算数は何の役に立つのだろう?

小学校5年生のクラスで以下のようにブックトークを行いました。

************************************************************

●みなさんは算数は好きですか?

(「好き」と自主的に手を挙げる子がいました。そこで「では好きな子?」「まだ面白さが分からない子?」と聞くとそれぞれクラスの3分の1ぐらいが手を挙げてくれました。先生も授業と関係がある話だからか、とても関心を持ってくれている様子でした)

●ただ算数を勉強して一体将来何の役に立つんだろう? と疑問に思ったことがある人もいるのではないでしょうか?

●その答えが一部載っている本があるので、まず紹介したいと思います。

5教科が仕事につながる!数学の時間

この本には様々な職業でどんな風に算数や数学(中学校に行くと算数の教科が数学と呼ばれるようになります)が使われているのかが紹介されています。

●たとえばインダストリアルデザイナーという職業のページを見てみましょう。インダストリアルデザイナーとは自動車や鉄道車両、カメラや腕時計、椅子やポット、ロボットなど、様々な工業製品のデザインをする仕事だそうです。この本で紹介されている山中俊治さんは、JR東日本のSUICAの改札機のパネルのデザインなども手掛けているそうです(22ページのパネルの写真を見せる)。では、インダストリアルデザイナーの仕事でどんな風に算数や数学を使うのでしょう?(25ページの携帯電話のデザインの図面を見せながら24ページの山中さんの言葉を読み上げました)山中さんはこう言います。

「製品の美しさや手触りの良さを出すために、ある面にふわっとした丸みをつけたとします。しかしそれを技術者に『こんな感じで』と伝えるだけでは、その通りにモノを形作ってもらうことはできません。そこで私たちは、その丸みというのを数学的な表現にして伝えていきます。半径10cmの円の孤を150度分だけ切り取った曲線にして、といった具合にです(あらかじめ書いてきた図を見せながら)」

●この本には大工さんも出てきます。本にはこんな風に書かれています。(33ページを読み上げました)「大工は腕だけでなく実は頭脳も鍛えなければいけない。その最たるものが、大工道具のひとつの「さしがね」の使い方を学ぶことだ。(おうちの人が大工さんをしている子も何人かいたようで、「さしがね、知ってる」、「うちにある」、と声を上げる子もいました。「さしがねを知っている子?」と聞くと、4分の1ぐらいの子が知っていて、先生も驚いていました)ここで紹介されている本間義仲さんという方はこんな風に話しています。「(さしがねを使いこなせると)屋根の傾きを思い通り出したり、その傾きに沿って屋根の木材を組めるよう、それぞれの辺の長さを考えたりすることができます。丸太からむだなく正方形の角材を切ったり、木材に等分線や垂直二等分線を引くこともできますよ。子どものころは算数や数学が苦手だったのに、大工になったらそれが大事だった。ただ、さしがねは奥が深い道具なので、図形の理屈を学ぶだけでは使いこなせない。職人の世界では、やはり手を動かして体で覚えていくのが基本です」

●最後の大工さんの話で「理屈を学ぶだけではなく、手を動かして体で覚える」という言葉が出てきました。算数の勉強にも当てはまるのではないでしょうか? そこでもう1冊お勧めしたい本があります。

さわって学べる算数図鑑』(学研)です。

この本では5年生で習う分数や立体の展開図などについて、実際に図を組み立てたりしながら指先と目で学ぶことができます。

sannsuubunsuu

(出典:http://livedoor.blogimg.jp/oshinworld/imgs/0/0/00ec1585.jpg)

2402_1

(出典:http://hon.gakken.jp/img/info/2402_1.jpg)

●最後にちょっと毛色の違う本を紹介させてください。

算法少女 (ちくま学芸文庫)』(遠藤寛子作、岩崎書店)です。

漫画版も出ています。

この本の主人公は算法(今の算数)が大好きな13歳の江戸時代の少女、千葉あきです。彼女のお父さんは町人で、医師をしていました。お金もうけには疎く、お母さんはお金の工面に苦労していました。古本屋で算法の本を買ってきては、娘のあきに教える夫の姿を見て、お母さんは算法なんてお金になりやしないと気に入らない様子です。その当時は算法は武士や大名など、限られた身分の限られた人たちだけが学べるもので、町人で、しかも女の子のあきには学ぶ必要のないものだ、とお母さんは考えていたのです。当時は今のように小学校、中学校は義務教育ではありませんでした。

ある時、あきは藤田貞次という算法家の弟子の水野三之介の唱えた算法の説の誤りを指摘しました。そのことで、町娘の分際で生意気だ、とあきは目をつけられつつも、算法への情熱を失うことなく、算法道を追及し続け、次第にその能力が周囲に認められるようになります。

この本は私達にこんなことを教えてくれている気がします。算数では答えはいつだってひとつだということです。たとえその答えを出したのが町人であろうと武士であろうと、貧しかろうと豊かであろうと関係なく。正しいものは正しいのです。

●算数関係の面白い本は他にもたくさんあります。

浜村渚の計算ノート (講談社文庫)

 

コミック版もあります。

これは漫画しかないのですが、『和算に恋した少女 1(和の巻) (ビッグコミックス)』もお勧めです。

ぜひ読んでみてください。

 

 

 

 

 

LINEで送る
Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です