Reiko Hidani HP

15. ママ!

書影

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『ママ!』キム・フォップス・オーカソン作、高畠那生 、ひさかたチャイルド、2011年
http://www.hisakata.co.jp/book/detail.asp?b=5029(出版社サイト)

あらすじ

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ぼくのママは、くいしんぼうで、太ってる。バスにのっているときも、町をあるいているときも、ぼくははずかしくてしかたない。だってママは、ざせきをひとりでせんりょうしてしまうし、数百メートル先にある屋台のにおいも、かぎつけちゃうんだもん。

そこでぼくは、ママにこうていあんする。
「たまには、にんじんでも 食べたら?」
でもママはゾウみたいに大きな体で、「わたしは、ウサギじゃないのよ。わたしは、ママよ」っていうばかり。

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うんざりしたぼくは、ある日となりにひっこしてきた、きれいな女の人にきいてみた。
「あの、すてきな男の子はいりませんか?」
すると女の人は、じょうけんをだしてきた。
「いいわよ。ただし、わたしのことを、ママってよぶこと」

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ぼくは夕はんのあと、さっそくママってよぼうとした。でも……
「ごちそうさまでした、マジョ、マルチーズ、マッチョマン……」
あれあれ。いったいぼく、どうしちゃったんだろう!?

☆イラストはイラストレーターの高畠さんに許可を得て掲載しています。転載はご遠慮ください。©Nao Takabatake

作家情報

キム・フォップス・オーカソン(Kim Fupz Aakeson)

おじいちゃんがおばけになったわけおじいちゃんがおばけになったわけ絵本ナビ

1958年デンマークのコペンハーゲン生まれ。1982年に漫画を出版した後、1984年に児童文学作家としてもデビュー。映画やラジオ・ドラマや舞台の脚本、大人向けの小説の執筆など、幅広い分野で目覚ましい活躍をしている。

脚本を手がけた映画『パーフェクト・センス』は2012年1月より、日本でも公開(監督はデヴィッド・マッケンジー、主演はユアン・マクレガーとエヴァ・グリーン)。BAFTA(英国アカデミー賞)スコットランド・アワード2011の最優秀映画賞、最優秀監督賞、観客賞にノミネートされる。

1998年にオランダの銀のキス賞を受賞、2001年にドイツ児童文学賞にノミネート、2005年にベルギーのBernard Versele賞を受賞するなど、児童書作家としても世界各国で高い評価を受けている。

邦訳に『おじいちゃんがおばけになったわけ』(あすなろ書房)、『個性を考える わたしの赤ちゃん―ビッグサプライズ』(今人舎)がある。特に前者は話題を呼び、別冊太陽『この絵本が好き! 2006年度版』(平凡社)のアンケートで海外翻訳絵本の第1位に選ばれ、国語の教科書にも掲載された。

画家情報

『ママ!』のイラストを手掛けてくださった高畠那生さんのご紹介です。高畠さんはMOE絵本屋さん大賞2010で『でっこりぼっこり』が、29位に選ばれるなど、とても人気のある作家さんです。

高畠那生(Nao Takabatake)

1978年岐阜県生まれ。絵本作家。

2003年に『ぼく・わたし』(絵本館)で絵本作家デビュー。ユーモアあふれる独自の画風で、子どもから大人まで幅広い層で作品が読まれている。著書多数。

主な作品に、『チーター大セール』『でっこりぼっこり』(以上、絵本館)、『だるまだ!』『あるひ こねこね』(以上、長崎出版)、『クリスマスのきせき』(岩崎書店)、『せきとりしりとり』(文溪堂)、『ありんこ方式』(フレーベル館)などがある。

http://www.nao-takabatake.com/(高畠さんHP)

http://www.ehonnavi.net/specialcontents/welcome/20110810/(絵本ナビのインタビュー)

http://mi-te.jp/contents/cafe/1-1-1094/ (ミーテのインタビュー)

でっこりぼっこりでっこりぼっこり絵本ナビ
クリスマスのきせきクリスマスのきせき絵本ナビ

☆書影2点は、EhonNaviに掲載されていたもので、リンクフリーだそうです。

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☆上の写真2点は経堂のURESICAさんから許可を得て掲載しています。

読み聞かせの際のポイント

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  • 見返し部分には、「マ」ではじまる言葉のイラストがいっぱい。「これ、何だ?」と指差しながら、親子でクイズを出し合うのも楽しいですよ。
    中にはちょっと難しいものも。分からなかったら、巻末の著書紹介の上に答えが載っているので、見てみてくださいね。

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  • 大きなママの登場です! 人だけでなく、犬までもママのことをジロジロ見ています(イラストにはこういった「遊び」の要素がたくさん隠れていますから、探してみてくださいね)。
    でもママは気にしません。ママはふとっているからって、卑屈になりはしないのです。それを証拠に、服やアクセサリーも色鮮やかでおしゃれでしょう? みんなの注目をあびたって、いいんです。だって、ママはママなんですから。
    一方、主人公の「ぼく」はまわりの目を気にして、ビクビク、オドオド。お子さんと自分らしくあることの大切さについて、ぜひ話し合ってみてください。

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  • ホットドッグ屋さんで、いったいママはフランクフルトとホットドッグとハンバーガーを何個食べたのでしょう? 親子で数えてみてくださいね。

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  • ぼくが、おとなりの女の人をママとよぼうとすると、なぜかマではじまる別の言葉になってしまいます。「これはマラソンだね。これはマキジャクだね」などと、対話しながら、読み進めると楽しいですよ。

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  • ママのつくる料理にもご注目を。ママは結構マメに手作りをするみたいです。量が多すぎるのは、タマにキズですが……。こんなところからも、ママの深い愛情を感じとることができます。ぼくはママが大好き、そしてママもぼくが大好きなんです!

☆イラストはイラストレーターの高畠さんに許可を得て掲載しています。転載はご遠慮ください。©Nao Takabatake

書評など

ママは……

  • イラストを描いてくださった高畠那生さんが、2011年12月に経堂のギャラリー「ウレシカ」にて、原画展をしました。『ママ』をはじめとする絵本の原画、描きおろしの絵や立体作品など展示されました。
    http://nao.washizukami.com/?month=201111(高畠さんHP内お知らせ*リンクは許可を得ています)
  • 作家のキム・フォップス・オーカソンさんが脚本を手掛けた映画『パーフェクト・センス』が2012年1月から日本でも公開されています。主演はユアン・マクレガーさんとエヴァ・グリーンさん。監督はデヴィッド・マッケンジーさん。
  • クーヨン2012年3月号(クレヨンハウス)の絵本タウンのコーナーで、『ママ!』が紹介されました。
  • 『子どもの本』2012年3月号で、『ママ!』についての紹介記事を書かせていただきました。
    http://www.kodomo.gr.jp/kodomonohon_article/1295/
  • 『2012年CBLおもしろい図書館』で、『ママ!』の翻訳作業についてお話しさせていただきました。
    http://www.cblnokai.com/pages/sales
    (お話しの内容)

日常の小さな喜びや愛情を大切にしたい…

 私には今年5歳になる娘がいるのですが、子どもと一緒にいると学ぶことがたくさんありますね。原っぱに行くだけでも、バッタを捕まえようとしては喜び、タンポポの綿毛をフーっと飛ばしては目を輝かせている。娘を見ていると、「生きるって楽しいんだ」って気づかされます。子どもの世界には、生への根源的な喜び、価値が集約されているような気がします。もちろん成長の過程で、悲しみや屈折もたくさん味わうんですけど、根源の部分で世界を肯定できるかどうかは、とても大事なことですね。
翻訳する作品を選ぶときも、私は日常のなかにある小さな喜びや愛情に気づかせてくれるものに目が向いてしまいます。
『ママ!』は、自我の芽生えが始まった男の子の、お母さんへの悩みと愛情をユーモアたっぷりに描いたお話です。途中、男の子は「ママ」と言おうとしてどうしても言えず、「マ」で始まる言葉をいくつも言ってしまうシーンがあるのですが、ここには特に気を配りました。子どもって、たとえ意味がわからなくても響きが面白い言葉に出会ったり、言い間違いに気づいたり
すると、楽しそうに笑うんですよね。こんなところでも、この作品を楽しんでもらえたら、うれしいです。

思い出

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『ママ!』は訳者がデンマークに留学中の2003年に、デンマーク教育大学の児童文学センターの研究者の方達が薦めてくださった作品です。この本の話をする時、みな自然と顔がほころんでいたのが印象的でした。

当時大学と並行して通っていた、語学学校の授業で、私はこの本を朗読しました。その学校の生徒の大半は、戦火を逃れてやってきた避難民でした。壮絶な体験を経て、「生きる」ためにデンマークにやって来たクラスメートに対し、日本のような平和な国から来た私は、どこまで踏み込んで話をしたらよいか、測りかねていたところでした。

ところが、この絵本を朗読した途端、たちまちみんなが「面白い!」と声を上げて笑ってくれたのを見て、「例え、育った国の文化や社会情勢は違っても、心は通じ合うはず」――そう強く感じたのでした。

帰国してから、この本を日本に紹介できるまでには、長い年月がかかりました。才気溢れる人気画家の高畠さんが描いてくださったユーモラスでダイナミックなイラストと、エレガントで鋭い感性をお持ちの装丁家、金内織恵さんによる趣向を凝らしたセンスの良い装丁のおかげで、「ねえ、読んで!」と自信を持ってお勧めできる、素晴らしい作品に仕上がりました。高畠さん、金内さん、本当にどうもありがとうございました。

そして何より、ここまで導いてくださった、ひさかたチャイルドの佐藤力さんに、この場を借りて、御礼申し上げます。

☆上の写真は訳者が撮影したデンマーク、コペンハーゲンの市庁舎前広場の風景です。

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