークの警察に関する資料もダウンロードできます。
ちなみにお隣ノルウェーの警察についてはこちらのサイトが役に立つかもしれません。
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また重訳についても話題に挙がりました。イタリアでは特にノンフィクションは、純文学ほどは原文のニュアンスが大事とはされておらず、重訳が多いのが現状だという話も出ました。
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イタリアでは北欧料理のレシピ本が大変人気があるというお話もうかがうことができました。翻訳者の1人でデンマーク人とイタリア人のダブルの方がこんな本を書いていて、イタリアで人気だそうです。
画像出典(Kilder):http://www.palermotoday.it/eventi/cultura/presentazione-libro-eva-valvo-20-dicembre-2014.html
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ノルウェーの作品、『イーダ』のフランス語翻訳者さんともお話できました。フランスの博物館でIDAの展覧会が開かれるかもしれなかったそうですが、予算の問題で実現できなかったものの、訳書の評判は大変よく、2冊目が出され、さらにフランスの読者に向けて著者が書き下ろした3冊目の翻訳作業が進行中とのことでした。
画像出典:http://www.sogensha.co.jp/booklist.php?act=details&ISBN_5=76063、amazon.fr
フランス語の訳者さんについての記事はこちら→http://www.norvege.no/News_and_events/Culture/literature/Le-livre–Ida-lextraordinaire-histoire-dun-primate-vieux-de-47-millions-dannees–recoit-le-prix–La-Science-se-Livre-/#.VvdrAvmLQ9Y
フランス語訳者さんが訳された作品一覧→http://www.amazon.fr/s/ref=sr_st_review-rank?rh=n%3A301061%2Cp_27%3AJean-Baptiste+Coursaud&qid=1459055309&__mk_fr_FR=%C3%85M%C3%85Z%C3%95%C3%91&sort=review-rank
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「出版社から頼まれた作品を心から好きだと思えない場合、仕事を受けるべきか?」、「翻訳者なのに通訳を頼まれることがあるが、受けるか、受けないか?」いったテーマについても話題に挙がりました。前者については、かなりの冊数を翻訳している翻訳者さんですら毎回悩むのだそうです。後者については、頼まれて何度かやったけれど、翻訳と通訳は別物だからもうやりたくない、という方もいらっしゃいました。
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イタリアの翻訳者さんからは、最近デンマークの作品で面白い本がなかなか見つからないのだけれど、ノルウェーの作家、ヨー・ネスビュは表現、言葉の使い方が大変素晴らしく(もちろんミステリで一番大事なのはプロットだけれど)、そういった表現の素晴らしさに魅せられる、彼の作品を訳すのは翻訳者として大きな喜びだ、というお話をうかがうことができました。
ヨー・ネスビュの英訳はとても質が高いという話もうかがいました。英語翻訳者さん、Don Bartlettさんはとても有能な翻訳者さんとして知られているようで、ノルウェーのラジオのインタビューでお話しているのを聞く限りはデンマーク語もノルウェー語も非常に堪能(発するのはデンマーク語)で、文学的な深いディスカッションも全く言いよどむことなく行える語学力の持ち主のようです。彼は翻訳者の間でも北欧の作家さんの間でも有名で、対応しきれないぐらい仕事が殺到しているそうです。
Donさんインタビュー:http://eurocrime.blogspot.jp/2009/11/don-bartlett-interview-of-translator_05.html
http://www.theparisreview.org/blog/2015/04/28/translating-knausgaard-an-interview-with-don-bartlett/
https://thebooktrail.wordpress.com/2015/06/14/meet-the-translator-the-word-wizard-don-bartlett/)
ヨー・ネスビュの作品を翻訳する喜びや彼の言葉の素晴らしさについては、ブルガリアの翻訳者さんもインタビューで存分に語ってらっしゃいます。
Don BartlettさんはノルウェーのKjell Ola Dahlさんに注目されていて、NORLAの翻訳者向けのホテルに滞在された際、Kjellさんの作品に出てくる第二次世界大戦下のレジスタンスのことや、Scandinavian Star号沈没事件について調査をおこなったようです。
http://norla.no/nb/nyheter/nyheter-fra-norla/norlas-oversetterhotell-suksessen-fortsetter
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デンマークの文化、歴史を知るための遠足もありました。言葉だけでなくデンマークの文化、歴史を知った上で翻訳に取り組んでほしいというデンマーク文化庁のみなさんの思いが伝わってきました。
http://www.kunst.dk/kunstomraader/litteratur/initiativer/sommerskole-for-oversaettere-2015/
遠足で歩きながらノルウェーのミステリ作家、アンネ・ホルト作品のポーランド語翻訳者の方ともお話することができました。アンネ・ホルトは2012年、ポーランドで” the Great Calibre Award of Honor”という大きなミステリ賞をとっているようです。ベテランっぽい風格漂う方だったのですが、それもそのはず。クナウスゴールの『わが闘争』をはじめ、ノルウェー語、デンマーク語作品のポーランド語訳の大半を彼女が手がけているのだと後で別のポーランド語の翻訳者さんから教えていただきました。私はその時丁度アンネ・ホルトの作品を訳していたところだったので、脚注についてなど、ご助言をいただけてとても嬉しかったです。
http://www.literaturajestsexy.pl/knausgaard-w-cos-trafil-z-iwona-zimnicka-tlumaczka-jezyka-norweskiego-autorka-przekladu-mojej-walki-powiesci-1-karla-ove-knausgaarda-rozmawia-jakub-winiarski/
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エージェントと翻訳者のSpeeddatingというのも行われました。イタリア語チーム、ポーランド・チーム、英語圏チーム・・・・・・に分かれて、各エージェントが待つテーブルを回ります。日本から唯一の参加者の私は英語圏チームに混ぜてもらいました。英語圏チームに対するエージェントのプレゼンテーションの熱の入りようときたら……。英語に翻訳されると、他の国に紹介される可能性が開けるので、当然なのかもしれません。また作品の試訳やレジュメの作成の仕事をしている方もいるようで、英語圏の翻訳者とエージェントの関係はかなり密なのだな、と感じました。
それにしても感心させられたのは、英語圏の訳者さん達同士がしゃべる時も全く英語を発しなかったこと。デンマーク語を皆さん貫いていました。また北欧語→英語の訳者さんがたくさんいることにも驚かされました。競争も激しいし、面白そうな作品があっても、ライバル同士だからか、皆、口に出して言わないんだな、と思いました。
後で英国の訳者さんに日本では英語に権利が売れているかどうかも出版社さんは判断の材料の1つにするとお話したところ、英語圏の出版社は、ドイツで権利が売れているかを参考にするんだよ、と教えていただきました。
お土産に本ももらえました。
今回紹介された本の中で一番、翻訳者さんの関心を惹きつけていたのは、ノンフィクション、『海の本』(Havboka)という作品だったと思います。
でもこれ、実はノルウェーの本なのです。デンマーク語とノルウェー語の翻訳両方手掛けている人も多いので、デンマークのセミナーなのに、ノルウェーの作品も紹介したのでしょう。
頑張れ、デンマーク文学! と心の中で叫ばずにはいられませんでした。今デンマークの作品で一番世界的に成功しているのは、やっぱり『特捜部Q』のユッシー・アドラー・オールセンのようで、主催者の方達も「皆、ユッシー、ユッシーばっかり言うけど、他にもデンマークの文学は一杯あるわよ」とおっしゃっていました。
あとこの本も注目されていました。
画像出典(Kilder):http://ecx.images-amazon.com/images/I/61HGkW8w4hL._SX258_BO1,204,203,200_.jpg
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私が特に熱意を感じたのは、Informations Forlag社のMette Jokumsenさん(実用書を多く出している出版社さんです)、Copenhagen Literary Agencyの方々でした。
Metteさんからは帰国後のメールのやりとりでデンマークの育児書の書き手で一番有名なのは、Jesper Juulさんだと教えていただきました。
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Metteさんのプレゼンテーション
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辞書の使い方についてのセミナーもありました。
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デンマークの住宅事情についての講演。
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児童書についての講演。
デンマークの児童書作家で一番存在感があるのはやはり、『おじいちゃんがおばけになったわけ』、『ママ!』のキム・フォップス・オーケソンさんだと思います。
未訳の『にちようび』はいつか日本に紹介できたら、と思っています。
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夜の食事会では、スコットランドやポーランド、ロシア、ブルガリアの翻訳者さんなどとお話することができました。そこでは子育てと仕事の両立や、痛い時に各国でどんな風に反応するのか(私が日本でも「痛い!」と言う時もあるけれど、デンマーク人みたいに「アウ!」と声を上げることは人によるけれど、少なくて、まわりの人に心配もかけたくないから、やや抑え気味かもしれない、と言ったら、「それは日本の侍が切腹をする時に、声を上げないのと似ているね。それはサムライ・スピリットだよ」と言われて面白いな、と思いました)といったことを話しました。
ベテランの翻訳者に仕事が集中してしまい、若手がチャンスを得るのはとても難しい(どの国も同じなのですね)という若い翻訳者を、別の国の翻訳者さんが自分からやりたいとアピールして働きかけるんだよ、と励ます姿も印象的でした。
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夜にはデンマークの夏至祭を体験できました。
https://scontent.cdninstagram.com/hphotos-xaf1/t51.2885-15/s320x320/e15/11374785_1597699957155195_475269226_n.jpg
詩を読み上げるデンマークの作家Claus Beck Nielsenさん。彼は奥さんもお子さんもいらしたのですが、女性として生きたいという自分の気持ちに正直に生きることを選択したようです。しかしマイナンバーによって、もとの性別が分かってしまい、そのことが社会的にも問題になっているのだそうです。
ノルウェーで以前開かれたセミナーでご一緒させていただいた翻訳者さんに、「この間も来ていたよね。言語を学ぶ一番の方法は、現地に来て、その言葉に触れることさ。これでいいんだよ」と声をかけてもらえました。アジアから唯一人、しかもデンマークのセミナーに初参加の私はずっと緊張しっぱなしだったのですが、その言葉を聞いて、勇気を出して参加してよかったな、と思えました。
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次回は2016年11月11日~13日に開かれるBogforumという本の見本市の晩にまた食事会を行うかもしれないそうですが、はっきりとしたことはまだ分からないようです。招待制ではなく、各自申請をする形のよう。日本から他にもデンマーク文学の翻訳に関心がある方が参加されるならぜひご一緒できたら嬉しいです(スウェーデン語、ノルウェー語話者の訳者さんもいましたので、そちらがご専門の方もぜひ☺)。
プロクトル博士のおなら薬(Doktor Proktors Prompepulver)、ヨー・ネスビュ/ジョー・ネスボ(Jo Nesbø/Jo Nesbo)
(Kilder:画像出典エージェントサイト:http://www.salomonssonagency.se/books/doktor-proktors-prompepulver)
作者のミステリ『スノーマン』が2017年10月13日に全米公開される。
作者インタビュー:
子どもに向けて書く際も、大人に向けて書く際も、「良いお話」が共通して求められる、と語られている。作者は娘さんに物語をつくって読み聞かせをしたことが何度もあるらしく、「相手が子どもだろうと、つまらなければつまらないとはっきりと態度で示される」と述べている。
http://www.youtube.com/watch?v=3582bgy7Abk&feature=channel
作者は子どもの頃、ロアルド・ダールの所有するアパートに暮らしていて、夏になるとそのアパートの下の階にダールが滞在していたこと(ダールの両親はノルウェー人。ダールというのはいかにもノルウェー人という苗字らしい)、また彼の作品の大ファンであることなどが述べられている。
CMの映像:
http://gu.com/p/3pcy2/stw(英語ラジオ)では、児童書を書く方がミステリを書くよりも楽しい。ミステリでは様々な要素をまとめなくてはならず、書いていると、オーケストラの指揮者になったような気分になる、と述べている。
(概要、あらすじ)
(ミステリ作家に児童書が書けるのか?)
http://www.dagbladet.no/2016/03/12/kultur/barnebok/litteratur/bok/bildebok/43330807/
上の新聞記事では、北欧のミステリ作家には児童書も書く作家が多くいるが、それは可能なのか議論されている。確かにJo Nesbø、Jørn Lier Horst、Tom Egeland、Tom Kristensen、Unni Lindell、Knut Faldbakken(ノルウェー)、Camilla Läckberg(スウェーデン) 、Yrsa Sigurðardóttir(アイスランド)などのミステリ作家が児童書を書いている。記事では、ミステリ作家は編集者からの声かけで子ども向けのミステリを書くパターンが多い、それはミステリ作家がプロットを組むのがうまく、またミステリというのが先へ先へと読者を誘うのに適したジャンルであるからだ、と書かれている。
ある批評家が、ミステリ作家が児童書を書くのは読者を若いうちに取り込んで、将来自分のミステリの読者を増やそうという下心があるのではないか、ミステリ作家になってからは、児童書をろくに読んでいないのに、子どもの頃の記憶を頼りに児童書を書く、なので彼らの児童ミステリは古臭い、と批判した。
サイト運営者が読んだことがあるのは、Jørn Lier Horst氏のYA、CLUEシリーズと
(画像出典 Kilder:http://norla.no/nb/books/345)
『探偵事務所NO.2』(Detektivbyrå nr. 2)シリーズ、
(画像出典 Kilder: http://www.gyldendal.no/Barn-og-ungdom/6-9-aar/Operasjon-Solnedgang)
Unni Lindellの『おばけのネッラ』(Nifse Nella)シリーズ、
Knut Faldbakkenの『くまのバルデマール―ぼくって、サイコー!』(Baldemar, en fortreffelig bjørn)、
そして今回のJo Nesbø、『プロクトル博士のおなら薬』だが、個人的に気に入っているのは、最後の2つだ。
前述の批判に対し、作家達は反論。お金のために書いているわけではない。大人向けのものを書いたほうが、より収入は見込める。子どもに読書の楽しみを伝えたいなど、きちんとした動機を持ち、真剣に書いているのだ、と。子ども達は吸血鬼やモンスターなど怖いものが好きだ。でもこの世の中で実際起きうる出来事にも、恐ろしいものはたくさんある。子ども向けのミステリは子どもの世界を広げるものだ、と記事には書かれている。
ブログ管理者が思ったのは、そのジャンルにはジャンルの言葉づかい、描き方があるのではないか、ということだ。児童書だけに取り組んでいる人、児童書を中心に読んでいる人が、ミステリの作家が児童書を書いているのを見ると、自分達の畑を土足で踏み荒らされたような気持ちになるのも無理はない。
なので、ミステリの作家が児童書を書く際、批判はある程度覚悟した方がよいだろう。そしてそれに立ち向かうには、実際によい作品を書くしか道はないのではないかと思えた。そうすれば批判の声は自然と止むだろう。
事実、今回の批判記事には、『プロクトル博士のおなら薬』は悪例として挙がっていなかった。なぜなら、この作品は面白いからだ。例えヨー・ネスビュが”スカンジナビアのミステリ王”と呼ばれていようとも。
『パンやのブラウンさん』(Bakermester Brun)、ヨーコランド(YOKOLAND)、ワールドライブラリー
(画像出典:http://www.worldlibrary.jp/library/2045)
<ヨーコランドさん、またはユニットの一人、エスペンさんの作品>
(細菌についての知識読み物)
Diplom Årets vakreste Bøker 2014 – Nysgjerrig på bakterier from Grafill on Vimeo.
http://reikohidani.net/1611/(橋についての知識読み物)
オーサ・メンデル=ハートヴィッグ/文
アネ・グスタフソン/絵
2015年12月 光村教育図書
(画像出典)http://mitsumura-kyouiku.co.jp/ehon/176.html
樹木の生態について千葉県立博物館、富山県中央植物園、筑波実験植物園のみなさんにお知恵をお借りしました。改めましてお礼申し上げます。
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(5年生のクラスで『だいすきなマロニエの木』の読み聞かせを行いました)
今日はスウェーデンの絵本を紹介したいと思います。みなさんはスウェーデンがどこにあるか知っていますか?
(1人だけ手を挙げてくれた子がいたので、『MAPS 新・世界図絵』徳間書店の4ページ、5ページを開いてどこか指さしてもらいました。)
正解です。今度はスウェーデンだけの地図を見てみましょう。
(『マップス: 新・世界図絵 (児童書)』の10ページ、11ページのスウェーデンの地図を開いて見せました)
スウェーデンという国がどんな国か知っている人はいますか?
(手が挙がりませんでした)
スウェーデンはドイツやフランスなどよりも北にある国で、南北に細長い形をしています。特に北部はとても寒く、雪がたくさん降るそうです。自然豊かな国で、スウェーデンの人達はこの地図にあるように雪山でスキーをしたり、川でラフティングをしたり、山でハイキングやサイクリングをしたりと、自然と親しみながら暮らしています。日本と気候が違うので、日本ではあまり見ない植物もあるようです。
今回、紹介するのは『だいすきなマロニエの木』という本です。マロニエの木というのはスウェーデンなどのヨーロッパの国々をはじめ世界中で広く栽培されている木で、日本でも街路樹として時々植えられています。ただ日本ではこのマロニエの仲間のトチノキの方が多く見られます。栃木県の県の木はこのトチノキで、栃木の栃は、このトチノキからきているそうです。
マロニエの木はどんな木なんでしょう?
(『マロニエ (しょくぶつ・すくすくずかん)』を開きました)
スウェーデンではこのマロニエの木がたくさん生えているので、実を拾って遊び道具にしたり、枝に吊るしたブランコに乗って遊んだりと子ども達に親しまれているそうです。(マロニエがどんな木か、写真絵本をめくりながら紹介しました)
みなさんの中で木登りをしたことがある子はいますか?
(5、6人手を挙げてくれました。なぜか男の子が多かったです)
スウェーデンではこのマロニエの木に登る子も多いようです。
では、絵本を読んでみましょう。
(本を読みだしました)
●第2場面 「ソフトクリームに にた 白い 花が さく」、「かざぐるまみたいな こい みどりいろの はっぱが しげる」、「きみどりいろをした とげとげの 実が できる」、「ちゃいろくて つるつるした マロニエの 子ども」というところでは、女の子がつくっているマロニエの飾りがそれぞれどれに対応しているのか指さしながら示しました。
●第3場面
「ヤマネコヤナギ」と「カバノキ」がどれを指しているのか鉢植えの枝を指さしながら示しました。
●第4場面
「ゼラニウム」、「かたむいた サボテン」もやや絵が小さいので、どこにあるのか指さしました。(指さしはあまりやりすぎるとよくないようですが……)
●第8場面
木に登る場面は、導入で木登りの話をしていたのもあって、興味を示してくれた子が多かったようです。
●第9場面
枝からさげられたブランコが出てくる場面も、最初にお話していたのもあり、興味を持ってくれたようです。
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植物の命に関する部分は、スウェーデンの子ども達ほど自然との関わりが多くない日本の子ども達がどこまで実感として理解してくれるのか心配していたのですが、蓋を開けてみると、木登りをしたことがある子がいたり、マロニエの木について興味を持ってくれた子も多く意外でした。この絵本に描かれているマロニエの木を愛し、その命を尊ぶ女の子の気持ちや、命のバトンが引き継がれていくことの不思議さ、大切さを感じてくれた子が少しでもいてくれたらいいな、と思いました。
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(翻訳を終えて)
この絵本の翻訳をきっかけに自分の子どもにも、もっと自然と親しんでほしいと思いようになり、動植物と親しむ機会を増やすようにしました。
ある時お友達と公園に行った時に、枝が折れそうもない頑丈な木を選んで登らせてみました。最初はうちの子もそのお友達も初めての経験だったようで、戸惑い気味だったのですが、登りはじめると楽しくなってきたようで、わいわい、きゃあきゃあ言いながら登ったり降りたりを繰り返していました。
身の回りの自然に今までよりも目がいくようになり、町を歩くのが前より楽しくなりました。
最後に翻訳の機会を与えてくださり、資料集めや訳文の推敲など最後まで情熱をもって導いてくださった光村教育図書編集者の吉崎麻有子様に心よりお礼申し上げます。読み聞かせレポートに書いた栃木県の話や、マロニエの写真絵本についても、吉崎様から情報をいただきました。おかげであたたかみのある作品に仕上がり、とても嬉しく思っております。
また装丁家の森枝雄司様、素敵な装丁、デザイン、書き文字、レイアウトをありがとうございました。
(原書表紙)
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(日本語版表紙)
『RODY/ RASMUS KLUMP (ロディラスムス / クルンプ)【ラスムス クルンプ】ラスムス クルンプ 絵本 はしるベッド はしるベッド –』カーラ ハンセンとヴィルヘルム ハンセン原案、ペア サナーヘーエ文、ヘンリック レア絵、JAMMY
(その他グッズ)
小学校5年生のクラスで以下のようにブックトークを行いました。
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●みなさんは算数は好きですか?
(「好き」と自主的に手を挙げる子がいました。そこで「では好きな子?」「まだ面白さが分からない子?」と聞くとそれぞれクラスの3分の1ぐらいが手を挙げてくれました。先生も授業と関係がある話だからか、とても関心を持ってくれている様子でした)
●ただ算数を勉強して一体将来何の役に立つんだろう? と疑問に思ったことがある人もいるのではないでしょうか?
●その答えが一部載っている本があるので、まず紹介したいと思います。
この本には様々な職業でどんな風に算数や数学(中学校に行くと算数の教科が数学と呼ばれるようになります)が使われているのかが紹介されています。
●たとえばインダストリアルデザイナーという職業のページを見てみましょう。インダストリアルデザイナーとは自動車や鉄道車両、カメラや腕時計、椅子やポット、ロボットなど、様々な工業製品のデザインをする仕事だそうです。この本で紹介されている山中俊治さんは、JR東日本のSUICAの改札機のパネルのデザインなども手掛けているそうです(22ページのパネルの写真を見せる)。では、インダストリアルデザイナーの仕事でどんな風に算数や数学を使うのでしょう?(25ページの携帯電話のデザインの図面を見せながら24ページの山中さんの言葉を読み上げました)山中さんはこう言います。
「製品の美しさや手触りの良さを出すために、ある面にふわっとした丸みをつけたとします。しかしそれを技術者に『こんな感じで』と伝えるだけでは、その通りにモノを形作ってもらうことはできません。そこで私たちは、その丸みというのを数学的な表現にして伝えていきます。半径10cmの円の孤を150度分だけ切り取った曲線にして、といった具合にです(あらかじめ書いてきた図を見せながら)」
●この本には大工さんも出てきます。本にはこんな風に書かれています。(33ページを読み上げました)「大工は腕だけでなく実は頭脳も鍛えなければいけない。その最たるものが、大工道具のひとつの「さしがね」の使い方を学ぶことだ。(おうちの人が大工さんをしている子も何人かいたようで、「さしがね、知ってる」、「うちにある」、と声を上げる子もいました。「さしがねを知っている子?」と聞くと、4分の1ぐらいの子が知っていて、先生も驚いていました)ここで紹介されている本間義仲さんという方はこんな風に話しています。「(さしがねを使いこなせると)屋根の傾きを思い通り出したり、その傾きに沿って屋根の木材を組めるよう、それぞれの辺の長さを考えたりすることができます。丸太からむだなく正方形の角材を切ったり、木材に等分線や垂直二等分線を引くこともできますよ。子どものころは算数や数学が苦手だったのに、大工になったらそれが大事だった。ただ、さしがねは奥が深い道具なので、図形の理屈を学ぶだけでは使いこなせない。職人の世界では、やはり手を動かして体で覚えていくのが基本です」
●最後の大工さんの話で「理屈を学ぶだけではなく、手を動かして体で覚える」という言葉が出てきました。算数の勉強にも当てはまるのではないでしょうか? そこでもう1冊お勧めしたい本があります。
『さわって学べる算数図鑑』(学研)です。
この本では5年生で習う分数や立体の展開図などについて、実際に図を組み立てたりしながら指先と目で学ぶことができます。
(出典:http://livedoor.blogimg.jp/oshinworld/imgs/0/0/00ec1585.jpg)
(出典:http://hon.gakken.jp/img/info/2402_1.jpg)
●最後にちょっと毛色の違う本を紹介させてください。
『算法少女 (ちくま学芸文庫)』(遠藤寛子作、岩崎書店)です。
漫画版も出ています。
この本の主人公は算法(今の算数)が大好きな13歳の江戸時代の少女、千葉あきです。彼女のお父さんは町人で、医師をしていました。お金もうけには疎く、お母さんはお金の工面に苦労していました。古本屋で算法の本を買ってきては、娘のあきに教える夫の姿を見て、お母さんは算法なんてお金になりやしないと気に入らない様子です。その当時は算法は武士や大名など、限られた身分の限られた人たちだけが学べるもので、町人で、しかも女の子のあきには学ぶ必要のないものだ、とお母さんは考えていたのです。当時は今のように小学校、中学校は義務教育ではありませんでした。
ある時、あきは藤田貞次という算法家の弟子の水野三之介の唱えた算法の説の誤りを指摘しました。そのことで、町娘の分際で生意気だ、とあきは目をつけられつつも、算法への情熱を失うことなく、算法道を追及し続け、次第にその能力が周囲に認められるようになります。
この本は私達にこんなことを教えてくれている気がします。算数では答えはいつだってひとつだということです。たとえその答えを出したのが町人であろうと武士であろうと、貧しかろうと豊かであろうと関係なく。正しいものは正しいのです。
●算数関係の面白い本は他にもたくさんあります。
コミック版もあります。
これは漫画しかないのですが、『和算に恋した少女 1(和の巻) (ビッグコミックス)』もお勧めです。
ぜひ読んでみてください。