『続・カンヴァスの向こう側 リディアとトラの謎』フィン・セッテホルム作、評論社
(google art projectをはじめインターネットを使って作品に登場する、または関連する絵を巡ってみましょう)
google art projectとは? 使い方など。
☆2つ目の動画の05:53~ゴッホの絵の話が出てきます。
1章 フィンセント・ファン・ゴッホ
(技法について)
ゴッホの絵についてリディアは「現実の世界そのままではなく、目に映るものへの感情が表されているみたい」(54ページ)と言っています。
ゴッホは色とりどりの毛糸の束を机に置いて、色の組み合わせを見るのに使っていたようです(55ページ)。
フィンセント・ファン・ゴッホ 『馬鈴薯を食べる人たち』Potato Eaters – Google Arts & Culture https://t.co/CujlCrbMZA @googleartsさんから
— 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月6日
フィンセント・ファン・ゴッホ 『ひまわり』Sunflowers – Google Arts & Culture https://t.co/lWMpeOZtJN @googleartsさんから — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月6日
フィンセント・ファン・ゴッホ『夜のカフェテラス』Cafe Terrace at Night – Google Arts & Culture https://t.co/HJqjuVMrBw @googleartsさんからhttps://t.co/dF5p1ZAFPL — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月6日
『夜のカフェテラス』はhttp://musey.net/1で彩色されたものが観られます。
フィンセント・ファン・ゴッホ『星月夜』The Starry Night – Google Arts & Culture https://t.co/x9V5PlIJpI @googleartsさんから
— 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月7日
TED ファン・ゴッホの 『星月夜』に隠れた意外な数学 ― ナタリア・セント・クレア
フィンセント・ファン・ゴッホ『イトスギのある麦畑』Wheat Field with Cypresses – Google Arts & Culture https://t.co/ugNUCs6egK @googleartsさんから — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月7日
フィンセント・ファン・ゴッホ肖像画 Self-portrait with grey felt hat – Google Arts & Culture https://t.co/ZPNqZly1Nb @googleartsさんから — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月7日
☆肖像画は出てきますが、どの絵かは特定されていません。ゴッホは肖像画を複数遺しています。
フィンセント・ファン・ゴッホ『黄色い家』The yellow house (`The street’) – Google Arts & Culture https://t.co/cnETHrUb1J @googleartsさんから — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月7日
☆絵自体は出てきませんが、黄色い家は登場します。
3章 フリーダ・カーロ
(技法について)
カーロの夫の壁画家、ディエゴ・リベラは111ページで「インディオの厳しい生活を描くだけじゃだめなんだ。誇りや勇敢さを表現したい。大衆の心に、希望をともすような壁画にしたいんだ」、「芸術はハムだ。芸術は卵だ。芸術は人々に栄養を与える」と述べています。 フリーダとリベラの波瀾万丈の夫婦関係を見ていると、女性としての生き方について考えさせられます。
フリーダ・カーロ The Broken Column – Google Arts & Culture https://t.co/lBpKmvD8r7 @googleartsさんから — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月22日
☆絵自体は出てこないが、事故にあったと102ページに出てくる。この絵は事故の手術後に描かれたもののよう。
フリーダ・カーロ自画像 Self-portrait with Small Monkey – Google Arts & Culture https://t.co/i3fo0s4Pu9 @googleartsさんから — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月22日
☆104ページの自画像の描写とは合わないので、この絵ではなさそうだが、これに近いものだろう。フリーダはたくさんの自画像を遺した。
フリーダ・カーロ Detail of “Un cuento de cartón” Day of the Dead Offering – Google Arts & Culture https://t.co/tUfmKOfS1c @googleartsさんから — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月22日
☆部屋に飾られていたがいこつの飾り。 以下の動画で、125ページの『水が私にくれたもの』をはじめカーロの作品を観ることか゛できます。 https://youtu.be/iZ41k9pskIE 作中に出てくるカーロの絵の多くはgoogle art projectで見つけられなかったのですが、他の絵はこちらで観られます。
フリーダ・カーロ – Google Arts & Culture https://t.co/NFvzG2osPL @googleartsさんから — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月22日
フリーダ・カーロの夫のディエゴ・リベラの作品群はこちらで観られます。
ディエゴ・リベラ – Google Arts & Culture https://t.co/7DdqUcG2ng @googleartsさんから — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月22日
お薦めのDVD。私の住む町のTSUTAYAでは借りられました。
お薦めの本。
4章 葛飾北斎 (技法について) 北斎は143ページで「思えば俺は六歳の時から、自然に目に映るものを絵に写しとっていた。それ以来絵を学び続け、五十歳のころから絵や版画を世に出してきた。だが、今見ると、七十歳より前に描いた絵は、取るに足りないものばかりだ。ようやく七十三にして、鳥獣虫魚の骨格や植物の成り立ちが少しは分かわかってきたと思っている。だから、この先も絵の修行に励めば、八十歳にはもっと良い絵が描けるようになり、九十歳になれば極意を極め会得し、百歳でまさに人知を超える絵が描けるのではないだろうか。そして百十歳ともなれば、一筆ごとに命を持つようになることだろう」と言っている。
葛飾北斎 – Google Arts & Culture https://t.co/yhOCCkpVq6 @googleartsさんから — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月23日
☆北斎の作品群はこちらで観られます。
『北斎漫画』はgoogle art projectで見つけられませんでしたが、とても面白いのでぜひ検索してみてください。 本もあります。
お薦めの博物館:江戸東京博物館 http://edohaku-special.net/
http://edohaku-special.net/article/hana/page02.html
すみだ北斎美術館
北斎についてのサイト:http://hokusai-museum.jp/modules/Page/pages/view/401
杉浦日向子さんの漫画『百日紅』や映画『百日紅~Miss HOKUSAI』でも北斎やお栄について知ることができます。
『うつくしく、やさしく、おろかなり ─私の惚れた「江戸」』、『江戸へようこそ』なども面白いです。
5章 ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ
(技法について)
210ページで教皇はカラヴァッジョと、その天敵バリオーネについて次のように言っています。 「近頃の作品は、どうも気に入らない。情けないことに、宗教美術そのものが衰え始めているのではないだろうか。視察に回る度に、その思いを強くしていた。例えば最近評判のバリオーネという画家がいるが、教皇は彼の絵は中身がなく、魂が宿っていないと感じる。今一番有名なのはカラヴァッジョで、教皇は彼に大きな期待を寄せていた。カラヴァッジオの絵には素朴で敬虔な民が描かれ、絵の中の人物は、内側からほとばしる光によって輝きに満ちている。その作品は、神が投げかける光そのものを再現しているのだ。ところがあの男は、乱暴で行いが悪く、何度も警察沙汰を起こしている。思慮に欠ける点が、時としてその作品にまで表れるのが最も困る。例えば絵の中の馬が無遠慮に尻を向けていたり、使徒パウロの足が汚れていたり……」
https://t.co/lpkTq9yuDq カラヴァッジョ — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月24日
☆176ページでカラヴァッジョの描く聖人の足が汚れているとして枢機卿に問題視されていたが、確かにこの絵をはじめ足が汚れている絵は複数あるようだ。
カラヴァッジョ『ナルキッソス』で検索してみてください。画像が出てきます。
☆184ページで出てきたルイージが絵のモデルをしたと物語中ではされています。
https://t.co/fEoX4E3bly カラヴァッジョ — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月24日
☆『聖母の死』192ページで「リディアは、マリアさまの死に立ち会った女の悲しみを思って長い間座っていた」とある。リディアがモデルをしたのは手前のピンクのワンピースを着た若い女の人の役か? リディアは194ページでこの絵について「すごくきれいで、泣きたくなるぐらい悲しい絵。あと、内側から光が差しているように見えるわ」と評している。
カラヴァッジョ『勝ち誇るアモール』 – Google Arts & Culture https://t.co/pWeDz0X80r @googleartsさんから — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月24日
カラヴァッジョの天敵バリオーネ – Google Arts & Culture https://t.co/ya2aBYYmCQ @googleartsさんから — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月24日
☆197ページでカラヴァッジョが自作『勝ち誇るアモール』をバリオーネが真似て描いたとして憤っているのはこの絵。画像をクリックしてみてください。カラヴァッジョが言うように、下で蹴り飛ばされている天使は、『勝ち誇るアモール』の天使に似ていませんか? 198ページでカラヴァッジョがバリオーネについての口汚い詩を詠みますが、憤るのも少し分かる気がします。
カラヴァッジョ『聖パウロの回心』 https://t.co/pdWsm1tM1m — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月24日
☆210ページで教皇が、「絵の中の馬が無遠慮に尻を向けてい」ると憤っていたのはこの絵か? 参考:NHK『カラヴァッジョ 光と闇のエクスタシー~ヤマザキマリと北村一輝のイタリア~』
NHKドキュメンタリー – カラヴァッジョ 光と闇のエクスタシー~ヤマザキマリと北村一輝のイタリア~ https://t.co/GYB6gaOrEP — 北欧語翻訳 枇谷玲子 (@trylleringen) 2017年3月24日
(あとがき)
訳者あとがき
この本は、スウェーデンで二〇一〇年に発表された『カンヴァスの向こう側――少女が見た素顔の画家たち』の続編です。
前作はイタリアの児童書賞、チェント賞を、オランダのセレクシス青少年文学賞を受賞、フィンランド語やポルトガル語、韓国語などにも翻訳されるなど国際的に高い評価を得ました。また二〇一三年に出された邦訳は、第五八回西日本読書感想画コンクール及び、第二六回読書感想画中央コンクールの指定図書に選ばれています。そのことを作者にお伝えしたところ、とても喜んでいただけ、受賞者に向け、「未来の芸術家の君へ」と題したお手紙を書いてくださいました。後者のコンクールに入賞された皆さんの授賞式の会場に、訳者の私は翻訳したお手紙をお届けすることができました。その時、目にした受賞者皆さんの笑顔は、今でも忘れられません。他にも絵にしてくださった方々、本を読んでくださった皆さんに感謝いたします。
ここで一巻の内容に簡単に触れさせてください。絵を描くのが大好きな十二才の少女リディアが、学校の帰り道、公園のベンチで絵を描いて鳥に鉛筆をかすめとられてから、奇妙な出来事が起こり始めます。さらにおじいさんと国立美術館に行った彼女は、レンブラントの絵に触れ、一六五八年のオランダ、アムステルダムへやって来ます。その後も様々なピンチに見舞われながら、レオナルド・ダ・ヴィンチやエドガー・ドガ、ウィリアム・ターナー、ダリといった画家の時代へ次々とタイムスリップしていきます。そこで偉大な画家の素顔に触れ、絵の描き方を観察したり習ったりすることで、リディアは成長していきます。
そんな魔法の旅から戻ってしばらくし、十三才になったリディア。タイムスリップしたことを家族や友だちに話しても信じてもらえず、次第に孤独を感じるように。生気の抜けたような退屈な絵しか描けなくなったところから、今回の二作目ははじまります。ある晩、観に行ったマジック・ショーの会場で、大好きなおじいちゃんが行方不明になってしまいます。家に戻ったリディアは、携帯電話におじいちゃんを返してほしければ、川沿いの古い小屋に来るようにという謎のメールが届いていることに気が付きます。翌日、待ち合わせの場所で待ち構えていた人物は、リディアに再びタイムスリップし、当時貧しかったゴッホから名画を安値で買って帰るよう言うのです。リディアは渡された不思議なブレスレットを使って、ゴッホの時代へ。そこからさらに不思議なことに、物語上の人物であるはずのロビンソン・クルーソーの暮らす島にやって来てしまいます。
その後リディアはフリーダ・カーロの時代で、死を明るくとらえるメキシコの人々の死生観や、カーロの自由な思想や特異な世界観、パワフルで情熱的な女性としての生き様などに触れます。
葛飾北斎の時代の日本では、七十九才になってもなお、満足することなく、絵の技術を磨き続ける北斎の並々ならぬ研究心と情熱を感じ取ります。
カラヴァッジョの下では、少年を召し使いとしてこき使い、体罰をも与える画家の姿にショックと憤りを覚えながらも(スウェーデンでは一九七九年に、子どもへの体罰が法律で禁止されました)、彼から才能を見初められ気に入られたリディアは、モデルを頼まれ、画家の卓越した絵画技法を目の当たりにします。
さらに核兵器を廃絶するべきと主張したことで、軍から防衛上の危険分子とみなされ、盗聴されていたアインシュタインや、飛び級して大学で学ぶ数学少女の、天才ゆえの孤独や、時間の不思議さにも触れます。
作品中では、これらタイムスリップの場面と並行して、おじいちゃんを誘拐した黒幕の動きもスリリングに描かれています。誘拐犯は一体何者で、その思惑は何なのでしょう? またリディアの行く先々であらわれるトラは、一体?
この作品は実在した人物や実際の芸術作品が登場する歴史絵画ファンタジーで、北斎が掃除をしたくないという理由で何度も引っ越しをしたことなど、現実に則して描かれている部分と、作者のイマジネーションで描かれた部分とが入り混じっています。例えばアインシュタインは近所の女の子に数学の宿題を教えていたことがあり、その女の子の母親に、自分の方がむしろその子から様々なことを教わっているのだと言ったという逸話が残されているそうですが、ひょっとしたら最後の章で大活躍する天才数学少女は、作者がこの逸話から着想を得て創造したキャラクターなのでしょうか? こんな風にどこまでが現実で、どこからが虚構か想像を膨らませられるのも、この作品の魅力のひとつです。
ただ四章の北斎の章については、残念ながら作者のフィンさんらしからぬ誤りが見られました。北の果てのスウェーデンは、日本についての資料が乏しいのでしょうか。そのため訳出については、江戸文化の研究者で、児童書の翻訳家でもある佐藤見果夢さんから大きなご助力をいただき、誤りも正してもらいました。この場を借りてお礼申し上げます。
本作の冒頭でスランプに陥り、思うように絵を描けなくなっていたリディアも、フリーダ・カーロの名画、『二人のフリーダ』からインスピレーションを得た、『二人のリディア』という絵を描き、フリーダから感動的な賛辞をもらったり、彼女の夫で壁画家のディエゴ・リベラから「芸術はハムだ。芸術は卵だ。芸術は人々に栄養を与える」といった金言をもらったり、葛飾北斎の『富嶽三十六景』や『北斎漫画』の余りの素晴らしさに、自分は一生かけても北斎のような絵を描けるようにはならないだろうと嫉妬し、刺激を受けたりと、次第に絵を描くことへの情熱を取り戻していきます。
またリディアは六章でアインシュタインから、今日の次に明日が来るのは当然ではなく、時間は時と場合によって、一定でなくなるということ、また現実というのはしょせん、ただの錯覚かもしれないという問いを投げ掛けられます。彼の「可愛い女の子と一時間一緒にいると、一分しか経っていないように思える。熱いストーブの上に一分座らせられたら、どんな一時間よりも長いはずだ」という言葉についても考えながら、時間と空間だけでなく、現実世界と物語の境界線をも越えた今回の冒険ファンタジーを読んでいただけると、嬉しいです。
絵画芸術だけでなく、物理や科学のテーマやミステリ的な謎の要素も盛り込み、魅力を増した本作をどうかお楽しみください。