北欧会議文学賞か、北欧理事会文学賞か?

北欧会議、それとも北欧理事会?

北欧にはNordisk Råds Litteraturpris(The Nordic Council Literature Prize)という大きな文学賞があります。そちらについて、所属している北欧語書籍翻訳者の会のNOTEに書きました。スペースの都合上、そちらに詳しく書けなかったのですが、同賞を北欧会議文学賞と訳すべきか、北欧理事会文学賞と訳すべきか、ちょっと考えてみたいと思います。

Nordisk Råd(The Nordic Council)とはそもそも何?

 Nordisk Råd(The Nordic Council)という言葉は訳語が割れています。
たとえば平凡社の世界大百科事典で、北欧史の専門家である早稲田大学の村井誠人教授は北欧会議としています。
北欧会議
Nordisk Råd
1952年以来,デンマーク,アイスランド,ノルウェー,スウェーデンの各国議会および政府の代表により毎年定期的に開催されている評議機関(第1回は1953年),56年からフィンランドも参加し,アイスランドの6議席を例外にそれぞれ18議席を有し,さらに議決権のない各国政府代表をオブザーバーとして構成されている。ただし,69年の規約改正によって,デンマークのフェロー諸島,フィンランドのオーランド諸島の両自治領も議席を有し,さらにグリーンランドがデンマークで自治領化した(1979)のに伴い,議席をもった。しかし,デンマークおよびフィンランドの両本国代表の議席数が減じたので,当会議の総議席数に変化はない。北欧会議は当該2国間以上にかかわる問題を討議し,採択事項を各国政府あるいは北欧閣僚会議へ勧告する機能をもつ。各国政府はその決定に従う義務はもたないが,北欧共同労働市場,北欧諸国間旅券無審査制等に代表されるように,現実には多くの決定が実行に移され,北欧経済連合(NORDEK)案が70年に成立にいたらなかったなどの経済政策面を例外とすれば,北欧諸国間協力を考えるうえで社会・厚生・文化政策面での当会議の役割はきわめて大きい。なお,通常用いられる訳語中,〈北欧理事会〉はその実際的機能の内容から的確性を欠くきらいがある。

一方、日本大百科全書(ニッポニカ)の北欧文学の項で、東海大学の福井信子教授は北欧理事会としています。

Googleで検索すると北欧会議文学賞のヒットはわずか3件、北欧理事会文学賞のヒットは8,620件でした。
Google書籍検索のヒット数には差はほとんどありませんでした。

北欧理事会/会議文学賞とは何なのか?

 集英社世界文学大事典では、この賞について、次のように書かれています。

北欧会議文学賞
[デンマーク]Nordisk Råds Litteraturpris,
[スウェーデン]Nordiska rådets litteraturpris,
[フィンランド]Pohjoismaiden neuvoston kirjallisuuspalkinto,
[ノルウェー]Nordisk Råds litteraturpris,
[アイスランド]Bókmenntaverðlaun Norðurlandaráðs
北欧
デンマーク,フィンランド,アイスランド,ノルウェー,スウェーデンの北欧5カ国の文学作品を対象に毎年1名に授与される文学賞。1961年に北欧会議により,北欧諸国相互の文学と言語ならびに北欧文化一般に対する関心を高める目的で創設。翌62年の第1回受賞者はスウェーデンの作家エイヴィンド・ユーンソン。先述の5カ国からそれぞれ2名が選考委員となり,計10名よりなる選考委員会が毎年1月20日ごろにその年の受賞者を決定する。デンマーク,ノルウェー,スウェーデン文学の場合は過去2年間,そのほかの北欧諸国の場合は過去4年間に発表された文学作品が選考の対象となる。長編小説に限らず,短編集,詩集,エッセイ,戯曲と,文学性・芸術性の高い作品であれば各国の国内選考委員会が候補作品として推薦できる。1996年までの35年間にスウェーデンが13回,ノルウェーが6回,フィンランド,デンマーク,アイスランドがそれぞれ5回,北大西洋のデンマークの自治領フェロー諸島が2回受賞している。65年にはフェロー諸島のハイネセンとスウェーデンのウーロヴ・ラーゲルクランツが異例の2名同時受賞を果たした。受賞作は必ずしも受賞者の代表作ではないが,いずれも極めて質の高い作品が選ばれているのは否めない。受賞作品はほぼ自動的にほかの北欧諸語に翻訳・出版されるため,北欧圏内での普及は保証されているが,今後は地域性に固執せず,もっと国際性を指向すべきであろう。

執筆者であるデンマーク文学者の橘要一郎さんも、北欧理事会でなく、北欧会議という訳語を使っています。どちらがよいか結局結論は出ないのでした。

 この記事を読んでいる北欧語の専門家で、訳語について、ご意見ある方がいたら、ご連絡いただけると、とても嬉しいです。

 

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